笑う猫の友人
ピーターは、崖淵の様な場所に家を構えていた。
山頂に佇む、尖った屋根のお家。
大き過ぎもせず、小さ過ぎもしない家。
それも、ツリーハウスだ。
こんな場所にあるのは、彼に空を飛ぶ力があってこそだった。
台風や地震が来れば、すぐにでも落っこちてしまいそうな、ドキドキする家。
しかし、それを彼は楽しむようにして、ここに住んでいる。
ピーター「レイルが遊びに来るなんて珍しいね。ちょうど今、迷子達が帰った所だったんだ」
と、レイルに飲み物を差し出すピーター。
彼の正面に腰を下ろし、優しい笑みを浮かべる。
レイル「あぁ、お前が監禁している子供の事?」
さらりと言われた言葉に、ピーターは眉を寄せた。
ピーター「監禁じゃないって。あの子達が好きで遊びに来てるんだ」
ピーターは、どこかの保育施設でたまに子供の面倒を見ている。
それが仕事なのか趣味なのかは分からないが、それで稼いでいるらしい。
その子供達を、時々家に招き入れているみたいだった。
レイル「お前の本当の年齢を知れば、きっとびっくりするだろうな」
あの子供達からすれば、ピーターは優しいお兄さんだ。
しかし、それは決して爽やかなお兄さんではない。
見た目はそうだが、見た目に騙されているようではまだまだ子供だ。
ピーター「俺と結婚したいっていう子もいてね。本当、子供って可愛いよな」
レイル「ピーター...お前が想像以上にロリコンだった事に気付けなくて俺は泣けてくる」
ピーター「ロリコンだなんて、嫌な言い方をしてくれるなよ。俺は歳上だっていけるクチだぜ?つまり、恋愛に年の差は関係ないって事さ」
そんな事は聞いていないのに、ピーターはご丁寧にストライクゾーンの広さを教えてくれた。
どうして自分は、こんな奴に会いに来たのだろう。
確かに、まだ心を開ける仲だが彼が何を考えているのか分からない時もある。
と、レイルは呆れたように溜息を漏らした。
ピーター「そう言えば、双子ちゃんの店に新しいナイフが入荷したんだ。今度行ってみようかと思うんだけど、レイルもどう?」
レイル「俺はあの店に用がないからな...手入れだって自分でしてるし、今の所メンテナンスだって要らない。でも、お前がどうしてもっていうなら付き合ってやっても良いぜ」
ピーター「この世界はもともと物騒だから、他にも護身用は持っておいた方が良いと思うけど。魔女狩りの事件だって未解決みたいだし、次は猫狩りかもよ?」
レイル「はっ!!そんなの返討ちにしてやるっての。全然怖くないね」
魔女が次々に消えていく事件。
犯人がいるとするならば、捕まえてみたいとも思ってしまう。
レイルの好奇心が疼いた。
レイル「...そう言えばピーター。お前、最近男爵見かけなかったか?」
ピーター「レオナードさんの事?いいや、全く会っていないけど」
そうか。と、彼に軽く返事をした。
予想はしていたが、期待外れの言葉だった。
ピーター「じゃぁ、今度レイルの家に迎えに行くよ。って言っても、お菓子の家まではレイルの能力の移動だろうけど」
自分には必要ないが、ああ言うものを見るのは嫌いじゃない。
むしろレイルとっては好きな方だった。
しかし、あの店には一つだけ問題がある。
レイルのような人間にとって、少し厳しめな問題が。
ピーターとの約束を取り付けた後、レイルはしばらく彼と過ごしてから家に帰る事にした。
もちろん、ワープ銃を使ってだ。
現れた場所は、廃車されたバスの目の前。
中に入ろうとして、ふと足を止めた。
レイル「そうだ。男爵んとこの屋敷に行かないと...」
と、また銃を構えた。
そして、すぐにハッとなる。
また、だ。
何の為に行くつもりなのか。
まるで、体に染みついてしまっている一連の動き。
理由もなく、またあの場所に行きたくなっている。
レイル「あれから時間も経ってるし、今なら相手してくれるかもな」
地面に撃ちこんだ魔法陣が、レイルを誘う。
とくに男爵に用はないが、暇だった事もあり気にせず向かう事にしたのだった。




