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征空の海鷲  作者: j
サイドストーリー
52/52

スタンレー山脈を越えて

お久しぶりです。何ヶ月も間をあけてしまいまして申し訳ありません。

忘れてなんかなく常に何のお話にしようか考えています。しばらく忙しかったりしたのでちょっとずつ書きながら続編を上げていきますよ

ラバウル海軍航空隊 東飛行場・・・

 現地時間午前0時。

 周辺が薄暗い飛行場。戦闘機が並べられる黒い機影をみながら、指揮所へ走る。

 しばらくの間栄養がとれていないのか目が回るし、身体がふらつく。正直飛行したくない気分だけど・・。

 指揮所前に搭乗員らが集まって指揮官と飛行団長が前に出てきた。

 

 ああ、昨日のことだろうなぁ・・・。

 42年までスタンレー山脈を越えて敵飛行場を叩いていた。しかし43年から地獄の長距離飛行が始まりガダルカナルの支援をして防空に勤めてたり、こっちが先手を出ることなんてあまりなかった。

 しかしなんで突然ポートモレスビーを攻撃するのかやや疑問に思ったけど・・・、

「ふあぁ..眠いや」

睡眠不足もあって胸から空気が流れて自然と口から眠気とあくびを出してしまう。

「本日、陸軍共同でポートモレスビーの攻撃を行う。昨日話したように突入時間は0400・・・、低空による機銃掃射および爆撃でありとあらゆるものを撃破せよ。攻撃を終えた後速やかに撤収。もし敵機と遭遇したら爆撃機の護衛に回ること」

 

 つまり奇襲攻撃。

 あれ、でもこれまでに奇襲って成功したかな?

「出撃準備」の声に搭乗員らは一斉に増槽を詰んだ愛機へ駆け込んでいく。寝不足の私は歩きながら飛行帽を片手に指揮所近くの零戦二一型260-8号機に近づいた。

 機内灯で照らされる座席に座り込んでエルロン、エレベーター、ラダーの点検をする。

 踏み込んだラダーペダルが微かに動いているような感覚が足の裏から伝わり、戻すときの重さもなんとなく感じ取れた。

「おーい美貴」

「ユウコ、どうしたの」

 風防越しからこちらにくるのはユウコだ。珍しく髪を後に束ねて、その尻尾を揺らしていた。

「陸軍の炊事班からの差し入れだ」

 丁寧に竹皮の包みに入れられた食べ物で手で受けとると手袋越しから温かい熱が感じ取れて、どうやら炊きたてのご飯で握ったものだと思われた。

「わあ・・。ありがとう伝えといてください」

「ああ、それじゃ空でまた会おう。今日は私が1番機をやるからしっかりついて来いよ?」

 ユウコが一番機だから少し緊張がほぐれる・・・。滅多に無い陸海共同のいい所は技能のある搭乗員が一番機を勤めてくれるので、経験豊富のユウコは必ずと言っていいほど小隊長を務めてくれる。私はまだ自身がないので2番機で安心感を得れるけど、これは今日で最初の最後かもしれない。

 気を引き締めなきゃ・・・。


 さあ発進だ!

 静けさと一変として発動機が轟々と唸って、真夜中のきらめく星月たちが真っ黒の飛行場を微かに照らしてくれていた。飛行場にあるドラム缶や指揮所、あらゆる物体が青黒くはっきり見えていた。

 海軍の第一小隊が粉じんを巻き上げて飛行場をけって翼を連ねて闇の空へ羽ばたいていくと、親鳥を追うように小隊機も続いて離陸していく。

 今回一式戦闘機のユウコ機がキャノピーを開けたまま、私のほうにむけて右手を頭の上で回しながら地上を走りはじめて、私もスロットルを開ける。

 零戦は滑走路の上を疾走して帽触れの声を背中にうけながら、一式戦闘機からふき出す青い炎を頼りにとびだった。



 離陸してから何時間は過しただろうか。時計もあまり見なかったので何時間経過したかわからない。

 黒い機影が綺麗な編隊をくむなかで目の前に迫るのはスタンレー山脈だ。何十機の爆撃機、戦闘機らが悠々と乗り越えてついに敵陣に突撃しようとするとき、背中から暖かい光がさしこんで暗かった計器を明るく照らした。

