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ハリホと魔法少女  作者: AO
第一章 私が魔法少女になるまで
7/8

7 金食いババア

 目の前で土下座する変態を気の済むまで足蹴にする。こいつ、やってくれやがった。


「変態死ね」


 結論から言おう。私は魔法少女なるものを引き受けることになってしまった。


***


 あの日のことはすっかり忘れ去り、今日も私はいつも通りの日常を過ごしていた。正確に言えば、母の連れてきた男たちから金を無心するようにはなったが。

 どんなにあがいても小学生が一人でお金を稼ぐなどできない。しかし、いくら父に甘えてお金をもらおうと結局は小学生のお小遣いだ。大した額ではない。母は論外だ。そこで、母が連れ込む男どもに目をつけたのだ。彼らは元キャバクラ嬢の母が捕まえてくるだけあってそれなりにお金を持っている。その上母に騙される程度にしか女の嘘を見抜けない男だ。


「あのね。ママ、あやのきゅーしょくひもってっちゃったの。だから、いつも学校でね。変なのって。あや、あやっ」


 こんな感じの何も知らない子供を演じれば「ママには内緒だよ」って給食費以上のお金をくれるのだ。泣きそうな感じで言えばさらに騙されてくれる。ちょろい。さすが母の男。


(というか。今時こんな小4っているのかしら)


 こんなバカな小学生いるのだろうか。いつも周りに興味がなかったから分からなさすぎる。まあ、男どもから見れば小学生なんて遠い存在過ぎて分からないだろう。小学生を無垢だなんだと言いながらちやほやして、そのくせロリのエロ本見て興奮してるバカどもだ。まったく。世の中どうなっているのやら。


(大体、いくらなんでもあんなのに引っかかるわけないじゃない。これだから変態はいやなのよ)


 何がここが病気で膨らんで苦しいんだ、だ。なら病院へ行け。いくら純真無垢だとしても小学4年生にもなって「うん。私が助けてあげるね」なんて言って触ったりなんたりするわけない。妄想は頭の中だけにしておけというものだ。

 小学4年生になって吹っ切れた私は、男たちを利用することに躊躇がなくなってしまった。しかし、それでも稼げるお金は微々たるものだ。そう利用して大丈夫そうな男ばかりではないし。母にばれたら取り上げられてしまうのだから。金食いババアめ。


***


 すっかりハリホにも慣れ、そうやって日々をもどかしく生きていたのだが。母の連れてくる男たちばかり見て、なめていたのかもしれない。あの日の変態が変態であるならば、あれだけで諦めるわけがないはずなのに。

 ある日珍しく「お帰り」と言って迎えた母がいた。男でも連れ込んでいるのかと言われた通り「ただいま」と子供らしく返事をしてリビングに行った。そして、母の男に子供らしく挨拶と思って目を向けたところで、私は固まった。


「やあ、彩ちゃん。元気にしてたかな?」


 青いマフラーはしてないものの、見覚えのある赤い執事服を着た変態がそこに座っていた。しかも、その向かいにはにこにことよそ行きの顔で笑う母がいるのだ。嫌な予感しかしない。


「彩ったら遅いじゃない。社長さん、ずっと待っててくださったのよ」

「いやいや。急に押しかけてしまったのはこちらです。お母様」


 愛想よく笑う母と紳士面して笑う変態。こんなに気味の悪いツーショットは見たことがない。しかし、だからと言って母親面してる母の前で変な態度をとるわけにもいかない。ごめんなさいと謝って、恐る恐るといったフリをして母親の隣に座る。


「こちらはMagical Childen社長の芦田さんよ」

「お久しぶり、彩ちゃん。これで、冗談じゃなくあの時に言った言葉は本気だってわかってもらえたかな」

「もう、言ってくれたらいいのに。子役としてスカウトされてたなんて」

「まあ、子役と言ってもそんなに大きな番組というわけではないのですが」


 しまった、と思った。ここで私は引けなくなってしまったと分かってしまったのだ。この金食いババア、じゃなくて母はお金をとれるとわかれば容赦なくとっていくほどお金が好きだ。次に男。だから、自分が労せずお金をとれるとなるとすぐさま飛びつく。ノーリスクならなおさら。それでも諦めるわけにはいかない。


「あの、お母さん。私、テレビには」

「こちらとしても、お母様が現場にいられない、というのは疑われても仕方ないと分かってはいるのですが」

「だから」

「ええ、ええ、分かっていますわ」


 何を分かっているというのだ。というかそんな紳士面しても普通に考えて怪しすぎるでしょ。なんで引き受けんのよ。というか、いったい何の子役なのか母は理解しているのだろうか。

 しかし、私がどうこう言ったところでもう二人の間で交渉は終わっているのだ。母がハイと言ったのなら私にはそれを拒否することができない。母はちょっとと言って私をリビングから連れ出すと、小さく私に囁いた。


―――私の男から金とってんの、かーさん知ってんだからね


 にっこりと笑って母は私を変態に差し出す。


「彩、せっかくの経験なんだから楽しんできなさいな」


 ああ、本当になんでこんなことなってんの。目の前で嬉しそうに笑う変態を睨みつけることしかできなかった。

彩の母

 彩曰く金食いババア。元キャバ嬢でお金が一番大好き。次にお金を持ってる男。彩のことは興味はないが、別に男を愛してるわけではないので、男を騙す駒としては使えると思っている。

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