1対16
風邪も治り、飛行許可も下りたので私はまた空を飛ぶことが出来るようになったので失われた時間と技術を何とかして磨かなければ。
新たな機が私に譲られると聞き、おもちゃを貰うかのように喜ぶ私は早く乗りたい意気と敵を早く落とすと言う血騒ぎが体から沸いてくる。
「ええ美貴さんもとうとう新しいのですかあ!」と新品同様に肩並べ出来ると鼎は大喜び。
「お前は確か零戦の三二型だったな」
「そうなんですけど、美貴さんが風邪引いてる間の戦闘のとき、色々被弾しちゃいまして・・。私も今日、新しいのが」
「それだけ激しい戦いだったのか?」
「あ、・・いえ。やめましょうか。こういう話」
「あ、うん・・」
なんとなく察していたが、戦友を失ったか・・。
無理もない、なんたって相手は零戦より遥かな性能を持つ敵機と物量でものを言わせない敵で相当な技術が無いと落とせない連中だもの。
あの敵機・・。どう落とすか。
そんな考えを自身で問いながら泥濘の密林の中歩くと、木に偽装された大きな格納庫が見えてくる。
丁度陸軍の奈緒子さんとユウコが居たので駆け寄ってみる。
時間帯は朝なので整備員や海軍将官、挨拶を交わし、早速我々が乗ると言う新型機を見せてもらうと格納庫の中へ足を踏み入れた。
「おお・・!」
つや消しが施され渋い農緑色の零戦ははがれ塗装の無い、新品同様私を待っていたかのように。
これで私はまた飛べるのだな!
カウリングは丸み帯びていて、赤茶色の排気パイプは4つ左右に露出し、主翼の機銃はもう一門追加されている!
「零式艦上戦闘機五二型丙です」
「五二型・・」
どのような性能を持っているのだろうか。私は整備員の話を黙って聞く。
「はい。九九式20mm機関砲は改良され連射性を向上、長砲身なので射程は向上。弾は増加されました。そして13mm機銃は主翼に2門。機首に1門」
「そして搭乗員保護のため、後部座席に55mm防弾ガラスを装備。自重は二一に比べ大幅に増加。1970kg、発動機は栄二一型、最高速度は高度6000で544.5km/h。上昇能力は5分40秒、5000mで10,200mまでは飛べます」
「急降下速度は740.8km/h。後続距離は1,920km、増槽付で2,560kmになります。五二型で燃料タンクに自動消化装置がつけられたので一応防弾能力が上がったと・・」
「主翼は三二型の切りつめを丸みに」
「運動性は?」
と私は常に"あいつ"と踊れるように運動を見ていたが、
「運動性は二一型に比べ落ちます。ですのでこの機体は一撃離脱に特化したものになります」
「空戦は格闘戦だけじゃないさ・・。一撃の攻撃で勝敗がつくのさ」
うむ。ユウコに言われてみれば確かにそうである。
まあでも私は嬉しくてしょうがない。早く飛びたいと言う意思だけは誰にも負けないくらいに。
「整備隊の諸君、これを滑走路まで運んでおくれ」
楽しみだなあ。
この朝日と一緒に・・。
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自動車に引っ張られる零戦2機が滑走路の並びに終わると、悪魔のサイレンが基地全体に鳴り渡り搭乗員達が一斉に飛行場に向かい走り、整備員達は各機の発動機の始動と発進準備を行い、私は零戦五二丙型の操縦席に乗り込みフラップ、ラダー、エルロン、エレベーターの点検を操縦桿と一体となり異常を探る。
よし、何も無い。
新品なので無いのは当たり前かと思っていたが戦が長引くために部品の質が悪くなったり故障が多くなったりとしばしばある機体もあるのだ。
エンジンが轟々と我々にいつでもいけるというくらいに周りはじめ、プロペラの回転が徐々に早く回っていく。
そして並ぶ零戦は滑走路を走るように疾走し灰色の雲の中に突っ込むかのよう、翼を広げ離陸していった。
私も2番機の鼎、3番機の栄優花の軍曹を連れラバウルの空へ。
計器の速度計をチラッと見ただけであっという間に400km/h以上を出しており、上昇計も二一と違い早く回っていた。
『敵はグラマン16機だ。全機16機で撃退せよ』
と無線が入る。
ところが、あいにく雲は厚く覆われていて敵がどこにいるか分からず私は一人小隊機と逸れてしまい雲の中でさ迷っていた。
心拍数が不思議と上がり冷や汗が頬から流れる。
緊張と恐怖にを解消するに私は静かに深呼吸をし冷静を取り戻す。
気流が強く機体は揺れ、流されるも何のこれしき。
私は負けないと、強い意志でうっすらと光が漏れる雲の割れ目に操縦桿を倒し脱出をした。
一面青空で広がっており、水平線に浮かぶ小さな機影は味方機だと思い私は近づくと、
「う!!」
不運にも青色で塗られたグラマンF6F、計16機の編隊に遭遇してしまった!
