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ワールドクラッキング  作者: 光喜
第2章 聖域編
18/31

第3話 救われたのは

 剣が引かれた。甲高い音が鳴る。


「あァ? てめぇ、何モンだ?」


 《黒尽くめ》が問う。アリスは答えない。二人の眼差しが交差し火花を――散らさない。アリスの目の焦点が微妙に《黒尽くめ》からズレている。

 

お前も(・・・)《ダリオ》か」


 げんなりした顔でアリスが言った。


「も? お前ぇも(・・・・)か」


 ああ、勝負は見えたな。

 アリスのあの遠い目。ステータスを見る時の目だ。ステータスを調べ終え、アリスの態度が変わらない。つまり、アリスにとって取るに足りない相手というコト。

 ホッとしたら……力が抜けた。

 アリスは膝立ちになって、あたしの上体を起こす。


「回復薬。飲める? ああ……ひどい、な」


 あたしの傷を見て、アリスが顔をしかめた。

 胸がきゅぅと痛くなり……ふと、分からなくなる。

 戦いは避けられないと思った。アリスと共に行く為には。でも、やる必要のあるコトだったのか。アリスに悲しい思いをさせてまで?

 

「…………ごめん」

「仕方がないさ。相手が悪かった」

「……ちがっ……うぅ、あたしが……あたしの、ワガママで……」


 アリスが困ったように首を傾げた。

 ……そうだよな。イキナリこんなコト言われたって。

 あたしが落ち込んでいると……不意にアリスが真顔になった。


「イシュ。君は――いや、お前は。お前のやりたいようにやれ。遠慮するな。なに、僕のほうが迷惑かけるに決まってる」


 互いに遠慮してたらやりたい事も出来なくなる。だから、僕はこの世界に来たんだしね――と。

 言わんとする事を飲み込み……あたしは苦笑いを浮かべた。

 ははは、アリスらしいや。励ましの言葉すらキョウレツだ。

 もうあたしに遠慮しない。アリスはそう言っているのだ。

 

「……あたし。行くからな。アリスと一緒に」

「だから、言ったんだよ」

「おい、てめぇ、無視してんじゃねぇ――」

「少し黙れ」


 何かが放たれた。アリスから。

 殺気か。【威圧】か。

 顔色を失う《黒尽くめ》を一瞥し、アリスはあたしの方に向き直る。


「ほら、飲める?」

 

 回復薬を飲むと傷が塞がって行く。だが、幾つかの出血は止まらなかった。《出血》しているのだろう。状態異常は回復薬では治らない。回復薬には止血剤が含まれている事もあるが、入っていなかったのだろう。

 出血には二種類ある。

 ただの出血と状態異常としての《出血》だ。

 斬撃属性の攻撃を食らった場合、状態異常の《出血》となる場合がある。

 一番重症だった腹部の出血は止まっている。

 ……うん、もう平気だな。

 見上げると……アリスは大剣を手に何か考え込んでいた。

 吸血鬼。脳筋。

 そんな単語が口から漏れていた。


「なあ、外で戦わないか」

「行くわきゃねぇだろッ」


 アリスの提案を《黒尽くめ》は拒否する。

 まあ、それはそうだろう。

 アリスの大剣は身長ほどもある。障害物の多い室内は《黒尽くめ》が有利だ。

 ……有利というより。相性の話だな。あくまで。


「困るんだよね。ゴミ掃除で散らかしたら本末転倒だ」


 薄く笑いながらアリスが言う。


「…………ゴミ、だァ?」

「自覚がなかったのか? お前だよ」

「……てッ……てンめェ!」


 ……ああ、ユニ、これか。


 ――マスターはもっと酷いですから! 悪気も無く強敵を煽りますから。


 でも……悪気も無く……という部分は違う。明らかにアリスは挑発している。

 あたしが傷ついたからか。だから……怒って?

 だとしたら……どうしよう。うれしい。わ、分かってるケドな。自分のミスでこうなったって。ダメだ。カオがにやつく。こんなトコ、ユニに見られたら――

 