 いよいよ迫る敵のモレスビー飛行場が雲の間から見え始め、中隊長機が左右に翼をふるとついていく戦闘機たちは高度を落として突撃耐性に入ろうとした。

 ところがユウコ機は降下しない、右上方から光の針が私の目に刺さると機銃の緑の曳光弾は空中を描いて、4つの黒い粒へ消えていく。

「敵機!」

 私は叫んだ。

 中隊長も気づいたのか高度を上げて、敵戦闘機に方向針路を変え始め続くように零戦たちが増槽を落として、垂れ流して落ちる増槽燃料からは虹を作らせた。

 一式陸攻は編隊を崩さず飛行場へ進んでいくと、胴体真下から黒い爆弾が次々に落下していくのを最後に眺めて私は高度を上昇させて、突進する機体からの銃撃を避けながら反転、敵機を追撃しようとした。

 爆弾が炸裂した。飛行場から火柱何本もが立ち上がると緑のジャングルが赤い海に成り果てて、黒雲を巻き上げながら滑走路を包んでいき、僅かながら地上から対空砲の火が見えた。

 

 敵機は4機だ!追う暇も無くすぐさま陸軍機の餌食になる。上空に存在する敵は確認できないのでユウコは翼を振り親指を下に差して、腕を上下に振ると機を落として濛々とする敵飛行場へと突っ込もうとした。

 高度が1000、500...300...高度計が止まることなく回転し、火の海になる飛行場で今飛び経つ敵の戦闘機を捉えて、7.7mmと20mmのを後上方から浴びせかけた。

赤い火だるまに変化した敵戦闘機、滑走路に突っ込んで出撃準備中の機体そ巻き込んでさらに燃え上がるのをわずか数秒横目に、私はユウコ機に続いて離脱を開始した。


襲撃は成功に終わって機体の損失も僅かであった。皮肉にもその損失機は私の真横を飛んで、見守るように戦闘機たちが囲い込んだ。

傷を負った若鷲、風貌越しから見える男の顔がちょうど私と目が合い、震えているような手で敬礼をし始めた。

「ああだめだ...!自爆なんて!」


私は雲の切れ目に見えるスタンレー山脈に指を指してて山より高いと言う仕草をした。

今にも止まりそうなプロペラは機体をなんとか浮かせるように頑張っていた。

見かねたユウコは私の真横に割り込んで、故障機の先頭に立つ。

迫るスタンレー山脈。


一式陸攻が悠々と超えていく。こっちはスロットルを絞ってるから出力があまり出ない、わずかな護衛がどんどん前に出ていき小さく縮んでいくようにも見えた。

「がんばれ..あともう少し..!」

山脈の頂上すれすれに高度は落ちてたけどここを越えれば後は下って何とか帰れると私は思った。


「あっ!」

彼の機は何かに引っ掛かり捥げた翼から銀破片が飛び散った後は炎とともに炸裂。

形半分がなくなり、あまりの死に様に目が潤。

また一人死んだ...。

そして何より酷かったのは、ユウコがそれを見たあと済んだような顔をしていた。

顔一つ変えずに、何もなかったかのような様子で持ち場に戻り、頂上で旋回する仲間の機を背中に私は戦友をまた失った涙が出ると思っていた。

一滴も出ない...胸と喉の奥は潰されるように痛いに...。

ああ、これは戦争なんだ....。

本当は異常なのに普通のような気もした。

明日はどこへ飛んで戦うかそれしか考えられなくなっている....。

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