敵発見は両方とも同じタイミングだったので、交差するように私とグラマンはすれ違いざまに1対16の空戦が始まろうとする。
その中にも地獄猫も混じっており、16機相手だろうが私は恐怖自体を吹き飛ばしむしろ喜びが沸いてくる。
空戦フラップレバーを落とし目に見えたグラマンに光学照準機を入れ込み、20mm、13mm機銃の発射機を押すと振動と一緒に、赤の二重紐と赤紫色の直線棒が吸い込まれていくが手応えがない。
バリバリと微かに聞こえる敵の銃火を耳に私は操縦桿を振り倒し、後ろを睨みつづけた。
「いい腕だ」私は思った。
数多い13mm機銃は常に私に狙われている。
ダンスの用に踊り回る零戦は後部から飛される、弾丸霰を被弾ギリギリというくらいの運動で難なく回避していった。
「当たったらたまったもんじゃないな!」
だがそんな事を言う余裕もないので、入るものに機銃を浴びせかけると1機が錐揉みのようになりラバウルの海上へと落ちていくも見送る余裕が無い。
唸りを轟かせ降下していく音に私は急な左旋回。
敵に覆われる中、真上から一撃を私に食らわせようとした敵機は不運に味方1機を押しつぶし、その残骸を2機まとめて追突。空の中で火の玉となり残骸だけが散らばると私は「なんて愚かな奴だ!」とあまりの下手くそっぷりに笑ってしまう。
しかし私の宿敵、地獄猫は追ってこない。ただ、1機不自然に旋回している機があり多分あれだと。
私を観戦しているのだろうと思い少し腹が立つ。
窮屈な座席ベルトを外し後方を見渡すと、6機がぴったり張り付いており私はギョっと恐ろしく背中が一瞬冷え左に急旋回と一緒に赤く光る敵の弾丸が後ろから前へ、海面に吸い込まれていきさすがの私も吹き飛ばした恐怖が戻ってくる。
私が気がおかしくなったのだろうか「フヒヒ」と変な笑いをしてしまう。
と、追いかけっこをしているうちに高度は下がっており海面すれすれの立場になっており不利な状況に持ち込まれた。
「私は負けないぞ!」
私と零戦は常に一心同体。
ただの的だと思うな!
何とかして数を減らせないものか。
とりあえず味方がこちらにやってくるのを待つしかなく、左手で添えていたスロットルレバーを力いっぱい押し緊急出力装置を作動と一緒に栄エンジンは今にもオーバーヒートするくらいの唸り鳴き、敵の郡から少しでも離れようとした。
丙型よ!お前は私と共に死ぬつもりなのか!?私は望まないぞ、さあもっと早く!
角ばったグラマンから少しずつ離れていく。けどしつこく追ってくる奴もいて中々振り切れない。
機銃の弾丸が海水に叩き込まれては、水しぶきが機体に被り、キャノピーが濡れて見えなくなる。
ドンとこい。落とせるものなら落としてみろ!




