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我が輩は【人】である。

作者: しまりす

我が輩は【人】である。





コケコッコ~~~~~~ッ。


今日も、いつもと変わらぬ一日が始まる………………はずであった。


オレは、なぜか縁側の日当たりよいところでゴロッとしていた。


何やら台所から美味しそうな味噌汁の臭いがしてきた。


トントントントン………………


包丁でまな板を叩く音が小気味良く聞こえる。


『お父さん、トイレで新聞読むのはやめてくださいにゃ~』


オレは一瞬、はてなマークが頭の上に幾つも出たような錯覚に襲われた。


『やめてください……にゃ~?』


寝ぼけまなこの目をこすって、エプロン姿の母親を見ると………………


『な、な、なんと!!』


『姿形は人だが顔が猫!!』


卓袱台ちゃぶだいの前に座っている父親に恐る恐る視線を移すが新聞で顔がよく見えない。


しばらくすると妹が二階から慌てた様子で階段を降りてきた。


ダンダンダン…………アタタタ。


『もう!』


『お母さん!』


『あれほど、早く起こしてて言ったのににゃーーー!』


『今日は朝練なの知ってるにゃ!』


母親……猫は、娘をなだめるように答えた。


『あらあら……そんなに慌てて。』


『朝ご飯はしっかり食べて行きなさいにゃ~』


オレは咄嗟に思った。


妹も、語尾に、にゃ~を着けて話したということは………………


オレの予想は的中した。


妹の顔も、やはり猫!!


バサッと新聞を閉じる親父の顔も、これまた猫!!


『どうなってるんだ!!』


『この世界は???』


妹猫がパンをくわえて慌ただしく縁側の廊下へ出た。


『イタァーーーーーッ!!』


『あ、ゴメンね、人ちゃんの足踏んじゃった!』


『いいよね~人は一日中、縁側でゴロゴロして、昼寝できるしー』


妹猫はパンをちぎって、オレの口に運んだ。


『い、いらねーよ!』


『そんなもん!』


妹猫はキョトンとして、オレに話し掛けてきた。


『今日の人ちゃんは、お腹空いてないみたいにゃ。』


妹猫はオレの頭をブラシングし始めた。


『イタタタタタ……強すぎるよぉー!』


母親猫が、見かねて妹猫に声を掛けた。


『人が嫌がってるじゃにゃい~』


『あまり、人をいじめちゃだめにゃ。』


妹猫はブラシを置いて答えた。


『はーいにゃ!』


『じゃね、人ちゃん、学校行ってくるにゃ!』


オレの頭をポンと叩いて玄関へ急ぐ妹猫。


『なんでやねん!!』


『このオレが、こんな扱いされるんは?』


親父猫も、重い腰を上げてゆっくりと玄関へ向かった。


『そろそろ、わしも会社へ出掛けるとするにゃ~』


母親猫が玄関先まで鞄を持って行く。


『あなた、気を付けていってらっしゃいにゃ~』


『あ、そうそう、帰りに鰹節を買ってきてくださいにゃ~』


父親猫は、軽く手を上げて肉球で挨拶した。


『ああ、わかったにゃ、母さん。』


母親猫は、家族を送り出した後、掃除にかかった。


オレは首根っこを掴まれ庭の砂利の上へと運ばれた。


『ゴメンにゃ、人ちゃん、お掃除する間、そこにいてにゃ。』


母親猫が銀ボールの器に人フードを入れてオレの前に置いた。


『何?、これ、素手で食えということ???』



しばらくオレの様子を見ている母親猫………………


『あら、お腹の調子でも悪いのかしらにゃ~』


『ここらには、動物病院は見当たらないしにゃ~


『ふ、ふざけるなぁ!』


『わ、我が輩は、』


『わ、我が輩わぁ!』


『人であるーーーーーっ!!』



人であることを痛切に訴えるオレを見て母親猫が呟いた。



『あらあら、こんなに鳴き声をあげるということは、よっほど辛いのにゃ~』



ジリリリリリリリリリーーーーン



けたたましい目覚まし時計の音が鳴り響く。


布団を蹴飛ばし、はたと目を覚ますオレ。


夢………………だったのか。



そりゃそうだよな。


あんなこと、現実に起こったらビックリポン!だぜ。


何にせよ。夢でよかった。


手早く着替えて、二階からキッチンのある一階へ降りるオレ。


いつもと変わらぬ風景がそこにはあった。


背中を見せて台所に立つ母親と卓袱台ちゃぶだいの前で新聞を開く親父。



しばらくすると妹が慌ただしく二階から降りてきた。



ダンダンダン…………アタタタ。


『もう!』


『お母さん!』


『今日は早く起こしてて、あれほど、言ったワン!』


『朝練て知ってるワン!』



オレは叫びたくなった!!



『今度は犬かよーーー!!』



『我が輩は【人】であるーーーっ!!』



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