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征空の海鷲  作者: j
サイドストーリー
46/52

九州本土防空戦

 2月・・。

 墓から引き返して二六○海軍航空隊基地に戻ると、正門の関係者から電報を渡されたので、早速基地からダグラスC-47輸送機で福陸軍航空隊基地へと発進した。

 普段私物は原隊に預けてるかしてるけど、従兵が付き添いでいるのでそれに持たしている。

 電報内容は?

"二六○海軍空、赤城美貴中尉、従兵、鳥居忠ハ福岡陸軍航空隊基地ヘ向ウヨウニ・・。手配シタ、ダグラス輸送機ニ乗ルコト。忍ユウコ陸軍大尉ヨリ"

 福岡に来いって事は相当人員が不足してたりしてるのかなあ・・。

 新型機が襲来してくるご時勢だし・・。

 

 2時間ほどの飛行で福岡陸軍航空隊基地に着陸し、飛行場に足を踏み入れると緑の黒髪を揺らし、バイクで走ってくる女性に私は嬉しくなった。

「あ、ユウコ!」

 愛用のBMWR-75バイクはサイドカーがついていて、私の手前で停車しユウコはゴーグルを外しながら「よっ」と軽い挨拶。

「まあ乗って乗って」

 後部座席に私が、サイドカーにトランクを持った従兵でバイクはエンジンを吹かして発進される。

 ユウコも私達が来る事を楽しみに待っていたようで、ラバウルから引き上げた東條奈緒子さんも居ると聞いて、ラバウル以来の関係がまた持たれて嬉しかったけど、未だに鼎が内地に来ないことに私は心配していた。

 鼎は元気かなぁ・・。

 心を隅に自分に言う。


 兵舎の前まで停車すると銃を持った兵士達の目がささり、正直この場にいて大丈夫なのかと少し緊張する・・。

 しばらく陸軍基地にお世話になることで、私は陸軍航空服を持ち誰もいない兵舎内で着替えをすると・・、

「あ、着替えるから・・」

 従兵はいなかった。寒い外、窓を背に飛行場のほうへ向いていた。

 どうせ飛ばなく飛んでもても寒いから、重ねて着ちゃおう。

 1941年の真珠湾攻撃が頭の中でよぎる。

 そう言えば12月の冷えた甲板で整列して零戦に乗ったっけ・・。

 海軍の飛行服と陸軍のもあんまり変わらないなあ。

 せっせとバンドを着用、円状の金具がカチカチと音を鳴らして装着は完了した。

 皮の飛行ブーツと手袋の毛がとても柔らかい。

 あ、従兵がこっち見た。

 顔を横に、わずかながら目でこちらを見た途端、顔を赤くしてまた飛行場に。

 賑やかな様子でユウコが湯飲みを持ったお盆と、奈緒子さんがお菓子を入れた容器を手前のテーブルに置くと、扉から男2人組みが後から入室。

 楽しそうに会話してるの初めて見るなあ・・。

 なんだか盛り上がってるそうで、そこらへんの椅子に座りながら男はタバコを一本手にし、従兵は「吸えません」と手を横に拒否。


 まあいっか・・。

 私含めて3人がテーブルを囲うようにお茶を飲み始める。

 緑茶飲むの何年ぶりだろう、苦味がおいしいよ。

「私も従兵、欲しいなあ。」

 奈緒子さんここでぼやく。

「そうだな。少佐階級ならそろそろ手伝い人とか居てもいい頃なんだけど。」

 ユウコは羊羹を食べながら言う。

「少佐なら書類仕事多くないですか?」

 私は奈緒子さんに言うと「意外と書類より戦闘指揮とか主にやるのよ」笑いながら返答。

「ユウコから送った電報なんだけど」

 私はユウコにその事を尋ねると、

「あーそれは人員不足を補う形でね。まあ正直それもあるけど、唯一は新型機と相手になってみないかって」

 ははん・・なるほど・・。

 あっ・・空襲警報?

 市街地からだろうか、遠く聞こえるサイレンに続いて基地からも突然と鳴り響き、私は無意識に飛行場へ一目散に走りかける。

「空襲警報発令!空襲警報発令!」

「回せ、回せー!」

 陸軍の兵士が拳銃を空に撃てば、待機していた航空兵達は戦闘機、複座戦闘機に乗り始め整備士たちはエンジンを回す。

 あれ、私何に乗ればいいの!?

 誰も乗ってない三式戦闘機ある!あれ乗っちゃえ!

 とっさに乗り込み、駆けつけた整備士により短時間でベルトが着用、同時にエンジンは砂利を舞いあがらせ回転した!

 エルロン、エレベーター、フラップ異常なし。

 以前にも三式戦に乗ったから大丈夫だろう・・。

 と思ったけど、

「この!回れ!」

 プロペラの回り具合が早速悪くなり、エンジンは激しい振動をした後、灰色の煙を吐いて停止した。


 やっぱポンコツのレッテル貼られてるだけあって、私はあまった戦闘機を探すと四式戦闘機が目に入ったので早速、乗りエンジンコックを捻った。

 すると三式とは違い快調にエンジンが始動した!

 よし、いい子だ!

 出撃できる戦闘機は次々と離陸、ユウコや奈緒子さんの機はすでに上空を飛行しており、残る機は私だけ、さっさと行くぞ!

 スロットルを少しづつ開き、砂地の飛行場を疾走する四式はあっという間に離陸速度をだし、私は機銃発射機が備えられた操縦桿を引っ張る。

 ハイスピードな機体に私は思わずにっこり。

 2度目の陸軍機でどのような戦果が出せるか・・!


