第3話:発想好きの商人
彼の名前はペゲッシャ、23か国の内のシェアレという名前の都市で行商人、為替商人、雑貨店などの商売をしているらしい。
彼曰く、「商売は発想力と妄想から立ち上げるものだ」と言っている。
「さて、ジンライ君だったかな?私の話はもういいだろう?その服の出所を教えてくれ。」
む、どうしようか。ここで『この服は私が作りました。』といってもよいのだが、服を作ってくれと言われると困る。ふむ、無難に親からもらったにしておくべきか。
「実はこの服は私の両親からもらったものなので、わからないところが多いですが。ご所望なら、ペゲッシャさんの持っている服と交換してもらえるなら、お譲り致しますよ。」
そういうとペゲッシャさんは俺の後ろにある木箱を指さして
「そこに商品の服が入っている、ほかにも壊れやすいものが入っているから気を付けて取り出してくれ」
といい、皮の水筒を取り出してくつろいでいた。
さて、俺は揺れる馬車の中で立ち上がり中腰で木箱の中身を見た。そこには茶色い陶器と丸められた衣服が緩衝材として入れられていた。取り出してみると麻の服や見たことのない植物らしき素材を使った服などが入っていた。
俺はその中でグレーの麻の服一着とそれに合いそうなズボンを手に取りその場で着替え始めた。
「・・・ジンライ君、その付けている下着も私の譲る・・・いや、それは私が買い取る」
は?俺は一瞬何を言われたのかわからなかった。いきなり着替えているところにその下着を買い取るなど言われたら誰でも驚くだろう。いや、驚かない人などいない。
とりあえず、深呼吸をして下着を脱いだ。馬車の風が涼しく開放感に満たされた下腹部。そして突き刺さるおっさんの視線。
「とりあえず、さっき開けた箱の隣の箱の中に下着類が入っている。それを履き給え」
俺は裸のまま木箱を開け、無難な下着を取り出して着替え始めた。その間ペゲッシャさんは今さっき脱いだ服や下着を丁寧に観察していた。
「着替え終わりました。それで今さっきの買い取るとおっしゃいましたが、それ一枚でいくらで買い取っていただけるのでしょうか?」
「そうだな、見たことのない材質に、特殊な製法で作られた布。さらに穴に留め具で前を閉じるという発想。私だったら金貨14枚で売りに出す。」
「はぁ、そうなんですか?」
とりあえず、いくらかわからないが金にはなるようだ。しかし、こっちの世界にはボタンの発想はまだなかったのか。
「ジンライ君、今は手持ちがないため何か希望はあるかね?」
「そうですね、できればこのまま町に乗せてってもらうことと食料。それと町での仕事の斡旋などをしていただけるといいですね。」
「わかった、その条件でいいだろう。仕事に関しては今から話していこうか。」
ふぅ、これで食料の心配と仕事については大丈夫だな。