表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
OTOGI WORLD   作者: SMB
* trace of the cat to laugh at *
79/92

笑う猫の技量


レイル「よしっ...こんなもんだろ」


何度も同じ音色を聴いてしまっている為、頭の中ではずっと同じ音楽が流れ続けていた。

まるで、自分がオルゴールになった気分になる。


ネジを巻いてやれば、カリカリと音を立てる。

指を離せば、可愛らしい音色が流れる。


何度も確認した後、それを手にしたままバスから降りた。

そのまま魔法陣を撃ち出すと、あの屋敷へと向かう事にした。


少女「あっ...」


既に相手は待っていた。

屋敷の庭の隅で、1人で立っている。

レイルは彼女にゆっくりと近付いていくと、オルゴールを渡した。


レイル「ほらよ、大事に使え」


少女が、嬉しそうに笑った。


また、変な気持ちになる。

そこまで喜んで貰えるような事は、していないつもりだった。


無意識に振り返り、邸を見上げた。

窓はいつものように開けっ放し。

扉に近付き、いつものようにノックしてみる。


レイル「やっぱりいねぇか...」


しばらく待ってみても、誰も出て来ない。


なんだか妙に感じた。

ここ最近、ずっとここに通っているが、何かが変だ。

それに、昨日感じた臭いが少しキツくなっているような気がする。


少女「ねぇ、今度友達も連れて来て良い?」


その声に振り向けば、オルゴールの少女がまだそこに立っていた。

用が済んだのならとっとと帰れば良いのにと、レイルは軽く呆れてしまった。


レイル「何の為にだ?男爵はいないんだぞ」


少女「違う。あなたに会わせたいの」


レイル「は?」


彼女の言っている意味が分からなかった。

どうして自分がわざわざ会わなければならないのか。

レイルは眉を寄せた。


少女「あなたも男爵のおじさんと同じで直してくれたもの。とても嬉しい。きっと、他のみんなも喜ぶわ」


レイル「.....っ!!!」


眩しい。

彼女の眼差しが、とても眩しかった。

その眩さに、レイルは思わず後退る。


少女「...駄目?」


レイル「俺が直したやつなんか適当だって!それに、完璧とは言えないし....」


少女「駄目なの?」


再度尋ねられる。

彼女の目が、ウルウルと涙を溜めていた。


レイル「泣くなってば!!!」


少女「まだ泣いていない」


昨日も、こんなやり取りをした覚えがある。

こんな子供の相手は得意じゃない。

と、レイルは大きく溜息を吐いた。


レイル「....分かったって!その代わり、俺は気まぐれだからな。俺のペースでやらせて貰うぜ?それに、一切クレームは受け付けない。いいな?」


少女「良いわ」


嬉しそうに笑う。

また、変な気分になる。

自分が他人を喜ばせるなんて、とてもらしくない事だと思った。


少女「猫さん、ありがとう!大好きよ!」


それだけ言い残し、少女は駆けていく。


大好きという言葉に、胸の辺りが気持悪くなった。

あの少女に対してではない。

他人に感謝される自分に対してだった。


しかも好きだなんて言葉を子供に言われて喜ぶような人間でもない。


いつもピーターは、これの事を言っていたのかと実感する。


レイル「あいつ、マジでロリコンだな」


取り残されたレイルは、顰めっ面を保ったまま、拳銃を発砲させて魔法陣を潜った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