第2話:道なりに・・・
俺は歩き始めて致命的な問題に直面した。
「水も食い物も見当たらねぇ・・・」
そう、辺りは一面草原でたまに見かけるのは四足歩行の犬のような大きな生き物と六脚で駆けている馬のような何かだ。
「馬肉って食ったことないがうまいのだろうか・・・」
そんなことを言っていたら腹が鳴り空腹感がさらに増して虚しく感じた。自分の手持ちはメモと鉛筆一本、さすがに鉄腕〇ASHでもここからは何も生み出せないだろう。
『メモ・・・紙はポプラだから大丈夫か?』
などという極限状態になり始めた俺は道が合流して大きくなっているところに出た。
「やっと、やっと寂れた道じゃなくてちゃんと使われていそうな道に出られた」
辺りを見渡すと数時間前は何もない草原だったのに少し木の生えた原っぱという雰囲気になっていた。いや、原っぱというより林に近いかもしれない。
そんなどうでもいいことを考えていたら。前から馬車五台が列をなして近寄ってきた。
「馬車か、こっちは普通の馬を繋げているのか」
二頭の馬を繋げた馬車がガタゴトと一定のリズムを響かせて俺の近くに止まった。よく見ると荷馬車に特徴的な稲と鎌を交差させた紋章とイギリスなどで見られそうな豪華な紋章を付けた馬車だった。
「おい、そこの。こんなところで何をしている?」
いきなり先頭の馬車の業者に話しかけられた。しまった、じろじろ見すぎて怪しく思われただろうか?そんなことを考えているとさらに突飛な格好をした中年に近い男性が荷台から顔を出してきた。
「どうした、何か問題でも起きたのか?」
「いえ、そこの旅人が何も荷物を持っていないのが気になりまして。」
「そうだな、それにしても奇妙な格好だな。」
そういわれて自分の格好を確認するとジーンズにTシャツ、そして適当に羽織ったシャツのみだ。
「おい、そこの旅人。食料がないなら分けてやろうか?その代わりにその服の出所を教えろ」
魅力的な話が出てきた、言葉が通じるかわからないがとりあえずあの突飛男性と取引してみるか。
「どうだ、教えてくれるか?」
「はい、お教えいたします。ですが、食料と近くの町に連れてってくれることを約束していただけるとありがたいのですが、どうでしょうか?」
「それだけなら後ろから二番目の荷馬車に乗せてやらんこともないぞ」
「では、この服の出所の話をしましょう」
さて、怪しまれずに騙し切れるか?