表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
征空の海鷲  作者: j
1940 来来遠い大地へ
3/52

真珠湾に向けて

美貴の大空を元に改良したものです。


太平洋戦争を舞台にしたもので、戦局などが史実とまったく別物のフィクション作品です

――1941年

 空の中、大きな機影が無数に埋め尽くす中で私は飛んでいた。

 遥かな無限の赤き空、夜明けの時間帯にも関わらず編隊組んでいた戦闘機、艦上爆撃機は一つの群となりエンジンはいっそう大きく鳴っていた。

 黒い太平洋の水平線から顔を出す太陽はまるで旭日旗のようで、今日の戦への士気を高めようとしている感じがした。


 両国戦線布告ありながらと言う割りに、そんな目立った動きは対してなかったので多分今回が花火並み派手な行動をしていると思う。

 

 1939年のポーランドに侵攻したドイツとソ連、おもしろい出来事。そこから第二次世界大戦は勃発、イギリスは勿論、フランスやさまざまな国が宣戦布告を開始、その1年後フランスは"マジノ線"と言う枢軸国に対しての頑強な国境防衛陣地を作ったにも関わらずあっけなく無意味に、ドイツはベルギーを占領。その次に不意を突いて、パリ占領する。と言うまるでおかしな事に、私は新聞を見ながら吹き出しそうになったことがある。


 考えているうちに風防越しに綺麗な湾に白金の物体。あれが敵艦だろうか。

 ダイヤモンドの輝きと見れぬ異国の地とその建物。

 日本には無い物が多く、ついつい見とれてしまう。

 いかんいかん・・。

 戦闘機隊の任務は飛行場の機銃掃射とその破壊。

 しっかりしろ・・美貴!


 別部隊はオアフ島の山脈を超え、編隊機は徐々に湾に接近する。

 今飛んでいればパイナップル畑。あと数分ぐらいで真珠湾内に侵入する頃だ。

 彼らものんきなもの。

 光学照準器を目の前に、湾に浮ぶ小さな飛行場。あれが目標だろう。


 と、そこで突然、艦から大きな水柱が立った。

 攻撃開始だろうと私は周りを見る。

 雷撃機は低高度で侵入を開始していて、我々の零戦小隊長機は私の視界に入り、銀翼を揺らしてバンクする。

 青い景色を探すと確かに左上方に敵機が2機、高度差500と言う近距離で発見した。

 さすがに近く、もし見つかればやられていた。

 現時点で高度は2000m。


 こちらを見る小隊長に手話をするように、空に向けて手を動かした。

 小さく頷き、「やってこい」と命令を下り

操縦桿を強く引き、左ラダーペダルを蹴る。

 滑る様に機体は斜め上昇し、視界は青の中に敵機2機を捉えて下腹へとぐいぐい接近。

 光学照準器は機体の中心部に定められ、左手で添えていた20mm発射装置を指で倒した。


 強烈な反動と砲声に、数発の赤い紐は敵機に吸い込まれる。

 ライターの様に火を噴出すと、もう1機は突然の奇襲で迷ったのかその場で旋回し逃げようとする。

 逃がさないぞ・・・!

 敵をとことん追い詰めて、光りの反射で輝く白い星に7.7mm機銃を撃ち込む!無数の弾痕が出来上がって敵機が急反転して距離が迫ったところを20mmで撃ち落とした。

 やったやった。

 長く感じる空戦だけどお腹が痛い・・・。キリキリと痛むお腹をさすりながら飛行する。

 影が一瞬現れ、上方を見ると小隊長機が誘導するため先頭にでる。

 右上方には同じ小隊機。

 湾内の飛行場へと動かす。

 少しづつ大きくなる、塔の様に大きい艦橋は戦艦アリゾナだ。火災を受け炎に包まれる。

 広々と黒雲の中を貫き玩具の様に並べられる敵戦闘機に機銃掃射を浴びせていくとどこか楽しい気分に陥る。

『各自攻撃せよ。ただし離れるな』

 小隊長の命令と共に、私が狙ったのは今にも離陸しようとする戦闘機だ。

 鼻が長く機首にはサメの様な塗装を施し、私を背に滑走路を走っていく。

 今に地上から飛び立つ。敵の距離は感じておよそ100m以内ほどだろうか。


 7.7mm機銃、20mm機関砲を同時に放つ。

 敵機は綺麗に爆発。

 衝突しないように軽く操縦桿を引いてまた、右へと倒し、今度はまるでサーカスでもやるかのように、小隊長は私達を率いて戦艦の間を華麗にすり抜けて赤白い顔のアメリカ人が慌てながら湾内に飛びんだ。

 上空を旋回して機銃掃射、飛行場施設、海軍施設、そして対空火器の破壊して湾内を走る魚雷艇に機銃を撃ち続けていた。


 攻撃を終え、周りを見渡す。

 綺麗な真珠湾は青緑色の油に塗れ、飛行場は黒煙がもいいかぶさって状況が見えないかった。

こんなにやる必要.....あったのかな..。

中国戦線と同じだ。夢中になって我に戻ると戦いの終わりはいつも地獄のような光景になる。

でも戦ってるからしょうがない....!

