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OTOGI WORLD   作者: SMB
* the real world *
7/92

猫派な私は猫に夢中


コロがやって来てから、数日が経っていた。


実家に預かってもらうと言う話は忘れられ、コロは私の家の住民となっていた。

徐々に買いためていた猫用グッズが部屋のあちこちに転がっている。


相変わらず愛想は悪く、ご飯の時間にしか寄ってこない。

私もそれなりに好きになって貰えるよう、猫用のおもちゃで誘ってみたりしてみたのだが、いつも無駄に終わってしまっていた。


そんな態度も慣れてしまい、違和感のある関係のまま、今に至る。







そして、大学での午後。


今日も3人仲良く女子トークを繰り広げる。

もちろん、話題は唯の恋路の話だ。


唯「今度、日向先輩とご飯に行く事になったの!」


唯の話によれば、日向先輩にさりげない猛アタック(既にさりげなくはないが)を繰り返し、一緒にご飯を食べに行くと言う項目のデートにこぎつけたようだった。


ありさ「へぇ、良かったじゃん。って言うか唯、前から思ってたんだけど、結構日向先輩に本気なの?」


疑問に思っていたのは、ありさだけではない。

私も、日向先輩と仲良くする事になんとなく罪悪感を感じていたのは、きっとその事に気付いていたからだ。


唯「まぁね。最初は付き合えたらラッキーぐらいだったんだけど。でも、先輩優しいしさ、甘えやすいんだよね」


頬をほんのり赤くさせながら、唯は照れ臭そうに笑っていた。

恋をすれば女は変わる、とよく聞く話だが、それは本当だった。


私も恋をする度に、こんな風になっていたのだろうか。


どちらかと言うと、いろんな男性を好きになり、コロコロと付き合う相手が変わる唯にとって、一途に一人を想い続けている事は珍しいかもしれない。


海希「付き合ったら報告してよね。応援してるわ!」


唯「うん!ありがとう!」


可愛いと言う言葉が似合う唯。

私と違い、全体的にふわふわしている感じで、とても女の子らしい。


おとぎ話に出てくる、お姫様のような子だ。

きっと、日向先輩とはお似合いの筈。


彼女の恋を応援する。

私は切に願った。








今日はアルバイトもなく、大学からそのまま帰宅した。


毎週金曜日にかかってくる親の電話の受け答えをし、お風呂上がりにはコロとのコミュニケーションを取る(コロにしたら迷惑だろうが)。


本当に懐かない猫。

コロと言う名前にも、あまり反応しない。


私は、お風呂上がりの火照った体を冷やす為、バスタオル一枚でコロの前に横になり、頬杖をつきながらジッと相手を見ていた。


ペロペロと自分の腕を舐め、毛繕いをしているコロは、いつものように私には無関心だ。


海希「本当に懐かないわよね、あんた」


意地悪く、少し乱暴に頭を撫でてやった。

何がそんなに楽しいのか、コロは必死に毛繕いをしている。


海希「いつかは慣れてくれると思ったけど、コロとの関係は、このまま縮まりそうにもないみたいね」


前の飼い主から虐待を受けていたのなら、まだこの関係は心を開いてくれている状態なのかもしれない。


初めて会った時は、私に敵意を剥き出しだった。

怪我も治り、今では元気に暮らしている。


コロが望むのなら、野良に戻してあげても良いのかもしれないと感じたが、どうも自分の方に愛着が湧き、そう言う気にもなれない。


海希「前の飼い主にも、そんなに冷たくしていたの?」


ピクリと耳が動いた気がしたが、それでも毛繕いの動作は止めない。

私も、気にせず独り言を続ける。


海希「やっぱりひどい事されてたの?だから、あんなに怪我していたの?」


答えなんて返って来ない。

やはり独り言になってしまう。

それでも、言葉を続ける。


海希「私はあんたの味方だからね。拠り所にして良いのよ?」


コロの目が私を見る。

猫らしく、ニャーと鳴いた。

色違いの2つの瞳に、私は捕まっている。


海希「片思いは辛いわね...私はあんたが好きなのよ?コロが私を信頼して貰えるよう、もっと頑張るね」


なんだか、キザな男になった気分になる。

返事のしないコロを相手に、それも、凄く口説き文句を投げかけていた自分が恥ずかしくなった。


我に返り、部屋着に着替える。


ベッドに入る前にコロに目をやれば、コロはコロで、タオルなどで作ってあげた寝床で丸くなっていた。


海希「おやすみ」


可愛い猫に小さく呟き、瞼を閉じた。







また、あの夢の中。


夢の中でも、瞼が重くて仕方がない。

静かな時間が流れている。

風も、雲も、植物も。

とても静かだ。


その静かな時の中で、小さな声が聞こえた。

微かな声は、まるで私を呼ぶように、何度も聞こえてくる。


猫の声....?


確認しようとしても、瞼が上がらない。

猫の声と、またあの男性の姿。


一体、誰なんだろう...


私は、吸い込まれるように、さらに深い眠りに落ちていった。



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