ゾンビ
そのゾンビは むかし
とても うつくしい名で 呼ばれておりました
そのころ ゾンビは
優しさにあふれ あたたかく
それはそれは 忍耐づよく
寛容で 忠実で 自己犠牲を厭いませんでした
みなに 愛されておりました
しかし それから いろいろなことがあり
ゾンビとなって しまったのです
あわれなゾンビ 今は
さまざまな 禍々しいものを 自らのなかに取り込み 融合しています
たとえようもないほど みにくく 腐臭を放っています
だれも そばには 近よりません
そしてゾンビは そんな自分のおぞましさを よく しっているのです
もはや もとの姿にもどるのが 叶わないことも
ゾンビには いくところが ありません
ふらふらと あちらこちらを さまよって います
かわいそうな ゾンビ!
ぼくの ゾンビ
ぼくは おぼえています
きみが うつくしかった時のこと
ぼくは しっています
きみが 無垢の魂であったこと
ゾンビよ
ねむらせて あげましょう
死ぬことすら ゆるされない ゾンビ
それなら
ただ ねむりなさい
しあわせだった頃の おもいでに 包まれて
やさしい土の下で 闇のなかに 墜ちなさい
かわいそうな ゾンビ
そこの あなた どうか
ひとの心に住む たくさんの ゾンビたちのため
すこしの間だけ 祈ってやってください