「あれっ? ユニは?」


 思い出すタイミングが酷いが……まあ、ユニだしいいだろう。


「外で見張り。という、名目――の自己満足かな?」

「……どういうコトだ?」

「だからさ、イシュも外に出ててくれない?」


 困ったように笑うアリスを見てピンと来た。


「イ~ヤ~だッ」

「見ていて気持ちのいいものじゃないと思うんだけどね」

「そォゆうことじゃないだろッ。ユニだって言うぞ。同じコト」

「だから自己満足。そういったろ?」

「あっ! アリス! 後ろだ!」


 《黒尽くめ》がアリスの背後に迫っていた。

 アリスが《黒尽くめ》を見た。が、既に刃は繰り出されている。避けられる距離ではない。だが、防御ぐらいは出来るハズだ。しかし、あたしの願いは裏切られる。

 アリスは避けなかった。剣をそのまま食らった。


「ハッ! ナメすぎ――」

「【両手剣5】――《波濤返し》」


 《黒尽くめ》の嘲笑をアリスが遮る。

 アリスの大剣が強い光を帯びていた。《黒尽くめ》が驚愕の表情を浮かべる。

 まるで竜巻だった。大剣を持ち上げ――振り下ろす。それだけの行為が暴風を伴う。血相を変える《黒尽くめ》。アリスの大剣の軌道は最初から変わらなかった。なればこそ、この結果は奇異と言えた。大剣に押し潰された《黒尽くめ》がいた。避けようとしていたのにも関わらず、である。吸い込まれた――とでも言うのか。


「カハッ」


 《黒尽くめ》が目を剥き、剣を取り落す。全身の骨も折れているだろう。


「……………………………………………………はあ?」


 ……え?

 なんだ、コレ。

 一撃?

 ウソぉ。

 もう終わり?

 い、いや、疑って無かったけどな。

 アリスが勝つってことは。

 でも、まさか……一撃とか……え~~~~?

 ……ははは、そうか。よそ見も誘いか……なんだよ。あたしのせいでアリスがピンチになったと思って……すごく、怖かったのに。あ~~そぉ……ムダな心配だったってコトか……ま、まあ、あたしが勝手に心配してただけだし。それはいいんだケド……

 ……こー、さ。

 乗り越える壁! みたいなカンジ?

 あったと思う、《黒尽くめ》には。

 それが……なあ……

 ……ん? あ、吐血した。アリスもいい加減、大剣どかしてやれ。なんか……ほっといても死にそうだぞ。アリスからすればそれでもいいのかも知れないが。

 ………………ゴミ掃除って言ってたの。本気だったんだなあ。

 だってアリスぜんぜん本気出してない。

 このグチを聞けば分かる。


「……痛ぅ。なに、このアーツ。やたらタイミングシビアだし。来ると分かってたら避けるって」


 最近のアリスのぶ~むはアーツだそうだ。

 アリスはアーツを使って来なかった。

 試し撃ちはしたらしいが、実戦で使った事は無かった。

 使えない【短剣】のアーツより、効果的なスキルがあったからだ。【クラック】だ。

 それが【両手剣】を手に入れて事情が変わった。

 【両手剣】のアーツは実用性が高い。

 嬉々としてフォレストウルフにアーツを繰り出すアリスの記憶は新しい。

 一通りアーツを試していた。だが、一つだけ試せなかった。

 それが《波濤返し》。

 受けたダメージが大きいほど威力を増すカウンターのアーツ。

 フォレストウルフ程度の攻撃では効果が実感出来なかったらしい。

 そんなところへ現れた《黒尽くめ》は……格好の実験台だったのだろう。


「お前もアーツ使ってれば楽になれたのに。あ~~。MPか」


 アリスは片手で大剣を持ち上げる。切っ先が《黒尽くめ》の脳天に向けられる。


「あ、アリス、待ってくれ! そいつに聞きたいことがある」

「…………分かった」


 アリスは何かを言いたそうにしていた。だが、結局は言葉を飲み込んだ。

 《黒尽くめ》の隣にしゃがみ込み、あたしは言う。


「聖域はどうなってる!?」

「くたばれ」


 唾を吐きかけられた。血が混じった唾を拭い、あたしはもう一度訊ねる。

 だが、結果は同じ。訊ねる毎に唾に混じる血の量が増えて行く。

 

「無駄だよ、イシュ。彼は決して口を割らない。エルフには」

「……エルフ、には?」


 《黒尽くめ》はリーダーと顔見知り。それなら《黒尽くめ》の種族も?

 吸血鬼の特徴として鋭い牙がある。だが、口の中を見る機会はまずない。多少、血色が悪い事を除けば、吸血鬼の外見は人族と変わらない。

 だが、ぜえぜえ喘いでいる今なら。

 ……あった。牙が……あった。なら……あたしが、何を聞いても……

 

「イシュ。聞きたいのは聖域の事でいいの? シンラの事は?」


 ハッとアリスを見る。アリスは人族だ。


「……聖域。まずは聖域だ」


 エルフの人族嫌いは筋金入りだ。この二人がいた事自体がおかしい。聖域の外れとはいえ、人が来ないわけではないのだ。なのに二人は悠々と寛いでいた。

 まるでここが安全だって知っているみたいに。

 最初、シンラはあたしを探しに聖域を飛び出して行ったのかと思った。

 だが、聖域で何かが起こっているのなら、シンラもそれに巻き込まれている可能性が高い。シンラはあたしに負けず劣らず弱い。単身聖域を飛び出すようなバカでは……ない、と思う。思いたい。


