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願いは現実に  作者: ニス塗った作者
第2章:どうなってんの?・・・
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第7話:シャープウルフ




 馬車の移動は問題なく進み、今日も野営をする準備をし始めた。

 俺が異世界に来てからそろそろ4日目となる日なのだがゆっくりさせてもらえないようだ。


 「客人、今日はモンスターが近いようだから薪集めに行くならこれを一応持っていきな」


 そう言って業者が持ってきたのは鉈だった。それも先端が刃の方向に尖っている。試しに軽く素振りをしたらヒュンヒュンと風切り音が心地よく鳴らせる。


 「わかった。これ、借りていくよ」

 「ああ、忘れてなくさないでくれよ。あとモンスターがいたらこっちに逃げてきな」

 「倒さなくても?」

 「馬鹿、モンスター相手に一人で戦うのは無謀だ」


 そういうものなのかね?とりあえず俺は業者に挨拶して少し薄暗い森に枯れ木集めのために入っていった。連れはいつもの奴隷の皆さん。もちろんリフもいる。

 リフはいつも馬車から降りては俺に駆け寄り、後ろで待機している。何というか美人が自分の後ろに立っていたら気まずいのと同じで、すごい気まずい。


 「旦那様、そろそろ終わりましょう。暗くなってきたのでこれ以上は危険かと」

 「ああ、そうだな。あとその呼び方なんだが」

 「なんでしょう?」

 「俺のことは旦那様じゃなくて迅雷と呼んでほしいんだが」

 「わかりました。ジンライ様」


 うん、旦那様は少し勘違いされそうだったしこれでいいよね。それにしても様付けか、外商の職員くらいしかされなかったから違和感がすごいな。しかも美人だし。


 (ガサガサ)


 ん?右のほうから何か動く影が見えたような気がしたんだが。


 「・・・リフ、逃げるぞ。おそらくモンスターだ」

 「はい、準備はできています」


 彼女を見てみるとしっかりと枯れ木を抱えていた。俺もしっかり抱え込むと走り出した。

 それと同時に右の茂みも大きく揺れれて何かが飛び出した。


 「ジンライ様!シャープウルフです!」


 シャープウルフ。鋭い狼か、洒落ているな。名前通り俺たちが走っている横をぴったりと走ってくる。野営地まであと少しなのでこのまま走れば追いかけてはこないか?


 と思っていたがどうも1匹だけではなさそうだ俺たちの左右を挟むようにして音が分かれた。


 「あっっ」

 「リフ!」


 どうやら暗くなった道に木の根っこが出ててそれに引っ掛けてしまったようだ。

 俺は枯れ木を投げ捨て彼女に近づき業者から渡されていた鉈を手に持った。


 「リフ大丈夫か?」

 「はい、ジンライ様申し訳ありません」

 「ここから野営地まで全力で走ったら逃げ切れるか?」

 「私だけなら何とでもできますがジンライ様が・・・」

 「人を呼んで来い。これは命令だ、後ろを振り向かず全力で野営地まで走れ。」

 「ですが・・・」

 「いいから呼んで来い。早くしないと俺が持ちそうにないからな。」


 そう言い聞かせ彼女の背中を軽く押した。


 「わかりました。ご武運を」

 「ああ、早くしてくれよ」


 彼女は枯れ木を捨て囲みつつあった狼を大きく跳躍してさっきよりもはやい速度で走り出した。

 俺はそれを見送りつつ木を背にした。これで死角は防げる。狼どもは唸り声をあげながら俺を品定めしているようだ。数は4、俺は鉈をしっかりと構え迎撃態勢に入った。



 狼どもは俺が構えるとじわじわと輪を狭め始めた。

 そして前方にいた一匹が飛び跳ねて噛みつこうとしてきた。

 俺はそれを華麗にとはいかないが躱し、木にぶつかった狼の横腹に鉈の先端を振りかざし、突き刺した。


 突き刺した狼は逃げようともがくが、俺はそれを良しとはしなかった。そのまま暴れる狼の首元に膝を食らわせ押さえつける。腹も同様に膝で押さえつけ。テレビで見たように首を滅多切りにする。

 すると流石にほかの狼たちも襲い掛かってきて、背中から噛みつかれた。


 「クソ!」


 俺は怒りに任せて体を動かし、狼を引き離す。そしてまた木を背にして狼どもと対峙した。

 さっき首元を切った奴は弱弱しく呼吸はしているがあれではもう助からまい。問題はほかの3匹の狼どもだ。せめて、生き残るためにはあと一匹やらなければならない。

 そう考えると視界がクリアになる。思考することはもうない。あとは簡単だ体を動かし相手に死の恐怖を与えてやればいい。


 狼どもは俺の周りをゆっくりと歩く。俺は3匹を視界に入れるようにして気を抜かないようにする。すると狼どもは野営地の方向に顔を向けゆっくりと俺から離れていった。


 「ジンライ様!」


 するとリフの声が聞こえてくる。しかし俺は気を抜かずに狼が見えなくなるで睨み続けた。

 ランタン光が近づいてきてやっとリフの顔を見た。それは思わず見とれてしまうような綺麗な彼女が泣いていた。

 彼女は俺は振り向くのと同時に抱くきついてきた。そして俺の胸で泣いていた。


 「おい、客人。あんたよくシャープウルフの群れから生き残れたな。」


 鉈を渡してくれた業者が言う。俺は、


 「あんたが渡してくれたこれが役に立ったから生き残れたんだ。」

 「そうか、それならよかったんだ。それでこのシャープウルフはあんたが?」

 「ああ、何とか倒せた一匹だ」

 「そうか、なら明日が楽しみだな?」

 「どういうことだ?」

 「ははは、それは俺の楽しみなんだ言えないね」


 そう言って彼は野営地に戻っていった。俺はリフを見てみると彼女は泣き疲れて眠ってしまったようだ。

 俺は痛む背中の傷に顔をしかめながら彼女を抱きかかえて戻っていった。

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