グラマンF4Fの襲来
ブレーキ部分を減速、スロットルと訂正いたしました。
『敵機3機、編隊下部、1時方向より接近』
たった3機?
こちらの小隊で何とかなると独断判断した私はすぐに前に出て、中隊長に手信号を送る。
「我々3機でやります」と。
編隊機はそのままラバウルの方向へと前進し、我々達は彼らを背に、2機の機体を連れて戦闘状態に入った。
敵機3機。
同じ高度で互いにすれ違うと、私は左旋回で相手の真後ろにつこうとすると、敵機は右旋回で胴体を晒す。
「なんだあれ・・」
太い胴体に、正方形の主翼に青黒い円中の白い星。
ずんぐりとした珍しい飛行機。
まだ1942年入ったばかり。
敵の珍機をお目にかかった事に戦意がますます向上し、2機、3機と相手になってやるという意気込みが沸きあがる。
しかしそのうちの1機だけから嫌な殺気が感じ取れる。
油断は決してならない。
私は左旋回に持ち込んだとき、3機編隊から1機抜けた敵機は旋回せずにそのまま一気に急降下。
それを追撃すると同時に操縦桿を押し倒したが、今までに無い殺気を後部から感じた。
アイスキャンディーの赤く長い弾丸がニューギニアのジャングルに吸い込まれていき、操縦桿を素早く左に切り替えし、敵の視界から外れようとした。
しかし、私を撃ったこの敵機は中々振りきれない。
ならば奥の手を・・!
スロットルを絞る。
周囲が暗くなのに耐えてながら、得意の左旋回を行うと敵機はそれに乗ってきた。
右翼は空に向かい、左翼は地へ。
首を千切れるほどに向きあげて敵を逃さず捕捉。ちょうど視界上に機影が見える。
旋回戦に負ける!
1旋回、2旋回・・そして5旋回・・!
ダメだ・・!後ろを取られる・・!
相手は相当軽快な動きをする敵機に違いない。
性能もよく、腕も彼らは高いのである。
もしやフィリピン、あるいは真珠湾。あれらはまぐれで落としたかもしれない。
だが、積極的にやってくる敵はぜひ1対1で戦いたい。
そんな気持ちが溢れると笑みがこぼれ、その顔を相手に向ける。
敵の顔は見えないが私と2つ、3つ、歳が上の女性が乗っていた。私と同じ、銀の髪を飛行帽からはみ出したままに。
真珠湾で見たような・・。
フラップレバーを落としつつ、左に機体を回し、スロットルレバーを引っ張った。
視界が横転する。
機体はしっかり言う事をきいた。
敵は急な減速を前に、私を追い抜いてしまったのだ。
スロットルをオープンし、立ち直り寸前の零戦から7.7mm発射機を持ちつつ、敵の距離を確認。
70mほどの距離から機銃をぶち込む。
炸裂する機銃にカンで捉える手応えは少しばかり感じた。
敵はこれの一撃に危機を感じたのか身体に負担がかかるGを目の前に90度近い角度で一気に急降下した!
追うにも追いつけず仕方ないので私は空戦止めの合図を出し、小隊を集合させた。
1番機に弾痕が胴体に1個、2番機は無傷。
離れ行く敵を目にいれ、彼ら達を見送る。
しかし今後の戦いに零戦が苦しまれるのは私は何となく予想していた。