プロローグ
目が覚めたら目の前には綺麗な夕陽があった。紅い空、転々とある雲が赤みを帯びている。そして半月が二つ。それも一つは紅い。
私の名前は迅雷。元の名前は山代 富男、元日本人だ。21歳の時に典型的な異世界転生をした。準オタクな社会人男性だった。会社では上司に指示され仕事をし、帰る時間はいつも規定時間より4時間もズレるような役柄だった。
そんな日々の合間に変化が起き始めた。
私の親や、同僚、友人、上司などが私のことをふと忘れるようになり、その数ヶ月後には私を完全に忘れてしまった。
何より辛かったのは親に忘れ去られたことだ。更には給料やガス、電気まで止められマンションから違法な住民とされ、警察に捕まった。
そして留置所で警察にも忘れ去られた時、奴が居る事に気がついた。
『やぁ、初めましてで良いのかな?』
私は反応しなかった。
何故なら、ある意味現実に期待しないで絶望していたからだ。
『君には昔にお願いされたことがあるんだ。そして順番がやっと来たから君に会いに来たんだ。』
何を言っているんだ?私は思考力が落ちた頭で考えていた。なぜ奴の姿は見えないのかなど、奴のことを分析している時にお願いなどと言われたのだ。
怪しい。この一言しかない。
『昔の君は私に良くお願いしてたんだ。私に会ってお願いしたいとね。そう、あれは8年前くらいだよ?思い出してごらん?』
そう言われて思い出したのは中学生の時に布団の中で願った。いや、切望していた夢だった。
神に会って異世界転生したいという。年相応の笑われる夢。
『思い出した?』
おそらく神は私に問いかける。
『あ、無理に喋らなくてもいいよ。大体君の考えは私に聴こえているから。』
・・・神は私の願いを聞いてくれるのか?
『うん、今君の考えは聴いていたからね。異世界転生で良いのかい?』
ああ、だけど一つ聞きたい。
『なんだい?一つだけなら答えてあげるよ』
私、いや、俺が行く世界は今よりも楽しめるか?
『もちろん、元の秩序と惰性の世界とは違って君の人としての楽しみ方は沢山あるよ?』
そうか、それならよかった。
『じゃあ、君には次の世界の説明を入れてあげるね?』
入れる?説明を?どうやって?
『私は時間無いからパパッとやっちゃうよ?』
いや、だからどうやって入れるのか聞いているんだが?
『体感したらわかるよ、じゃあ頑張ってね〜)