「分かった」


 そう言うとアリスは《黒尽くめ》に向きなおる。

 

「僕はお前の敵じゃない。信じてくれ」

「…………ここまでやって……おいてよォ……虫のいい話じゃねぇか」


 ……あたしはバカか。最も尋問に適さない人物。それがアリスだ。今この場では。


「不幸な行き違いがあったんだね。他の《ダリオ》がいるとは思わなかった」

「……確認する素振りも……無かったじゃねぇか」

「目障りな羽虫がいたらとりあえず潰しておく。お前だってそうするつもりだったんだろ」

「…………チッ。ゴミだの、羽虫だの。それで言うと思うか」

「お前、何か勘違いしてないか。敵意は無かったとは言った。でも、お前の生死なんてどうでもいいんだよ。お前が虫じゃないっていうのなら意味が分かるな」

「…………いいのかよ……知りたい事は」

「その時は他の《ダリオ》捕まえて聞くだけさ」

「…………」

「ああ、いるんだ。僕としてはその反応だけで十分」

「……くッ。《ダリオ》を裏切る気か」

「おいおい、《ダリオ》は盗賊ギルドだろ。綺麗事言うなよ」

「…………」

 

 《黒尽くめ》が押し黙る。

 反論出来るハズがないか。理由なく仲間を殺した男だ。


「さて、ここまで来ると後は手間暇の問題。僕はお前でなくてもいい。でも、お前はそうじゃないよな。もう一度言おうか、僕はお前の敵じゃない。信じろ」

「…………それ。お前の獲物だったのか」


 あたしを見ながら《黒尽くめ》が言う。

 獲物を掠め取られそうになったから怒っているのか?

 その問いに対し、アリスは肩を竦めた。


「ご想像にお任せするよ」

「……そォかよ。くそったれ。だが……同じ《ダリオ》っつーんなら……」


 《黒尽くめ》の態度が軟化している。確かにアリスが敵でないのなら、《黒尽くめ》は助かるかも知れない。だが……なんだか……おかしい。まるで……《黒尽くめ》が。彼自身がアリスの言葉を信じたがっているかのような――あたしはハッとアリスを見た。

 まさか。


「分かったなら答えてくれ。今、聖域はどうなってる?」

「………………《ダリオ》が占拠した」

「だろうねぇ」

「…………そんな」


 薄々察してはいたが……やはりショックだ。


「お前らの人数は?」

「さーなァ。百、くらいか。倍はいたんだが」

「イシュ、聖域の人数は?」

「…………」

「イシュ?」

「……あ、あァ。三百? 四百は……」

「ふぅん。半数が非戦闘員として。それでも同数か。正直よく占拠出来たね」

「ハッ。エルフのスキルはすげぇって聞いたけどよ。そーでもなかったぜ」


 待てよ。聞き捨てならないな。


「いただろ、三賢人が。強弓のテレス。貫槍のオンヴォ。牙剣のカアサ」

「おォ。いたいた。名乗りを上げるバカ。確かそんな名前だったか。ウチの用心棒に斬られてたが。ハハッ――グッ、ゥゥゥ。笑わせんじゃねぇよ、痛てぇじゃねぇか」

「…………ウソだ。あ、あたしは信じないぞっ」


 三賢人。

 エルフで最も武勇に優れる三名の尊称だ。

 特に今代の三名は歴代最強と呼ばれている。武器スキルは8か9だったハズだ。

 アリスは強い。誰にも負けない。そう信じている……が、上には上がいる。

 それが三賢人。

 レベルでもスキルでもアリスの遥か上にいる。もしもアリスが破れる事があるとしたら、その相手は三賢人かも知れない。そう思っていたのだ。それが……負けた?


「――イシュ? シンラのことは? いいの?」


 あたしが呆けている間に聴取は終わっていたようである。

 驚愕が抜けきらず、あたしはぼんやりとしていた。

 だから、先に《黒尽くめ》が答えてしまった。


「あァ。双子の片割れなら……セリオが捕まえてるぜ」

「……セリオ? 誰?」

「………………アリスが倒した……あっ!」


 しまった!

