第5話:理性という名前の奴隷
「・・・・・・ふぅ」
薄く焼けた肌、茶毛、そして上目遣いでちらちらとこちらを窺う目。う、美しい。思わずどこかのUDの焼印を入れる美意識人になるところだった。
「ジンライ君・・・?」
ペゲッシャさん、そんなヤンデレみたいな顔で俺に迫るのはやめてくださいよ。
「君はこの娘が気に入ったのかね?」
「はい、かわいいから好きです」
ハッ!?しまった。こんな時に本能的に答えてしまうなど。どうしよう。すげぇにやにやした顔でペゲッシャさんが見てくるんだけど・・・
「ジンライ君、取引をしよう。」
「取引?いったい何と何を取引するんですか?」
「なに簡単なことだ、君が我が商会のコンサルタントになってほしい。なってくれるならアレを君に譲ってもいいと思っている」
コンサルタント?譲る?猫耳を?
「はい、喜んでお受けします」
はい、やらかしました。もういっか、中年のおっさんにアドバイスするだけの仕事だけでかわいい奴隷がもらえるんだから。
「大丈夫だ、アレの奴隷契約はこちらで変更させてもらうし、コンサルタントに関しては有用な話だったら給料も払う。」
ペゲッシャさんマジ紳士だわ、服を譲られたからってふつうここまでやらないと思うんだが。俺が間違っているのだろうか?とりあえず、思わず落としてしまった枯れ木を手に持ち野営地に戻った。
気になる。実は野営が始まってから奴隷たちは馬車の中に入っていくのにフードを脱がした彼女だけ居て俺の後ろ近くでウロウロしているのだ。
「ペゲッシャさん、彼女はどうしたんですか?」
「ん?彼女の経緯のことか?それとも現在何をしているのかかな?」
「両方お願いします」
「ふむ。まぁ、見張りをしながらはなそうか」
ペゲッシャさんはぽつぽつと話し始めた。彼女の名前はリフという名前だということ。彼女は戦乱に巻き込まれたときに人間の町にいたこと、町にいた獣人がどうなったかなど。そしてペゲッシャさんが哀れに思って彼女を奴隷として保護したこと。現在、彼女が俺の後ろでウロウロしては表情を変えていることなど。
思ったより彼女は若いらしく、今は17とのことだった。17歳か高校二年生くらいの女の子が奴隷になってるのかぁ、思ってたよりもヘビーな話だったぜ。
「あ、あの!」
そんなことを思っていたら後ろから声をかけられた。振り返るとやはりあの女の子でまたフードを付けていた。
「なに?」
思わずぶっきらぼうに答えてしまった。正直、女性と話すときなんて営業の時と学生のころ数回だけの俺に意識するなというほうが無理な話だ。
「あ、あな・・・旦那様のお名前をお教えくださいませんか?」
「迅雷・・・それが名前だ」
旦那様・・・いいね。でも緊張して言葉数が少なくなってしまう。うぅ、困った。そういえばペゲッシャさんは
(ニヤニヤ)
クッソ、このおやじ『面白いものが見れてるわー』みたいな顔しやがって
「ジ、ジンライ君?なぜ私を睨んでいるのかね?」
「いえ、なんでもありませんよ?」
「いや、いきなり笑顔になられても誤魔化されないぞ」
「何か問題でもおありでしたかな?」
「・・・いやなんでもなかった」
「はい、そうですか」
「私はもう寝る」
そう言って彼はテントの中に入っていった。よし、おっさんは撃退したからこれで大丈夫だな。
「旦那様、旦那様のことは何とお呼びしたらよいですか?」
・・・おっさん、戻ってきてくれ。