冒険者ギルドって?
翌日。
食堂に行くと、当たり前のように商人が居た。
「ちょっと相談なんですけど」
「はい、何でしょうか?」
「商売を始めようと思いまして」
「はぁ。どのような?」
「冒険者ギルドを作ろうと思います」
「冒険者? ギルド? それは一体どのような物で?」
「えっと、冒険者が登録している、え~と、組織みたいな感じです」
「冒険者? あんな放蕩者を?」
あれ?
冒険者の認識がおかしい。
この世界って、冒険者ってどんな意味だ?
「ちょっとすみません。
俺と貴方の意味合いが違うようで。
冒険者ってどんな認識です?」
「主に貴族の次男や三男がしている事ですね。
親やパトロンからお金を集めて、アチコチに行き、未知なる物を集める者達です。
まともな仕事に就けない者が傭兵を集めてやってる事なので、放蕩者と言われてます」
あ~、地球で言う、大航海時代の人達みたいな認識か。
うん、確かに間違ってない。
間違ってないが……それじゃあ困るんだよなぁ。
「えっとですね。俺の言う冒険者ってのはですね。
依頼を受けて、採取したり、獣やモンスターを討伐したり」
「狩人ですね」
「……後は商人や旅人の護衛をしたり」
「傭兵ですね」
「……街での荷物運びや色んな雑用を受けたり」
「人足ですね」
「……そういうのを統括してる組織です」
「それぞれ組合がちゃんとありますよ? 纏める必要は無いのでは?」
ぐぬぬ。
またも正論が。
いや、負けぬ。テンプレの為にも必要なのだ!
「ギルドに登録すれば、全てが受けられるようになります。
全部に加入するよりも楽でしょう?」
「そんな信用の出来ない人に仕事を出しませんよ。
専門の人に任せた方が安心です」
確かに。
違う! 俺が納得してどうする!
「だから、加入した人にはランクを付けるんですよ。
初心者は一番低いランクで。依頼をやっていくとランクが上がる。
ランクが上の人ほど、信用出来るでしょう?」
「その肝心なランクが上がるほど、仕事が出ませんよ。
誰もが元々信用のある組合に仕事を出します」
そう言われればそうなんだよなぁ。
でも、ギルド創設から書いてあるラノベって読んだ事無いし。
俺が唸ってると、商人は助け舟を出してくれた。
「つまり何でも屋って事ですね?」
「そうです!」
「では聞きます。
薬草の採取を依頼されました。葉を5枚持って帰って欲しいと。
葉は市場価格で1枚100コルです。いくらでその依頼を受けますか?」
「5枚だから500コルですか。ではえ~と、400コルでどうでしょう?」
「はい、ダメです。それでは依頼されませんね」
舟は舟でも穴が開いていた!
「なんでダメなんですか?! 市場で買うより安いですよ?!」
「確かに市場で買うよりは安いです。
しかし販売価格が100コルなだけで、仕入れは50コルくらいです。
つまりは仕入れは250コルになります」
「じゃあ250コルで」
「仕入れと同じなら、いつも使っている狩人に頼んだ方が信用出来ます。
仮に、250コルで貴方の言うギルドが受けたとします。
ギルドの儲けは?」
「えっ? い、一割で」
「25コルですね。では纏めますよ。
依頼者は250コルで依頼を出す。受けた者は達成したら225コルを受け取る。
ギルドは25コルの儲け。合ってますか?」
「はい」
「それで商売になりますか?」
「えっ?」
達成した者は225コル貰える。日本円で2250円か。
ギルドは……25コルだから250円。
10件達成されても2500円。
受付やら鑑定する人を雇ってたら大赤字だな……。
受ける者も、1日探して2250円じゃあやる気も出ないか。
む~。一体ラノベの冒険者ギルドは、どうやって稼いでるんだよ!
あっ、国からの援助か?
いや、違うな。戦争うんぬんで国とは繋がりがないってよく書かれてた。
無理なのかな。どうしよう。
冒険者ギルドはテンプレばかりだから作りたいんだけどな。
悩む俺に、商人から驚きの一言が。
「唯一、何とかなる方法があります」
次話も明日の17時に投稿します。