 高度5700m、上昇まで時間はかからず、ちょうど海軍航空隊の飛行機と合流し、敵が侵入する進路上空まで待ち伏せする形で上空待機した。

 しかし、

『あーあー。美貴ちゃん、私たち陸軍は敵機を直接肉薄で叩く形だから・・』

 と奈緒子さんからの無線で私は方向進路を変えて、奈緒子機が待機している西海方面へ機体を向けた。

 海軍機は限界高度なのか、私たちについていける戦闘機がごく僅か、海軍の局地戦闘機だけがグイグイと陸軍機に追いつこうとする。

 高度7000m。

 酸素マスクを着用、奈緒子さん操る三式戦闘機の翼下に、銀翼輝かせた大型爆撃機が10機以上はいるだろうか。

 編隊を組んで福岡上空に侵入しようとしていた!

『よーし国民党軍基地から離陸した同じ爆撃機だ。いいか、南で見た物とはまったく別の新しい機だぞ、油断するな』

 第八四飛行飛行戦隊長のユウコは中隊長の立場となって、福岡陸軍航空隊機を動かし、第五独立飛行戦隊の奈緒子機周辺に、6機の戦闘機が集合する。

 

 私は別隊に入ることも、入れられる雰囲気でもなかったのでとりあえず遊撃しようと考えた。

「あれ、ぜんぜん上がらない・・」

 四式戦闘機は思った以上に上がらない。どういうわけか、ふらふらと機体があっちこっちと流されて、安定するのに精一杯。

 おまけに酸素も無いのでボーっと頭の中が飛びそうなほど、判断力等の脳指令が衰え、鈍っている。

 ふむ、どうやって狙おう。

 ラバウル時代にB-17との交戦経験があったので同じ形で、機体を一旦降下、および急旋回、敵爆撃機の真後ろつく。

 敵の飛行高度は6400m。

 黄色の光学照準機がジュラルミンの大型爆撃機がはみ出るぐらいに納まり、つかめそうなくらいに近づいた。

『あ、待て近づくな!』

 ユウコの無線に思わず「え?」となった私は正確的に撃たれる真赤な機銃弾が真横を通り、機体はぶつかった衝撃で敵との照準がズレた。

 ハリネズミじゃないか!こいつ!

 先ほどの距離は200mぐらいと感じ、戦闘機を降下させ再び上昇。敵のサイズは一回り縮んだものの、すさまじい弾幕は変わらず私達に集中する。

 本土には入れさせない!

 操縦桿の機銃発射機を倒した。

 今まで以上に凄まじい反動が機内を揺らし照準をまたずらしてしまう。

 20mmより強烈だ。

 

 悠々と飛ぶ大型爆撃機に私の乗る四式戦は追いつけず、少数の三式戦や複座機だけが取り残されてしまい、海軍が待ち伏せした進路に侵入した敵機達に粒がそれに降り注ぐ。

 なんだよもう、期待外れじゃないか。

 とても悔しく腹が立つ。

 陸軍機たちは追撃をあきらめて離脱を開始。私だけが取り残され、帰ろうと考えた。

 と、後方に気配がしたのですぐさま振りむいたとき、また新型機が私の頭上を通るというのに気づかない。

 よし、いまだ!

 太陽は遮られ、陰の中に入った自機は鯨のお腹下に、小魚がくっ付いているような感じになり、非常に狙える絶好の位置だ。

 ドーム状の機銃塔のガラス旋ら見える、白人の男は暢気にパンを加えたまま私と目が合いびっくり。

 すでに照準機内に入ったままなので、すかさず機銃をぶっ放した!

 野太いオレンジの曳光弾が砲塔に飲まれると、ジュラルミンを貫き、炸裂弾が発火すると胴体からパッと火炎が発生したが、燃料引火までとはいかなかった。

 随分と威力がある。

 機首は20mm機関砲、主翼は30mmだろうか。

 敵は焦ったのか速度を増す。

 離れる前に撃墜しようと、とにかく機関砲を乱射しまくると今度は大型爆撃機の右翼を撃ち折った。敵機は錐揉みのまま九州沖に吸い込まれ、気圧で機体はバラバラに崩れていく。

 ジュラルミンの装甲はがあちらこちらに散らばり、その姿は宝石の粒にも見える。

 よし1機落とした。

 満足しながら帰路に着くと、翼下から機銃の音と共に敵戦闘機が舞い上がってきた!

 新手だ!

 白銀の戦闘機は光の針を伸ばし、その姿は今まで異常に手ごわいと感じる。

 降下する!

 操縦桿を右に、ラダーペダルを踏み込んだ。

 水平器と機体は右に反れながらも敵の機銃を浴びたのか、機体は何度揺れたあと、敵の轟音を耳に姿を消した。

 だめだ!こうなったら逃げてやる!

 新型敵機を背に、私は機体を一気に下げ、急降下に持ち込み、その速度で基地まで到達させるのが還るまでの仕事だ。

 敵の機銃は正確だ。きっと照準内に収まれて、私は踊らされている。

『美貴!』

 ユウコ!

 その声に私はあらゆる方向に、視界を動かす。太陽の黒粒が大きくなり、敵の新型機に機銃の雨を降らし、敵機は瞬く間に風穴だらけとなり撃墜されていく。

 ほっと安心しながら私はユウコの誘導で基地に還る。

 しかし福岡市街地は黒煙に包まれ、高射砲の炸裂雲がいまだに空に残っていた。




 

 

 

 

 

 



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