戦艦アリゾナは未だに沈んでおらず、次から次へ攻撃機が襲いかかる。まだ少しぐらい弾も燃料も余裕があったのか小隊長機は再び左旋回。

 

 さっきの飛行場をまた攻撃するのかな。

 真下から走る機銃の赤い弾。とっても恐ろしく、いつ死ぬかわからないときなので心臓はバクバクと破裂するくらいに鳴り響く。

 海に浮かぶ飛行場正面から、高度50と言う超低空で進入。

 私は飛行機だけを狙おう。

 人なんか撃ったら・・。

 

 善の心が私を動かす。

 でも飛行機はほとんど壊されて狙うものがあんまりない。

 すると突然、照準機に入った敵の兵士が、銃をこっちに向けて今にも撃とうとしている!

 危ない!

 私はとっさに視線をはずし、操縦桿を振って機体を斜めに傾けた。

 不思議と時間が緩やかに感じる。

 格納庫そばでじっと私を見つめる、銀髪の少女と目があって私はそれを眺めて何とか当たらないことを祈った。


 何だろうこの気持ち・・。

 そして視界の端に映った先ほどの兵士。

 弾は当たらずに一安心。

 たった1時間も満たないこの出来事に長く感じながら、炎が浮かぶ真珠湾を目に焼きつけながら上空を旋回していくとホノルルの山々へ針路を変更し、空母に戻るのかと思いきや敵機が浮かんでいる。たった1機、悪戯心で近づいていくとオレンジ色の民間レシプロ機で2人が乗っていたけど撃墜させる気はなくてそのまま通り越して引き上げようとしてその機を後にした。


太平洋上空ハワイ時間午前9時...。

航空地図とにらめっこして何もない海の平原を飛行していくと雲の影から尾を引いて先行する艦隊が左目に入った。

「あれかな」

小隊長も気づいていて戦闘機はその方角のほうへ進路をかえた。近づくと共に瑞鶴上空を旋回して着艦合図を待った。

誘導員が紅白の旗を両手に振られて「着艦よし」の合図が送られて先導する隊長機が高度を落として着艦体制に入った。

よし、訓練で習ったことを思い出して..!

 キャノピーから流れ込む風を感じながら、座席から顔をだして手に取れるような大きな近づいていく瑞鶴の甲板に接近していく。

 脚を展開しフラップを下げてスロットルを調整しながら機体を操っていき、瑞鶴のお尻に着地するようなイメージを取りながら動かしていく。

 

 座席下から押されたような衝撃と、前に飛ばされて照準器パッドを頭にぶつけてしまうけど何とか着艦は成功した。

 ふう・・・疲れた・・・。あの攻撃で何人死んだんだろう。 

 いくらこんなこと考えても相手が生き返るわけでもない、中国戦線で教えられたことは戦いは待ってくれないことだった。

 常に臨機応変に変わっていく。それにとにかく慣れることだけど・・・。

 

 なんで、戦ってるんだろうなぁ、でもこんな考えもう大分前からしてるから戦う理由なんて国の事情とかだろうし・・。

 私は空さえ飛べれば・・・それでいいんだ!

 そんなことを思い機内ベルトを取り外してエンジンをストップさせた。機外に出ようと立ち上がると、一瞬だけ立ちくらみを起こして思わず倒れそうになったけど、駆け付けた整備士の手助で甲板に立ち、私は艦橋下に居る小隊長の傍に寄った。

「小隊長、変な質問ですけどいいですか・・?」

「何だ、言ってみろ」

「どうして、燃料タンクを攻撃しなかったんでしょうか?」

「・・・俺にわかることは戦艦を叩けば戦局が変えられるっていう日露戦争の悪い考え受け継いだ結果だろうなあ。でももう戦艦の出番は終わりじゃ・・」

「となると、これからは飛行機の時代・・・になりますね」

「そうだ。よく分かってるな美貴」

 

 そうだ・・。いくら大きい戦艦、大艦巨砲主義は国の誇りで国力みたいな存在だった!でも今日の戦いでこんなちっぽけな飛行機百機以上相手にあっけなく海の藻屑になった・・・!

「これからは空母と飛行機の時代じゃ・・」

 この先分からない戦いに不安を少しだけ抱いてしまった。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