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OTOGI WORLD   作者: SMB
* trace of the cat to laugh at *
88/92

彼女との関係


海希「こら、コロ!待ちなさいって!!」


追いかけてくる海希から、必死に逃げた。

ビショビショになった体から、勢い良く跳ねる雫。

レイルは、部屋の片隅に追いやられていた。


レイル「俺はコロじゃないから待たねぇ!」


と、訴えてみるものの、やはり相手に伝わる筈もない。


海希「そのままじゃ風邪引いちゃうかもしれないでしょ?もうお風呂に入れないから、こっちにおいで?」


地獄だった。

彼女の甘い誘惑に乗せられ、その胸に抱かれながら連れて行かれたお風呂場。


レイルは泳げない。

水が嫌いなのだ。

そんな彼に、海希は容赦なく地獄のシャワーを体中に浴びせた。


レイル「いやーーーーっ!!!!嫌だーーーーっ!!!」


海希に捕まり、タオルに包められる。

それでも暴れるレイルに、海希は苦笑した。


海希「猫って濡れるの嫌がるんだ...ごめんね、知らなくて。今度からは気を付けるわ」


「いくらあんたの誘いでも、風呂場は嫌だ!

そう言うのは、風呂場じゃない場所で誘ってくれよ!」


と、レイルは身震いした。

しかし、また誘惑に負けてしまうのは自分でも分かっていた。

なので、余計に彼女が怖くなった。


海希「もう、そんなに暴れられたら拭けないでしょ」


両手で軽々と持ち上げられてしまう。

彼女の顔が近付いて来て、簡単に唇を奪われてしまった。


海希からの甘くて柔らかいキス。

とても恋人らしい行動だった。


自分が好きだと言った日から、こうやってキスをしてくれる事が多くなっていた。

それに、いつも彼女の方からベッドに引き連れられていくのだ。


元々大胆な女だと思っていたが、恋人となると、更にやる事が大胆になっていた。

しかし、レイルもそう言うのは嫌いではない。


海希「コロって、なんでそんなに可愛いの?これ以上惚れさせないでよね」


レイル「......っ」


体から一気に力が抜ける。

床に降ろされ、レイルは丁寧に体を拭かれていた。


彼女の手が、自分から離れていく。

名残惜しさを感じ、レイルは大きな瞳で彼女を見上げた。


レイル「...もう一回して」


そんな言葉は伝わる事なく、海希は着替えていた。

今日の下着の色は淡い黄色。

優しい彼女にはとてもよく似合う色だと思った。


その生着替えをジッと見つめながら待っていると、海希はレイルを抱き上げ家を出た。


レイル「どこ行くんだ?」


海希とのデート。

2人で外に出るのは、初めてだった。

なので、これは初デートになる。


海気の腕の中は気持ちが良い。

とても暖かくて、いつまでも抱かれていたい気分になった。


ポカポカとした暖かい午後。

やって来たのは、どこかの公園だった。


レイルを抱いた海希がベンチに座る。

膝の上に乗せられると、公園内の景色がよく見えた。


そして、レイルはハッとなった。

自分の目の前を、小さな蝶々が挑発するようにひらひらと飛んでいる。

そこから目が離せずにいた。


うわっ、なんかムズムズする...


衝動に駆られ、地面に降り立ち飛んでいた蝶々を追い掛ける。

あんな動きをされると追い掛けたくなってしまう。

必死になって手を伸ばした。


レイル「ちっ、逃したか」


草むらの中に逃げ込まれてしまった。

悔しくて、その辺に生えていた雑草に猫パンチをお見舞いする。


完全な八つ当たりだった。

逃げる事は得意でも、捕まえる事はそこまで得意ではない。

なんだか銃を撃ちたくなる。


日向「可愛いね!名前、なんて言うの?」


聞き覚えのない男の声に、レイルは振り返った。

いつの間にか、海希の隣に誰かが座っている。


海希「コロです。本当に可愛いんですよね。最近、猫馬鹿になっちゃって、本当に困る」


海希も、とても楽しそうに話している。

レイルは、相手の男を睨んだ。


レイル「なんだよ、あいつは...」


日向「俺も、犬より猫派なんだよね〜。ほら、おいで」


海希の膝の上に戻ってくると、男は生意気にも自分の気を惹いてくる。

それが馬鹿らしく、レイルは冷たく鼻で笑った。


海希「この子、人見知りみたいで。私も最初はこんな感じでした」


日向「そっか。ならしょうがないな」


レイル「しょうがないじゃねぇよ!どっかに消えろよ、俺達の邪魔すんな!」


せっかくの初デートの邪魔しやがって!


声を張り上げるが、どうやらこの男は退かないつもりらしい。

その態度に、レイルは更に苛立ちを覚えた。


気持ち悪い程に、作ったような笑顔を浮かべる男。

何より許せないのは、自分の目の前で海希に馴れ馴れしく話し掛けている事だ。


日向「この前の返事だけど...答え、聞かせてくれる?」


レイル「はっ?」


何の答えだよ。

お前に言えるのは一つだけだ。


と、レイルは眉を寄せた。


レイル「とっとと失せろ。お前が消えてくれないのなら、俺が消すまでだ」


丸い手の中に隠す、鋭い爪を光らせる。

いつだって()り合う準備は出来ていた。

お得意の銃じゃないのが不本意だったが、こんな男には必要ないだろうと判断した。


その時、海希に頭を撫でられる。

海希の優しい手に、なんだか力が抜けていく。

ひしひしと燃え上がっていた怒りが、静かに冷めていく。


海希「あの...日向先輩の事はそんな風に見てなかったって言うか...あ、でも、嬉しかったです!そんな風に思ってくれているのは。でも...」


一体何の話をしているのだろう。

レイルは不安になり、海希を見上げた。

もしかして、彼女はこの男が好きなのだろうか。


海希「その....ごめんなさい」


日向「そっか...返事が聞けて良かった。じゃぁ今まで通り、良き先輩後輩でいようか」


どうやら、早くも話はついたようだ。

聞いている分だと、彼はたった今、海希に振られたらしい。


当たり前の結果だったが、レイルは安堵した。

海希は自分にぞっこんの筈。

この間、お互いの気持ちを確かめ合ったばかりだ。

今日だって、たっぷりと甘い時間を過ごした。


レイル「この子は俺の恋人なんだ。次ちょっかい出したらぶっ殺すからな。...アマキは、浮気なんてしないもんな?」


海希「...はい」


膝の上で丸くなり、瞼を閉じる。

彼女の柔らかい手が、優しく背中を撫でてくれていた。





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