税符
あけましておめでとうございます。
タバスコポーションのせいで、汗をダラダラとかいてしまった。
よし、風呂に行こう。
ん? 風呂屋? 街中にありましたよ?
と言っても、コインシャワーのような感じだけど。
いや、打たせ湯の方がしっくり来るか?
とにかく。お金を払って中に入ると、1m角くらいの部屋がいくつもある場所に案内される。
その一つに入り、服を脱ぎ、上にある棚に置く。
その後、横にある木の棒を引くと、壁に設置されてる樋から湯が流れてくるんだ。
木の棒を押すと湯は止まる仕組み。
体を洗うだけでなく、洗濯も出来る便利な場所。
100コルと少々高めなので、毎日は来られないけど。
俺はシャワー派だったから気にならなかったけど、温泉を見つけるってテンプレじゃね?
で、入浴施設を作ったり。そんなお金は無いけどさ。
あんまり興味は無いけど、テンプレイベントの為に探してみるかな。
風呂から出て宿に戻ると、まだ商人が食堂に居た。
この人、ずっと居るけど、仕事は?
「何してるんですか?」
「これでも仕事をしているんですよ」
「えっ? 仕事中? 酒を飲んでるようにしか見えないんですけど」
「今の私の仕事は、貴方に色々教えるという事ですよ。大金も貰いましたしね。
いつでも会えるように、部屋に戻らず食堂で待機しています」
「マジですか?!」
「半分は本当です」
「半分かよっ!」
「ええ。実はこの町で仕入れる予定の物が少し遅れてまして。
仕入れが済めば発つつもりですが、後三日はかかるようなんです。
なのでその間は貴方に助言をしようと、ここに居るのです」
「かっこよく言ってますけど、つまりは暇つぶしですか……」
「そうとも言います」
良い人だと思ったのに!
しかし助かってるのも事実。
そうか、後三日か。それまでに色々聞いておかなきゃな。
翌日。
俺は税符を貰う為に出かけた。
商人の話では兵の詰め所で貰えると。
場所は門の近くだから、すぐに判った。
入り口に立っていた兵士さんに話をすると、中に通してもらった。
「税符を発行して欲しいんだね?」
「はい、そうです」
「うむ。説明は必要かね?」
「お願いします」
受付の兵士さんは、自分の税符を出して見せてくれた。
「税符は、税を収めた事を証明する物だ。身分証の代わりにもなる。
このように表面には名前と職業が書かれている。
裏面には発行した都市の名前と、税を収めた日時の判るマークが付く。
何か質問は?」
「そうですね……えっと、他の街でも使えるんですか?」
「国内ならば、どこの街でも使えるぞ」
「変な言い方かもしれませんが、持っている事でのメリットとデメリットは?」
「ははは、ここでそれを聞くか。
そうだな。メリットは、まずは身分の証明だな。
それから討伐の報酬が出る事か。税符が無ければ報酬は出ない」
「討伐の報酬?」
「街道沿いや森に居る害獣を討伐した場合、報酬が出る。勿論証明する物を持ってきてもらうがね。
害獣退治も兵の仕事だが、民間人がしても良い。
報酬が出た方が、積極的にやってくれるだろう?」
あっ、こんな所に冒険者ギルドみたいな所があったわ。
ラノベ読んでると気になってた部分なんだよね。
ゴブリン退治して耳を持って帰ると、報酬が出るアレ。
その金はどこから出てるんだろ?って思ってた。
そうか、領主や国から出てたのか。ギルドが払う訳無いよな。
で、税金を払ってない者には報酬も出さないと。納得。
「デメリットは、やはり税金を払う事だね。税額は職業や居住区によって変わる」
「住んでいる所ですか?」
「ああ。この街に住んでるなら、少し安くなる」
「住んでるの定義は?」
「簡単だ。自宅が有るか無いか、だ」
「住んで無いけど、家があるって人はどうなります?」
「あぁ、商人みたいにか。その場合でも安くなるぞ」
へ~。別荘みたいなのでも安くなるんだ。
まぁ、別荘買う方が割引額よりも高いけどさ。
「後は税金の払い方だが。
年に数回、全ての門が閉まる。その時に中に居たら税金を払ってもらう。
あちこちに詰め所があるので、そこに行けば収める事が出来る」
「門が開くまで、どこかに隠れて居れば良いんじゃないですか?」
「どういう仕組みかは知らないが、門が閉まった時に全ての税符の位置が判るんだ。
払えば反応が消える。そして全ての税符の反応が消えるまでは門が開かない。
いつまでも反応が残っている場合は、その場に兵が行って逮捕する事になるな。
その場合の税金は高くなるから、気をつけろよ」
何その怖い仕組み。GPSでも入ってるのか?
ちゃんと払おう。
「もう良いかな?」
「はい、大丈夫です」
「まぁ、判らない事があったら、また聞きに来れば良い。
では、この税符を舐めてくれるかな?」
「えっ? 舐めるんですか?」
「あぁ。体液から個人の情報を得るらしくてな。
汗や血でも良いんだが、舐めるのが一番早いだろ?」
よくあるヤツですね。
確かに、血の必要は無いよね。ってか、何でラノベは血なんだろう?
ペロッと舐めると、表面に俺の情報が浮き出てきた。
「ふむ。タクヤね。職業は狩人か。住まいは?」
「宿に泊まっています」
「そうか、では500コルだな」
「もし、家があったらいくらです?」
「250コルになる」
半額か。日本円で2500円の得。微妙。
こうして、俺は身分証となる税符を手に入れた。
次話は3日の17時に投稿します。
今年もよろしくお願いします。