ダンジョンに行ってみる
ダンジョンまでは馬車の定期便が出ているそうだ。
お金を払えば誰でも利用出来るらしい。
と言っても子供はダメ。15歳以上限定なんだって。R15か。
馬車は北門から出る。
翌日の朝に行ってみると、多数の馬車が並んでいた。
全部がダンジョン行きかと思ったけど違うらしい。
よく見れば馬車に看板が付いていて、それに行き先が書いてある。
ダンジョン行きは一番隅っこの辺りにあった。
ちなみに、俺が少しウキウキなのは理由がある。
勿論、ダンジョンという異世界独特な物に興奮してるってのもある。
でも一番の理由は、モンスターや死んだ人が消えるという所!
俺にグロ耐性は無い。俺じゃなくても日本人なら皆そうだと思う。
どんなにチートになったとしても、ウサギ1匹も殺せないと思うんだ。
更に解体とか……無理無理!
職種狩人の名に恥じる事かもしれないが、採取の方でお願いしたい。採取家ってならないかな?
とにかく。
死体も見なくて良い。モンスターも倒せば消える。
グロ耐性の無い俺にはうってつけの場所なんですよ。
ダンジョン行きの馬車の御者に料金を払い、馬車に乗り込む。
馬車と言っても荷馬車。自衛隊のトラックみたいに、左右に椅子が付いている。
そこには3人だけ人が乗っていた。男ばっかり……。
右の椅子に座ってる2人はどうやら仲間らしく、何かを話し合ってる。
左に座ってる1人は俺と同じくらいの年っぽい。剣を抱えて目を閉じている。寝てるのかな?
御者には左右が同じ人数になるように座ってくれと言われてるので、左の椅子に座る。
バランスって大事だもんな。
俺が座ると、寝てたと思ってたヤツが目を開けて俺をチラッと見た。
ここはやはり日本人、挨拶が大事だよね。
「あっ、どうも。座らせてもらっても良いですかね?」
「俺の馬車じゃねぇし、好きにしたら良いさ」
「じゃ、お邪魔しま~す」
「お前、初めてか?」
「そうです。タクヤって言います。よろしくお願いしますね」
「丁寧に挨拶するな、気持ち悪い」
失礼だな。
丁寧で何が悪いよ。偉そうな態度よりよっぽど良いだろ。
ちょっとムッとしたが、向こうはダンジョンの先輩、そうダンセンだ。下手に出て話を聞こう。
「初めてなんで、色々と教えてもらって良いですかね?」
「俺も3回目なんで詳しい事は言えないな」
「あっ、そうなんですか……」
「何だ、お前達初心者か。じゃあ俺達が教えてやるよ」
そう言ってきたのは、右側に座っていたコンビ。
どうやら慣れている様子。まぁ緊張してる素振りもないもんな。
ダンジョンに着くまでに馬車の中で色々教えてもらった。
主にマナーとか。
1.他人が戦闘中は近づくな。
2.助けは請われた時だけ。
3.モンスターを連れて来るな。
4.何かあったら報告しろ。
5.1~2階に出るのは主にスライム。たまにヘビ。
6.スライムの弱点は火。火が無いならバラバラになるまで切れ。
7.ヘビはクビを落とせ。牙には毒がある。
8.時間には気をつけろ。
9.ダンジョン内の湧き水は安全。
10.一人は危険。せめて二人で行け。
こんな感じ。
1は巻き込まれるからだ。後、知らない者が来ても連携とか出来ないから余計に危険なんだとか。
2はそういう決まりなんだって。
昔、強敵を倒す寸前に助けると言って乱入し、倒した後にドロップ品は山分けと言ってきたバカが居たそうな。
それ以来、『助けは請われた時だけ』という決まりが出来たらしい。
本当に危ない所を見ても請われるまでは助けてはいけない、とまで言われた。
どこの世界でも一部のアホのせいで全体が迷惑を受ける。
3はラノベでもよく言われるヤツだね。
強いモンスターを引き連れてきて他のプレイヤーにぶつけて殺すアレ。
これやったら死刑なんだってさ。モンスターで死ぬか、逃げて死刑になるかの二択かよ……。
4はたまにダンジョンを盗賊が根城にしてる場合があるから。
後、稀にだけど、モンスターの配置が変わる事があるらしい。1階に強いモンスターが出たり。
気になった事があれば報告する義務があるそうな。
5~10は、初心者へのアドバイス。
特に8。ダンジョン無いは薄暗いので、時間の感覚がおかしくなるらしい。
外に出たら夜だった、では困る。
乗り合わせた男と一緒になって真面目に話を聞いてた。
どうやら知らなかったらしい。大丈夫か、お前。
次話は明日(6日)の17時に投稿します。