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征空の海鷲  作者: j
1944 出動せよ、瑞鶴戦闘機隊
31/52

愛機は私を求めている

ラバウル東飛行場では毎日のように戦闘機らが火山背にして哨戒をしに飛んでいた。

飛燕を乗せてもらったお礼に愛機を乗せて感想いい気か出てみようという私の勝手で、陸軍関係者数人と奈緒子さんをこの東飛行場に招いた。

「海軍はいいなぁ..」

自慢したいけど奈緒子さんの顔は冗談には見えない。真剣な眼差しで主翼から伸びた20mm機関砲の銃身を観察する。

「どれ、海軍の軽戦闘機の機動を実感してみようじゃないか」

バンドを着用して操縦席に座り整備士がエナーシャを回し始め、プロペラも同様に回転する。


あれ、なんか音に違和感があるような...。

なんとなく見守る。

離陸を始めて滑走する奈緒子さんが搭乗する零戦のエンジンが、粉塵に交じって息を吐いた!

そのまま飛行して上空を低空一周する。

たったそれだけで終わって着陸態勢に入り、飛行場に滑り込んみ機体は停止。チョークを引きずりながら整備士たちが機体に走る。

近寄ってみると奈緒子さんは「この零戦不調だよー」と残念そうな顔でエンジンに指差した。

「おかしいですね...?昨日はしっかり動いてたのに。もう一度エンジンコックを引いてください」

 私は突然の不調に心配になった。

 翼に乗り、操縦席をじっと見つめながら奈緒子さんの動作を見守った。

 エンジンはちっとも始動しない。見かねたユウコが「私がやる」といって奈緒子さんをどかして4回ほどコックを引っ張った時、頭を急に抱えて座席から飛び逃げて地面に転がり落ちた。

「・・・ごめん、誰か手を貸して」

 

 海軍の整備しらが駆け寄って彼女の肩をかして指揮所のほうへ歩いていく。

 あれ、ユウコ体壊してたのかな・・・。

 私は開いた席に座ってエンジンコックを伸ばすとブルンとエンジン音を鳴らした。特に問題なく、普段どおりの振動と回転速度。 

 不審は見受けられないので回転させたまま次に乗りたい人に交代させる。

「美貴中尉、私が行ってもよろしいでしょうか!?」

 元気な声で私に言ったのは鼎だ。

 五二型とはまた違う重量で操るのも、彼女にとって一つの学びになるかもしれない。

「ああ、乗っていいよ」

 

 翼から飛び降りて砂が舞う滑走路から離れる。チョークを外した整備員らも指揮所の方向へ駆け足でいく。零戦は風にのってゆっくり上昇するのを私は指揮所の下で眺めていた。

 椅子を2つ使って横になっていたユウコは至って元気そう・・・。

 ハエのように動き回る零戦の機影を双眼鏡で見ている。

 不調はまぐれだったのだろうか?

 そんなことを思って機影を追っていると旋回しているゼロ戦が突然、錐揉みになりながら落下していく。

「あ!ダメだ!」

 

 高度は低い、地上にぶつかる!!

 次第に大きくなっていく私の愛機。鼎と共に地面に叩きつけられて無残な光景を想像するだけでも胸が痛くなる・・・!

 何とか立ち直してくれ!

「落ちるぞ!退避、退避ー!」

 誰かの掛け声に整備中の戦闘機が飛行場から人力で離される。

 だが機体は垂直だ。立て直したんだ!

 

 機首を地上に向けながら徐々に機体を持ち上げて着陸態勢へ入る零戦。フラップを降ろして機体は静止し私は鼎の乗る愛機へと一目散に走って「大丈夫!?」と声をかけた。

「と、突然操縦がきかなくなって・・・!」

 震えた様子で鼎は顔を青くして私に言う。

 なにこの戦闘機・・・!?

 試運転は中止と指揮官の命令で今日は終了し、敵は来ないまま夜を迎えた。

 屋根の下で睡眠が取れるのは嬉しいことだ。

 

 宿舎の窓から日が注がれると目覚まし代わりに空襲警報のサイレンが鳴り響いて、搭乗員らは一斉に飛び上がり飛行場へと駆け出して、搭乗員はそれぞれ乗れる戦闘機に乗り込んでいく。

  愛機に乗り込もうとすりと私の"260"所属機に誰かが座っている!

「どいて!これはお前には操れない!!」

青年搭乗員は粘る。敵は待ってくれない!

「い、嫌です!僕は上がります!」

クソ、頑固な奴め!

私はこれ以上愛機を不調に追い込んで故障や事故何てことは嫌だった。愛機は私を求めて私は愛機を求めているんだから...!

