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征空の海鷲  作者: j
1943年 ラバウル海軍航空隊
26/52

サッチウィーブ

あけましておめでとうございます。

 ――ブーゲンビル ブイン基地

「美貴さん!お父さんは・・・!お父さんは!」

 この様子だと鼎は聴く耳を持ってくれないぞ・・・・。

 鼎は酷く興奮している。

 それに包帯から血が滲みでている。


「ま、まて!」

「待てません!!だって美貴さんは・・!」

 どうにも出来ないので私は右手を振り上げ、鼎の頬をパンと叩く。

「落ち着け!長官は腕を撃たれたが意識はある!!」

「お前は突っ込みすぎだ!昨日の口喧嘩で複雑な気持ちだったろうが、命を粗末にするな!今日、お前は死ぬところだったんだ!」

 

 私の胸元を掴んだ手は緩められると、悲しい表情に小さく俯いてしまった。

「確かに盗聴はしてはいけないことだ・・・。すまない」と私は気まずく謝る。


 まいったな・・・どうしようかなぁ・・・。

「敵機はお前を追っていた・・・。私をそれを撃墜したんだ、鼎のために・・・」

 喜ぶどころか余計に落ち込んでいる・・。

「ま、まあ落ち込まないで・・・」


 私達は護衛?を終えたのですぐさま補給を終えた愛機に飛び乗って、エンジンを始動した。

 ラバウルの帰りにまた敵は現れると考える・・。

 狭い座席に地図を開いて、珊瑚海を鉛筆で囲いそれを矢印で真上に書く。

 敵の進路予想図・・と。

 どうせ敵機動部隊はいるんだし、長官を叩きにブーゲンビルにやってくる。

 

 ブイン飛行場の指揮所から発進よしの赤旗が振られて、私を先頭に1機、また1機と離陸した。

 

 上空高度4000m。

 長官に言われた対グラマン戦法のことを考えていた。

 戦い方は優秀な搭乗員が囮にグラマンを誘い、外れた小隊がその敵機を追いながら撃墜するという形。

 囮機はS字飛行を繰り返すか、小隊が撃てるような形で誘い込むけど・・生命的に非常に危ない気がするけど・・・。

 とにかく無線機を有効利用することで連携が取れるらしい。

 

 先ほどと同じ編隊でラバウル向かって飛行すると、4機の機影が1000m雲の下にゆっくりと飛んでいたので先頭に出て翼を振った。

 中隊長の鼎に「敵真下に5機」と手で合図。

 開けたキャノピーと一緒に揺られる髪に頭を出すと、こちらを向いて小さく頷いた。

 小隊を連れて攻撃すると言い、鼎は援護すると指示をだす。


 こちらに気づいていないグラマン、私は長官から言われたことを訓練無しにやってみると言う恐ろしさを目前に、機体を海のように青い敵機に向かって突撃。

 ダダダ、と小隊から撃たれる機銃が一撃をかましグラマン1機が爆砕する。

 危ない!


 残骸が飛びこちらにぶつかるところをとっさに回避。

 後ろから明るい黄色の二重紐が飛ぶと、グラマン1機が食らいついていたので「グラマン戦法をやるぞ」と無線で小隊に伝えると2番機、3番機が了解と承認。


 雷のように撃たれる機銃だが何たる下手クソっぷり、まったく当たらず照準がずれているのか見通しが足りないのか。格好の我隊の的である。

 座席シートに見え隠れする敵のグラマンから機銃を撃つ火を目視!

 とにかく射線から外れて、S字飛行を繰り返す。

 2番機の栄優花の零戦五二型がグラマンに近づいた。

 20mmが火を吐いて赤いアイスキャンディーがグラマンに命中し、炎の尻尾を引ひいていく。

 私はパイロットが脱出するかを見守るも、風防越しに見える大きな身体をした男はキャノピーを叩くも火の波に飲み込まれていき、どこかと悪魔の様な声を叫ぶ。

 そしてグラマンの機首は下がり落下していく。

「・・・」

 言葉が出ない。

 仕方が無いのだ、我々も殺さなければ生きていけないんだ。


「残り3機」

 栄優花の2番機が目の前に飛び出ると、その後ろに尻尾を食らいつく猫のように追うグラマン2機が。

『隊長、お願いします』

 スロットルレバーをオープンし速力が増す。

 はみ出るくらいにグラマン1機に照準を入れ込み20mm弾を胴体にぶち込み、敵機は枝を折った翼がぽっきりと折れ空中で大きく横転。

 次の目標もやはり後部確認が出来ていないのか、2番機を追うばかり。


 13mm機銃の赤い尾が敵の座席目掛けて飛ばされると糸を切られた人形のように、飛行体勢が崩れて黒い海の底へとゆっくり落としていった。

 そして残り1機、3番機が撃墜。

 中隊と合流するとまた被害なしで戦闘を終える。

 何もなかったかのようにラバウル目指して飛行した。


<>

 ――ラバウル東飛行場

「いやーあの戦法、実に効果的じゃないか」

 テント下で皆が楽しく会話する渦に混じり、今日試した戦法を話したり対グラマン戦について皆が語る。

「あれは小隊の連携が大事だね」

「ただ、零戦の防弾が悪いから逃げ足にいい奴じゃないと駄目だな」

 誰かが言った冗談交じりにどっと笑いが入り私もここに来て以来から、口を大きく笑ったのは久しぶりであった。

 テーブル上にくしゃくしゃになった軍部発行の新聞を手に取り一面を読む。


【1943年2月28日 日本陸軍ガダルカナル転進】

 うわ、撤退じゃなくて、転進・・。

 国民は分からないけど我々は目に焼き付けたので、中々面白い新聞を作ったと心の中で呟きながら別の記事に目をつけた。

 以外にも事実的な事も書いてあるので少しは関心。

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