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偏屈先輩の御一族

「た、ぜぇぜぇ、た、ただ、いま……はぁ」

 とりあえず絹坂を追い払い、捨て去り、走り去って、暫し近所を追いつ追われつした結果、何とか絹坂を撒いて、我が自宅の場所を秘匿することに成功した。

 俺の家は小高い丘の上にあり、その登り口は少し分かり難い場所にある。昔、うちは神社をやっていたからこんな不便な場所に家があるのだろう。坂を上るのが面倒臭くて辛くて大変で参ったもんだ。

 しかも、ブロック塀で家をぐるりと囲んでおり、その出入り口が何故だか登り口の反対側にある為、わざわざ回り込まなければいけない。誰だ。こんな不便な家にしたのは? うちの祖父さんと親父だ。馬鹿どもめ。

 俺は暑さと無駄な運動による体力気力の減耗により意識を少し朦朧もうろうとさせながら渋々と移動する。

 我が居宅は外観的には純和風に格好つけている三階建ての建築物だ。

 ところで、我が一族は外聞を重視するが実用性も重視するという欲張りな性格の人間が多い。そんなわけで純和風の家だと格好いいから、外観はそうしているものの、中は結構近代的で、風呂は広いしテレビも備え付けられ温度変更も自由自在。部屋は和室だけではなくフローリングの洋室もあるし、クーラーで夏は涼しく冬は暖かく、乾燥機付き洗濯機に大画面テレビ、自動織機洗浄器に、シアタールームまである。

 以上を見て分かるとおり我が家は結構な金持ちである。これは見栄とか自慢とかなしに普通に客観的にみてもそうなのだからしょうがないことだ。

 しかし、何でこの家に金があるのかといえば、誰もが羨むサクセスストーリーとか絶えまぬ努力が生んだ財産とか棚から牡丹餅的な云々とかがあるわけではない。

 そもそも我が一族こと冴上さえがみ家はこの小山とその北に広がる森を敷地とする神社の神主であった。何でもこの小山と北の森には神だか精霊だかが住んでいて、冴上家は代々それに仕える尊き家柄だったんだそうな。

 貴族が権勢を振るった時代から武士の時代まで長らくそうして生きてきた冴上家であるが、明治の始まり頃の混乱に乗じて北の森を全て高値で大商人やらに売り捌き、それによって得た現金を持って商売に手を伸ばし(あんまり良い商売ではないと聞いている)財を成したそうだ。

 挙句に議会制度が確立すると、それまでに溜め込んだ金を選挙資金として議員に成り上がり、議会に上がってからは左派にも右派にも属さずその時々に乗じて上手く立ち回り、策謀を巡らし、政敵を追い落とし、と、まあ、合法非合法問わずあくどいことを為し、戦後も戦争にさして協力も非協力もしなかった為に議員として影響力を保持し、一時期は地域企業から莫大な献金を集め、今もってこの地域では圧倒的な影響力を誇っている。下手な国会議員なぞ屁でもないくらいだ。

 ちなみに、現在はうちの祖父さんが10年間市議会議長を勤め、親父は県議会議員、叔父は市の部長、他にも親戚には大臣の秘書やら高級官僚やら外交官やら有象無象のあくどい者どもがいる。そんなわけでうちは金持ちにして権力者なのだ。元が神に仕えていた家とは全く思えない。

 ああ、嫌だ嫌だ。金と権力にしがみ付く汚らしい奴らめ。俺は政治屋には絶対ならんと固く決めているのだが、それが親父には大いに不満であるらしい。政治屋に学歴は大事なので今俺が通っているあんまーり知名度のない地味めな大学よりももっと名のある首都の大学に行け。なんなら金でも圧力でも権力でも何でも使って裏口入学させるから行け。と、まあ、言われたのだが、俺は梃子でも首を縦に振らず。大論争から殴り合い寸前の大喧嘩に発展し、俺は通算8回目の「出てけっ!!」という言葉を食らったのであった。

 まあ、あの頑固で自己中心的で我侭な糞親父から離れられるのは望むところだったので、俺は言われるがままさっさと家を出たのだがな。親父の隠していた表には出せないお金を少々くすねたので金銭的な心配は無用であり、後は、もう大学生なのだし何とかなるだろう的な気分で家を出て、そして、現に何とかなった。

 このような成り行きゆえ親父とは顔を合わせ辛くというか顔も見たくないため、実家に帰る気なぞ欠片もなかったのだが、前述の通り姉上に説得され、此度、帰参した次第だ。やれやれ、面倒臭い。貴重な休みがー。

 そして、せっかく、帰ってきてやったというのに、玄関に誰も来やしねえ。鍵が開いていたから人はいると思うのだがね。これで人がいなかったら無用心極まりない。

 まあ、うちに泥棒に入る命知らずもいないだろう。うちの一族に警察官僚がいるからな。全国の警察組織を動員して、どんなに金と人員をかけても、草の根分けて犯人を捜し出すことだろう。我が一族は俺と同じく山よりも高く海よりも深い矜持きょうじ(プライドのことだな)を持っているのだ。敷地に招かざる者を入れてそいつを怒鳴り散らさないでタダで逃がすことは何としても許せないというわけだ。

 しかし、本当に誰もおらんのか? いくら、うちに入るような命知らずの泥棒がいないとはいえ、最近は北の森の猿がドアを開けて入り込むことだってあるというのに。あの猿どもは何とかせんとならん。きーきー煩いし、暴力的だし、悪戯が過ぎる。10年くらい前に密かに毒餌を撒いて数十匹駆除したはずだが、最近、また増えてきているのだ。

 重い荷物を引き摺って1階のリビングに向かう。うちには2階にもリビングがあるので、区別して言わねばならない。

 1階のリビングは玄関から真っ直ぐ伸びる廊下の突き当たりにあり、雨戸を開けるとガラスの引き戸になっていて、裏庭を一望でき、縁側から出入りもできるようになっている。

 うちの家の裏には結構広い庭があり、元は純日本庭園であったらしい。しかし、うちには庭とか園芸とかに興味を持つ者が少なく、また、ケチでもあるので、庭の手入れは十数年に渡って放置されていた。

 自由奔放に伸びていく草、枯れゆく花、弱る木を、日々見ながら俺たち一族は「これが自然の厳しさだ」とか言って、何もせずにいた。

 ところが、最近になって、その状況に変化が起きている。その変化は俺が高校3年の頃というか、我が妹が高校に入学して園芸部に入部したことが変化の原因だ。

「ああ、何か暫く見ないうちに凄いことになってるな……」

 俺は1階のリビングから庭を見ながら呟いた。

 庭は日本庭園のようでもあり、イギリスのガーデニングのようでもあり、アマゾンのジャングルのようでもあった。てか、何これ?


改行がなく読み辛いこと極まりないですね。

しかも、ストーリーに大して関係ないことですし。

この話いらなかったのでは……?

あ、先輩の苗字が出ました。これでフルネームが分かるよ!

次話では先輩の妹が出ますよ!

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