「退かないのなら...!」

私はグーで彼の顔面を殴りって後頭部をつかむ。照準器のパッドに投げ当てると彼は気を失う。

 悪いことに光学照準機のガラス板にひびが入ってしまった。

 むっ重たいっ・・! 

 出そうにも体重が!

「中尉!急いでください!」

 と手伝いに駆け付けた整備士が青年搭乗員を引きずりだして私はようやく愛機の席に座れた。占拠された挙句に私が一番後から発進する羽目になって少し腹が立ったけどそこは抑えて、とにかく敵の迎撃に集中しなければいけない。

「退避、退避ーっ!」

 

 防空壕に逃げる人々を背にして零戦を発進させて基地から飛び立つ。上空で荒城先輩の二一型と鼎の五二型が待機していたのをみて私は嬉しくなる。

 合流して高度を上げた。輝かしい太陽を浴びながらポツポツと見える黒ゴマを視認。

今日はアメリカ海軍機だ。

TBFとSB2Cが見えるだけで23機以上いるのに対しての護衛のグラマンやコルセアは40機以上だ。

 相変わらずアメリカは数で押してくる・・・。こっちは10機足らずなのに。


すでに空戦は始まり空に曳光弾が何発も描いて流れる。

高度2000m上空、5機小隊の敵艦載攻撃機とすれ違い、背後から真っ赤な光線がスッと通り過ぎていく。

ギョッとなりながらも機体を旋回させる。機首を落として、弾幕を張るTBFの真下から私は狙える獲物の照準を合わせて機銃を乱射した。

 狙った一機の垂直尾翼が吹き飛んで不規則な動きをしつつ敵機は落下する。続け様に上空から敵の頭を抑えて再び一撃を与える。

今日は調子がいい。今日も撃墜数が稼げるかもしれない。

残り三機は荒城機と鼎機共同で撃ち落とされる。

飛行場から煙の柱が立ち上がるのをみて無事なのか少ししてしまう...。

今は迎撃に専念だ。

零戦と敵機が入り混じる乱戦渦の空戦域に突入した。固定照準機で自ら私の機銃射線にはいるF4Uを補足して13mm機銃と20mm機関砲を同時に射撃する。流れる曳光弾を急旋回で回避した敵機は腹を見せ、私と相手の距離はより縮まり、50m未満とまでに近づいた。

 こうなれば照準機に合わせずとも撃てる。

 スロットルレバーの13mm機銃発射機を左指で倒した。

 ドドド・・・。

 小刻みに振動する13mm機銃の反動を感じ、パッと敵機に炸裂する瞬間を目にしたとき、突然ぐるぐると回転し始めて海にむかって堕ちていき小さくなる。

 2機撃墜・・・!

 見届ける時間はほんのわずか。

 機体を転進させて高度を上昇させると無線から「鼎を頼む」と荒城機が近づいて、空戦の渦に指をさす。

「友軍を助ける」

 濃緑の零戦二一型は私達を残して渦の中へと向かっていく・・・。

 

 第二波もあると思い高度4030m、ラバウルの南を飛行したところ早速次の攻撃隊らしきものを同高度視認。陸軍機の三式戦闘機と四式戦闘機の数機と合流しすると、護衛のグラマンが何機か真上から現れて、銃撃の雨を降らしてくる。

 左ラダーペダルを強く踏みんで操縦桿を倒してすぐさま回避。後方からもう1機がつくのをみて、横転させながら銃弾を避けていく。2番機の鼎がけん制の一撃をを浴びさせるとグラマンが驚いたのか下方に逃げる。

 

 艦載攻撃機を落したいけど・・・!

 邪魔が1機入ってしまった。スペードのマークを機首にマーキンググラマンが真横を横切り、私の後方へと回りこんだのだ。

 あれは地獄猫じゃない・・。あの冷たい殺気が全く伝わらない。

 よし相手になってやる。

 久しぶりの格闘戦だ。腕がなるぞ。

 強く握る操縦桿を操りスロットルを微調整しながら旋回戦に持ち込むとあっけなく私がグラマンの背中に張り付いたが、その敵との差が開いてしまう。

 直線的、やや高度を落して逃げているのは分かっていた。こうなると私は手も足も出ずに高度を上げて敵の頭を抑えて好機を待つ。

 

やり難いなぁ・・・。

ずんぐり機体のF6Fと逆ガル翼のF4Uはスピードがあり零戦ではなかなか追いつけないのが難点。特に私が相手にしているF6Fは防弾と速度に運動もよくてあまり好きじゃない機体だ。

 F4Uも頑丈だ、でも容易く落せるのはどうしてだろう・・・。

「むっ」

 相手の動きが変化した。 

 先ほどの降下速度を利用してこちらに向けて上昇してきた!

