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OTOGI WORLD   作者: SMB
* fall in otogi world *
19/92

泣き虫少女はマッチ売り


ピーター「あぁ...疲れた...」


レイルの改築したバスに戻ってきたピーターの姿は、クタクタに疲れているようだった。


ドサッと椅子に座ると同時に、深い溜息を吐く。

そんな彼に、私は飲み物を差し入れた。


海希「私のせいで、ごめんね」


怪我もなく、無事でいてくれた事が何よりだ。

相手の兵士達はどうなったのかは、あえて聞かないでおく。


ピーター「別にお礼なんていいよ。たまにはああやって遊んでないと、体が鈍るからね」


と、肩のあたりを回している。

空を飛ぶのは気持ち良さそうだが、飛ぶのは気力を使いそうだ。


海希「ねぇ、あれってどうやって飛んでいるの?タネはあるの?」


ずっと気になっていた事だ。


マジックにしては、ピアノ線で引っ張られた形跡もない。

透明な板の上を歩いていた訳でもないのに、なぜあんな事が出来たのか不思議だ。


ピーター「あれは俺の特権だよ。レイルに猫耳が生えてるのと同じだ」


あぁ、なるほど。

納得できないが、それで納得するしかないようだ。

何しろ、これは夢なのだから。


レイル「俺の猫耳と一緒にするな。って言うか、なんでこいつまで一緒にいるんだ?」


不機嫌そうに言ったレイルの視線の先にいたのは、女の子だった。


バスケットを抱え込み、ピーターの隣で小さくなって座っている。

その少女は、私も知る人物だ。


海希「マッチを売ってた人....?」


レイルに怯えながらも、その少女は私に明るく振る舞ってくれる。


少女「どうも、こんにちは。また会いましたね」


不機嫌なレイルを気にしつつ、私ににっこりと微笑む。

なんだか可哀想になってくる。


ピーター「え、なに?知り合いだったの?」


海希「知り合いって程でもないけど...マッチを売ってくれたの」


買ってはいないが。


海希「って言うか、2人も彼女と知り合いなのね。友達なの?」


レイル「友達かって訊かれたら、友達じゃないな」


バッサリと切り離す。

そんなレイルに、少女は体をビクつかせた。


少女「そんな...レイル、酷いわ」


しくしくと泣き出す少女。

私はレイルを睨み付けた。


海希「ちょっと、レイル!なんで泣かすのよ!」


女の子を泣かせるなんて最低だ。

私が怒鳴ると、レイルは慌てたように言った。


レイル「泣かせてなんかないって!勝手に泣いたんだ!それにお前も、こんな事くらいで泣くな!」


馬鹿なのか、こいつは。


私はレイルの耳を引っ張り、お仕置きした後、少女に優しく言った。


海希「泣かないで。こんな奴の友達なんか、ロクな目に遭わないから、逆にいい事よ」


泣いている人を励ますのは、最近の出来事であったような気がする。

なんだかデジャヴだ。


ピーター「そんなに冷たくするなよ、レイル。彼女が助けてくれたんだ、俺の事」


レイル「へぇ、それはそれは。血の雨が降ったんだろうな、きっと」


すると、少女は更に泣いた。

私はもう一度、レイルの猫耳を引っ掴んだ。


レイル「いててててててっ!!!.痛いって!痛い、痛いから!!!!」


海希「泣かすなって言ったでしょ」


出来るだけ、声のトーンを落とす。


海希「あんたって、本当に意地悪ね」


ピーター「ま、まぁ、あながち間違ってはないけどね...でも、本当に助かった事は確か」


と、少女に優しく声をかけるピーター。


なんて常識人なんだ。

レイルとは違い、やたらと相手を攻撃しようとしたりはしない。

緑まみれのファッションセンスが痛いだけ。

それ以外は、なかなかの好青年だ。


少女「あなたは、2人とお友達なの?」


目を潤ませ私を見る少女は、とても愛らしい。

私と違い、とても女子力がある。


レイル「はぁ?お前の目は節穴かよ。どこをどう見てもお似合いの2人じゃねぇか。アマキは俺のこ...」


海希「黙ってて」


同じ過ちが繰り返されるのを阻止し、私は少女に微笑んでみせた。


海希「そう、友達。だから、あなたとも友達になりたい」


こちらが心を開いてやると、少女は嬉しそうに笑ってくれた。

涙を拭い、彼女は表情を明るくさせながら私に言った。


少女「あたしはドロシー・ブレイズ。よろしくね」


照れているのか、頬を赤らめさせている。


海希「私は海希よ。こちらこそ、よろしくね」


この夢を見始めて、どんどん友達が増えていく。

この歳で、メルヘンな夢を見るのは馬鹿みたいな話だが、少しずつ楽しくなってきていた。


こんな夢なら、ずっと見ていられる。

大好きだった、おとぎ話の国の世界の中でなら....



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