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ぼっちになりたいお嬢様に死角なし

 

 筋肉オヤジにわたしのグングニルとドリルのエクスカリバーを没収されてしまった。

 どうやら庶民の世界には銃刀法違反という法律があるらしい。


 わたしが突きに行ったグングニルの切っ先を腹筋で受け止めてぶっとい右手で握ると、ドリルが振り回すエクスカリバーを胸筋で白刃取りし、万力で挟んだ時のようにメキメキと鳴らした。

 コレだけなら引き下がらない。

 マジか!? と思ったけど女神オーディンの名にかけて引き下がらない。

 だが……。

 ぶっとい左手で学校旗を飾る旗ポールを握り、サムズアップするように親指を立て、小枝でも折るように旗ポールをへし曲げながら『没収か折られるかを選べ』と言われたら、女神オーディンとはいえまだ駆け出しのわたしでは逃げ……没収されるしかない。


 ………………。

 …………。

 ……。

 逃げましたよ。それがなにか?


 帝王だったら制圧破壊前進ですから逃げられませんし、帝王への覇道を歩んでいたならやはり逃げられません。

 わたしは帝王から神格化した女神オーディン。

 戦いの神であり死の神、そして叡智の神。

 主神オーディンの模範だけしていれば逃げませんが、わたしは新垣結衣の作る覇道を歩む女神オーディン新垣結衣であり、覇道の終着は神々の上に君臨する者なので、主神オーディン含めた神々の都合は関係ありません。


 女神オーディンのわたしの発言や行動は全て『わたしの中』では正しいのです。


 神とは発言と行動で庶民に問い、その結果で敬われる。

 だが、神々の上に君臨する予定の女神オーディンの新垣結衣は違う。


『新垣結衣が作る、神格化した新垣結衣の覇道を、女神な新垣結衣が歩み、神を越えた存在になる』


 新垣結衣が歩む覇道では、新垣結衣のさじ加減で正しいと思えば、女神オーディンの新垣結衣は発言し行動してもいいのだ。

 従って、新垣結衣を全肯定する従者ドリルやわたしの力(お金)に相応しい一条のような人間しか必要ないため、敬われようとは思っていないし信者も求めていない。


 何はともあれ、わたしのおかげでお金に物を……わたしの力で作り出したグングニルとエクスカリバーは折られずに済んだから、わたしの行動は正しかった。


 それよりもあの筋肉はどうなっているんだ。


 グングニルもエクスカリバーも真剣なのに刃が通じないのは、やはり未来から来た殺人アンドロイドなのか?

 一応、筋肉オヤジを攻略するために、ドリルと一緒にわたしが買ったDVDで殺人アンドロイドを研究し、神槍と聖剣を八王子グループに作らしたんだけど。

 設定•筋肉は未来の殺人アンドロイドを凌駕しているのか……?


 いや、弱気になるな。


 駆け出しとはいえわたしは女神オーディン。

 装備するのは世界最高峰のテクノロジーを屈指して作り上げた武器。

 貫けない筋肉はないはずだ。


 …………んっ?

 何かが引っかかるぞ。

 最強の矛と最強の盾が闘えば、どちらも壊れるから矛盾になる。その矛盾が起きなかったのは……そうか!


 貫けないのは武器ではなく、わたしがまだ駆け出しだったからだ!