「危ない!」

 すぐさま機体を横へ流して回避するとゴゴゴ・・・と言う不気味な機銃の音と一緒に私の頭上へと一気に上がったF6F。

 格闘戦をする様子はない。相手は馬鹿じゃない、機体にあった戦い方をしているだけで格闘戦を好んでやる私がおかしいんだ。

 次は上からくる・・・!

 緩やかに背面になるとF6Fの風防が太陽に反射すると光の針をが目に刺さった。

 速度が248km/hと機体を持ち上げようにも失速してしまうし、そのまま一気に下ったところで機体が分解する恐れがある。 

 迷っている暇はない、このまま上昇してしまえ・・・!

 

 相手のが急降下する寸前を見計らい操縦桿を強く引っ張った。ラダーペダルを踏んで左に横回転するよう機体を操ると野太い13mm弾の曳光弾が視界端に降り注ぎ、敵はまた海上に突っ込むように急降下した。

 我慢できない私はスロットルレバーを壊れんばかりに押しこんでオーバーブーストを始動させて、機首を落して敵をを追撃した。

 ダメだ、追いつかない。

 急降下角度を落しても敵と私との距離はぐんぐん離れて、速度はすでに560km/mを超えていた。オーバーブーストしたところで分解するしやったってしょうがない。

 スロットルを絞り、追撃を諦めて機体を緩やかに持ち上げた時、F6Fも同じタイミングで上昇し始めたのを私は見逃さなかった。

 追いつけるか!?

 私が先に上昇し、また高度をとっていて相手はその下に居る。上手くいけば縮められるかも。

 相手は先ほど得た急降下速度で上昇している。

 しかし追うにも私の速度が足りておらずまた離されてしまい、次第にイラつきと胸の置くから来る腹立たしさがやってくる。


「こうなったらぶつけてでも落してやる」

 ここまでしつこく追う理由はこの敵機がいずれ私の列機を殺しに来るというのが嫌でしょうがないからだ。

 そんな独り言を胸の中で呟いたところ固定照準機にF6Fが次第に近づいてきた。上昇角度は70度ちょっとで重たいグラマンにはややきつかったのかもしれない。

 撃てるのは今しかない。ここで逃したらもうチャンスは無い。

 13mm機銃と20mmm機関砲の火が噴かれて生き物のように伸びていく曳光弾が空中に線を描いて、グラマンから逸れてしまい、思わず舌打ちをしながらボタン押しっぱで乱射した。

 

 しかし命中弾がなく真っ白い硝煙を空に残して私はひとまず逃げることを考えて、一気に急降下する。立場が逆転したので今度は私が撃たれる身となった。

 だが鼎の援護もあってかグラマンは急旋回、私に背をむけて洋上へと一目散に逃げていくのを私は見届けた後、鼎機が近づいて「やりました」と腕を上げる。

 私は「すまない」と手をお辞儀するような仕草を片手で送った後ひとまず哨戒へと入る。

 飛行場は1箇所に穴が開いていて、対空陣地や掩蔽壕にもいくつか爆弾の後が残されていて、朦朦と黒煙が立ち込める。何機かの飛行機がやられてしまったらしい。

 "着陸よし"の赤旗が立ったのでスロットルを絞り高度を落としながら滑走路へ進入する。着陸フラップを展開しながら零戦はラバウルの地にふれると機内は激しく揺れた。

 

 機が静止するとすぐに指揮所に向かい報告をする。出動した次々と機体と基地へと還って来た。

「小隊長、大丈夫でしたか?」

 鼎は心配そうに私に言う。

「うん。大丈夫」

 

 搭乗員も集まったところで荒城先輩が「全機帰着しました」の一言。

「うむ、ご苦労さま」

 と飛行隊長の一言はこれだけであっさり終わる。

 各自解散したところで指揮所内の椅子に座って休憩すると荒城先輩が「美貴ちゃん死にそうになったね」と私と対面するように椅子に腰をかけていう。

 鼎が三本のサイダー瓶を両手にテーブルに置いたあと、私の隣に座ってサイダーを口にした。

「いやあ今日は参りましたね・・・。鼎のおかげですよ」

「は、はい!小隊長の背中を守るのが私の役目ですから!」 

 鼎がいなければ集中的に攻撃できずにやられてたかもしれないしね。


「グラマンは大変ですよ。あれは単機で追う物じゃないですね」

「今頃になってそんなことを・・。まあ次、私の機に入るなら教えてあげる」

「そのときはお願いしますね」

 今日は落とせず逃げたので後味が悪く感じた、そんな一日だった。

 でも愛機を傷つけるより逃げたほうがよかったのかもしれない。まだまだ選択の由と判断が未熟だと改めて分かったそんな日である。


 

  

 

 

 

 

  

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