出立
レストランでの会合から一時間後、フーとリクは、約束通りに西門の前に到着していた。
一見ルーズそうな二人だが、ランカの教育のたまものか時間に正確だ。
二人とも薄いパーカーのままだったが、ランニング用のシューズに履きかえている。
リクだけがゴルフバックのような縦長の荷物を左肩にかけていた。
西門と言っても、灰色の壁が垂直に聳えるのみだ。開門時のみ門の形態を取る。
ランカは出国の手続きで少し遅れてやってきた。服装は先ほどと同じカジュアルなまま、ランドセルに似た黒いリュックを背負っている。
「待たせたね。それじゃ、出発しようか」
音頭をとるランカの隣には背の高いスーツ姿の男が付き従うように立っていた。
フーは反射的に男を指さして叫ぶ。
「あー、さっきのおっさん!」
「やあ、僕はジョエル。わけあって同行することになった。それに僕はおっさんじゃない。お兄さんと呼べ、ボーイアンドガール」
あからさまに嫌悪の表情を浮かべるフー、髪に隠れて表情がわかりづらいリク、ランカは事の経緯を説明する。
「この人は私の……、友達の友達で、急遽今回の任務に協力してくれることになった。仲良くしてね、ちゃんと敬語使うんだぞ」
フーは仕方なくはい!と空返事をした。大人に対する不審感によるものだが、打ち解けるまで時間が要りそうだ。
「おじさんのことは別にいいんですけど、姐さん」
リクが静かに手を挙げた。
「この任務、女王蜂はご存じなんですか?」
「緊急性のある事案だから報告はしてない。でもさ、あの人に知らないことなんかないんじゃない」
ランカは軽くリクをいなすと、一足先に門に向かう。門は触れると水鏡のように波打ち、ランカの体全体が消失した。城外に出たのだ。
「おい、おっさん」
フーが、勝ち気な目でジョエルを見上げていた。
「あたしらがガキだからって、妙なことは考えんなよ」
「滅相もない。君らの仕事の流儀に合わせるよ。仲良くやろうぜ」
リクはジョエルの金に汚なそうな雰囲気を見て取り、ギャラの配分で揉めることを危惧していた。
常日頃抜け目のないランカにしては厄介な仕事を引き受けたものだと、弟分は密かに憂慮する。