 最強の矛、神槍グングニルといっても扱うわたしには西洋槍術のたしなみがないから、最強の盾である筋肉を貫けなかった。

 たぶんドリルも西洋剣術のたしなみはないはず。。


「ドリル。聖剣エクスカリバーを装備するに相応しい西洋剣術を身に付けているか?」

「結衣ちゃんと同じく日本の剣術でしたら学んでおりますが、西洋の剣術となりますと学んでおりません」

「わたしも神槍グングニルを装備するに相応しい西洋の槍術を身に付けていない」

「日本の槍術ではダメですの?」


 わたしとドリルは花菱じいちゃんに日本の武術を学んでいる。お嬢様には必要だからだ。

 だが、西洋や中華は学んでいない。

 理由としては、負けは死を意味するお嬢様の世界で、花菱じいちゃんは一度も負けた事がないから。この一言に尽きるだろう。

 日本の武術を極めれば最強になれるのか、花菱じいちゃんが最強なのかは判然としない。何故なら。


 武術を極めても弾丸1発で死ぬのがお嬢様の世界。


 誰が最強で、何が最強の武術なのかは判然としないのだ。

 だからこそ、弾丸1発で勝敗を決められないためには、花菱じいちゃんのような生き証人の技術こそが、お嬢様の世界で生きるわたしやドリルに必要だと判断している。

 その、お嬢様の世界で生きるための技術とは、お披露目できるパフォーマンス(スポーツ)ではない。


 わかりやすく言えば、殺人術。


 勘違いしている庶民は多いが、殺人術とは人を殺すための技術ではなく、相手に殺されないための技術。……だと、花菱じいちゃんが言っていた。

『空手道の正拳突き』『剣道の上段構えからの一振り』『柔道の一本背負』

 誰でも知っている技術だが、道だからこそ心技体を鍛えて相手と競えるだけで、使い手が心技体の道から逸れてしまったら、3つの技術は殺人術に変わってしまうのだ。

 極論を言えば、武術を学ぶ人間でなくても、先日の暴漢のように心のタガが外れてしまって人間としての道から逸れてしまったら、その行動が殺人術になってしまうのだ。


『殺人術とは人を殺すための技術ではなく、相手に殺されないための技術』


 正直に言うと、わたしにはその意味がわからない。

 わたしは一条の自衛行為を肯定できるし、心を乱して道から逸れてしまった者から自分を守るには相手を圧倒し制圧しなければならない。一条と暴漢のように力の差があろうとも、油断は禁物なのだ。人間はナイフ1刺し弾丸1発で簡単に死ぬのだから。

 勘違いしている庶民は多いと言われても、相手に殺されないための技術の行き着く先は『相手を沈黙させる技術』、すなわち一般的に解釈されている相手を殺すための殺人術としか思えない。

 花菱じいちゃんは何をもって『殺人術とは人を殺すための技術ではなく、相手に殺されないための技術』と言っているのだろう。

 ……わっかんね! 考えてもしかたない!

 今は筋肉オヤジをぶん殴る方が先決だ!


「日本の槍術でもいいと思う。だが、日本の武器とは形が違うから重心も違う。日本の槍術を応用するにも武器の形状に慣れないと、ただのチャンバラだ」

「先ほどは見事なチャンバラでしたわ」

「グングニルとエクスカリバーが完成した日、花菱じいちゃんと空菱は華麗に振り回していただろ。わたし達がチャンバラになったのは、経験の差だ。女神やその従者になろうとも駆け出し中は、弘法筆を選ばず、とはいかない。女神らしくないが、修行だな」

「ラグナロクに備えて修行するのも女神オーディンの勤めですわ」


 主神オーディンもラグナロクに備えていたからな。

 わたしが修行しても……有りだな。

 授業なんて受けている場合じゃない。

 HRが終わったらドリルと修行だ。


「新垣さ〜ん。先生は眼帯と包帯と三角帽子を装備して学校に来たら没収と言ったと思いましが〜?」


 ひよこちゃんか。

 先生の言葉よりも、女神オーディン新垣結衣の言葉が正しいのだ。と言ったところで、庶民には理解できないな。

 クズ女はクズ女らしく石コロ眺めて自慰行為でもやってろ。


「ドリル。ひよこちゃんに例の物を」

「はいですわ」


 ドリルは座席の後ろに置いてある大きな箱を机の上に置く。


「女神オーディンから先生へプレゼントですわ」

「ダメですよ〜。先生は生徒からの貢物は受け取れませ〜ん」

「先生。女神様は庶民に貢ぎませんわ。この品は、先生が1週間前に女神様の教育係へ……」

「ゴホン。ドリル、戯言はいい。わたしが作った魔道具を前に言葉など意味は無い。見た瞬間、ひよこちゃんは全てを理解する」


 1週間前、ひよこちゃんに譲歩しないで学校をサボったお詫びの品ではない。ましてや、空菱に電話しないようにするための賄賂ではない。

 色々な物を作れる女神オーディンが、空菱に電話できない魔法を込めて作った魔道具だ。コレはけして、今後の口止め料を前払いしているのではない。


「先生。女神オーディンが作りました『効果抜群』の魔道具ですわ」

「何を見ても先生は鋼の精神で受け取りませんよ〜」


 ひよこちゃんはひょうひょうと大きな箱に手をやる。

 ぱかっとはならないがドリルの方へ蓋を開くと、中身を視界に入れる。

 刹那————

 ひよこちゃんは蓋を閉めて踵を返す。


「出席確認を取りますよ〜〜」

「おい。没収はどうした」


 一条はスタスタと教卓に向かうひよこちゃんに声をかける。

 ふっふっふ。

 ひよこちゃんはすでに魔道具を受け取っているのだ。

 没収などできん!


「一条く〜ん。眼帯•包帯•三角帽子を装備しちゃいけませんという校則はありませ〜ん」

「鋼の精神はどこに行ったんだあ?」

「何のことですか〜? 先生は何も受け取ってませんよ〜。校則を思い出しただけです〜」

「その指にある30カラットの永遠の輝きはなんだ?」


 ひよこちゃんは右手薬指にある30カラットの永遠の輝きを見る。


「一条く〜ん。先生は学校ではみんなの先生なのでプライベートには立ち入らないでくださ〜い。出席確認を取りま〜〜す。新垣さ〜ん」

「3おくえ〜〜ん」

「ありがとうございま〜す。一条く〜ん」

「教師辞めてくださ〜い」

「寿退社希望で〜す」



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