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征空の海鷲  作者: j
1942 ようこそ、地獄の南方へ
19/52

独断行動

 宿敵"地獄猫"はちらほらラバウル内でも噂になり、司令官からでも「撃墜してくれ」と命令が出るほど恐ろしい存在になっている。

 いつも通り遊撃を終えて飛行場に戻ると、電信員から、

「シーイーグル、シーイーグル」と言う敵の無線を傍受したらしくそれがどうやら私のことだったらしい。

 マーシャル諸島航空戦で日本軍が多大な損害を受け一部隊が撤退。

 日に日に錬った技術でも物量には負けてしまうが、我々はそんな数で負ける人間ではない。


 さて、陸軍の奈緒子さんがガダルカナル島に自ら出撃を志願したけど帰還できるかどうか・・。

 食糧、水や弾薬も尽きているのに・・。

 この自己判断でユウコは出撃前日夜に奈緒子さんと大喧嘩、果てにはビンタで止めようとしたが「将兵を見殺しにする訳にはいかない」と言う理由で

 先週この地から去ってしまった。


 海軍も陸軍将兵で撤退支援に協力しラバウルには駆逐艦、巡洋艦が数十隻が停泊。そのうち半分はガ島の撤退に支援する。


 ――1943年2月1日

 強い日差しが目に刺さり、相変わらず太陽は我々の戦いを眺め屍の山と化しても救いもしない。

 天の神は太陽の光がまぶしくて見捨てたのだろう。

「ふっ」と変な冗談ごとで一人笑ってしまう。

 

 もうガダルカナルには飛ばないと思ってたのに・・。

 指揮所前には「一人でも多くの将兵を助ける」と言う飛行隊長の声がよみがえる。

 この撤退作戦、早くて日が暮れる前に完全にやらないと我々までもが被害を受け最悪の場合このジャングルの中で死ぬと言う、非常に重要な任務か課せられた。

 大本営はこれに承知しての事だ。


 海軍の艦尾に白い波が生まれ、その線は何十との数。

 やられたらたまったもんじゃない。せっかく遥遥遠くから来た艦船だから・・。

『まもなくガダルカナル島上空』

 男性の声に、私は一面緑のガダルカナル島の地をまた久しくまぶたに焼き付け、一式陸上攻撃機の護衛姿勢に入り周囲を確かめる。

 そろそろ敵が来る頃だが。


 とそのとき陸軍の爆撃機、海軍の陸上機があわせて50機が敵勢力地域、最前線に向けて腹の下から冷たい爆弾を無数に投下。

 我々零戦隊にも小さく重たい爆弾が丁度足元に括られている。

 ガクッと投弾レバーを引っ張ると、体が軽くなるかのように機体は気流にのり、爆弾の後を目で追うと先ほど陸海の攻撃機が落とした爆弾が一斉に炸裂。

 ジャングルを切り裂き、岩や植物の根っこを吹き飛ばす。敵の勢力地域が一斉に炎の海となり、後方の第二派が大きく見たことのない爆弾を投入。


 その爆弾をじっと眺めると卵から雛が生まれたかのように小さな爆弾が無数に展開した。

 第一波攻撃隊が離脱を開始。

 着陸から収容の制空権と安全を確保するのが私達の役目なんだ・・・!

 残る中隊戦闘機隊は日本勢力地域、空域に向かう艦上爆撃機、戦闘機に向かい突撃し陸軍戦闘機は敵戦闘機と交戦。


 と、すぐそばにB25、2機を見つけた。

 下腹を見せて悠々と飛行。高度4000m。現時点、高度は3500あったため、私は2番機の鼎を連れ死角に静かに入り込む。

『もう1機やれ』と合図を出すと同時に鼎は私の機から離れたすぐに機銃をぶっ放す。

 同時に私も機銃、機関砲発射機を押し赤い二重紐と、長く太い蛍光棒が敵の胴体に向かって吸い込まれていくと、敵機はガクッと急に機体を斜めに押し倒したように機首が落ち、そのままジャングルに向かって大きな炎が柱となって立上がる。

 幸いにも中身を撃っただけで、長くやることはなかった。

 同じく鼎も得意のパイロットキルで素早く片付け、

「!」

 どこからか今までに無い気配を感じる。

「ああ・・地獄猫・・いるんだな」

 黙って独りで呟く。


 同じ高度に居る、絶対に。

 周りを見渡し、一直線、私と動向している3機の敵機がこちらに近づいていき鼓膜を破るくらいの凄まじい、エンジン、銃撃が私に向けて撃たれ素早く操縦桿、ラダーペダルを左に操作し回避。

 間一髪、蜂の巣になるところだった。


 しかし3機で来るとは・・。

 ああこい!私と鼎が相手になってやる!!

 来い!地獄猫!


 今までに無いとても不思議な気分。

 恐れの名を持つ地獄猫の機体は噂の新型機に変わっていて、性能も段違い。

 後ろを食われ、フラップレバーをダウン、空戦フラップに変更し大きなロール回転、視界が180度回る中で地獄猫の小隊の1機が射線にはいり、すかさず機銃を撃ちはなつ。

 しかし、弾は外れてしまう。後方には地獄猫、あと1機含めて2機が私の後部に張り付くが、鼎の零戦二二甲型がけん制の一撃、地獄猫と小隊機は射線に入れ損ね、機体を斜めに滑らせ回避するところを私は狙う。


 自由な利きが出来る零戦に無理な旋回をする。

 徐々に伝わる重りが体全体に圧し掛かり、視界の周りは黒く染められるが、猫のマークを入れた地獄猫の戦闘機が斜めに機首を上向けた。

 綺麗で白い肌の女の顔がくっきり見えて真剣そうな顔だ。私を殺す為だったのだろうと、

『空戦止め!美貴、鼎集まれ!』

 駄目だ!!鼎の一撃で奴は撃墜できる!

 敵機に追われ、地獄猫むけて急降下する鼎の零戦の機首からパッと閃光が光る。

 雨のようにオレンジ色の曳光弾が真上から降ると、とっさにラダーペダルを踏み、機体を滑らした。

 新手か!?

 後方に流れた機影に振り返ると、それは八四戦隊のユウコ機とその列機が1機が銃撃してきたのだ!

 

 これに地獄猫は恐れたのか列機をつれて全速力で離脱し、私はそれを追わず怖い顔でこちらを見るユウコに「ついてこい」と言う指示に従うしかなかった。

 計器の燃料はすでにゼロになっている!

 しまったこれだとラバウルに還れない・・!

 空戦なんてしなければなぁ・・・。

 と、思ったら増槽の燃料が切れただけで、帰りの燃料分だけが残されている。

 

 慌てて損した。と思い増槽を切り離し、メインタンクに切り替えた。

 追いつけないわけだ・・。

『お前らが空戦をしている間に将兵の回収は終了した。悲惨にも生存者は少なからずな』

『そして美貴、重要な任務に独断の行動をした事関して罰を与える。ラバウルでな』

「わかりました」

 勝手な行動に少し私は少し反省をし、まだ残る燃料と共にラバウルに戻ろうとした。



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