 《黒尽くめ》の顔色が変わる。それを見てアリスは「ああ」と苦笑いをした。短いやり取りで状況を把握したらしい。呆れるくらい、アリスの頭の回転は早い。


「残念。魔法は切れたみたいだ」


 アリスが剣を振り被る。


「おい! セリオを倒した!? どォゆーコトなんだッ!」

「悪いね。冥土の土産は売り切れだ。少し前に大盤振る舞いしてさ」

「そ、その剣はッ! おいおいおいおいィ! マジにセリオはッ!」

「知り合いなんだろ。なら、彼に聞いてくれ」


 あたしが顔を背けるのと同時。

 鈍い音が聞こえて来た。

 音は二度鳴った。


***


 やれやれ、酷い惨状だな。

 テーブルは砕け、カップはひっくり返り、床には亀裂が。台風でも通ったのか。

 やったのは僕なんだけどね。他に手は無かったのかと思う。

 腕力で勝てるなら引きずり出したのだが……残念ながら吸血鬼は脳筋な種族らしい。

 レベルは僕と一緒。ステータスは軒並み僕より下。なのにSTRだけ負けていた。

 吸血鬼が脳筋なだけで僕のSTRは決して低くない。

 とはいえ、だ。

 少し考えさせられた。

 【両手剣】は止めた方がいいかも知れない。

 長所を生かせているとは言い難い。

 チュートリアルでアーティリアが語っていた通り、僕のステータスは平均的な人族の倍近くある。STRでさえ平均より上で、DEXとINTに至っては約三倍である。比較対象は屋敷にいた《ダリオ》の面々だ。

 DEXを生かすなら【短剣】、【槍】、【片手剣】あたりか。まぁ少なくとも【両手剣】という選択肢はない。

 色々な武器に触れる事は悪い事ではないが。

 使ってみる事で分かる事もあるから。

 ま、今後の課題か。

 説明もそこそこに放り出されたから。

 何をするにしても手探りになってしまう。


「イシュ、出よう。血の匂いが酷い」

「…………」


 イシュが無言で頷く。

 やはり刺激が強かったのかな、と思っていると、


「なんで使った」


 家を出るなりイシュがいった。咎めるような言い方だ。


「アリスはそれ、嫌っていただろ」

「まあ、気付くか」


 僕は苦笑する。事情を知る僕が見ていても吸血鬼の掌の返し方は奇妙だった。

 イシュには僕が異世界から来た、という刺激の強い部分は伏せて、旅の一通りを語って聞かせていた。エンバッハと出会い、僕が何を思い、どう行動したかも。

 だから、僕が【詐術】を嫌っている事も知っている。


「嫌いなのは人の心を弄ぼうとする輩で。道具に罪は無いよ」

「あたしのためか?」


 イシュは思い詰めた瞳だ。

 ウソは許さない。そう言っている。

 嘘か。

 果たして何をもって嘘とみなすのか。今の僕なら嘘だって真実に――

 肩を竦める。先走っているな。


「そう。埒があかないと思った」


 正直、イシュが聖域を気に掛けるというのは意外だった。聖域にはいい思い出がないはずだから。もし同族愛に目覚めたから、という理由だったら放っていたかも知れない。

 シンラのため。

 そう考えている事が分かったから【詐術】のクラックに踏み切った。


「もう【詐術】は使わないでくれ」

「それは構わないけど」


 思いの外使い辛いスキルだった。

 【詐術】に出来るのは言葉に説得力を持たせる事だけ。相手に受け入れる土壌が無ければ芽は出ない。何が何でも言いくるめられる、というわけではないのだ。

 物凄く弁の立つ政治家がいたとして。

 涙ながらの演説は心を震わす。

 だが、経歴を見れば真っ黒。

 そんな人を信じられるか、という話だ。

 吸血鬼を騙せたのは運が良かった。


 ――お前も《ダリオ》か。


 僕はこの言葉を、屋敷に引き続きまた《ダリオ》か。そういう意味合いで言った。

 しかし、彼は僕も《ダリオ》だと誤認した。

 だから、【詐術5】で最初のボタンを掛け違えていただけ、と語ってやるだけでよかった。


「二度と【詐術】は使わない。この言葉も嘘かも知れない。それでも信じるかい?」

「言葉なんてどうだっていい。あたしが信じるのはアリスの心だ」


 真っ直ぐに僕を見てイシュは言い切った。

 ……その時の僕の心情を……何と言えばいいか。情けないやら。気恥ずかしいやら。

 顔を手で覆う。指の隙間からため息が漏れる。

 試す体で。

 言葉を欲して。

 ……格好悪いなあ。

 と、落ち込む僕の腹部に衝撃。

 イシュにタックルを食らった……うん? 違うのか。ああ、抱きしめようと。なかなか手が回ってこないから……微笑ましいなあ、と見ているとようやく腕が回された。


「助かった。でも、アリスがツラそうにするのはイヤだ」


 上目づかいにイシュが言う。小動物みたいでかわいい。

 ああ、もうやられた――苦笑するしかない。

 ありがとう、とイシュを抱きしめ返す。

 僕の胸の中でイシュがきょとん、としていた。気に食わないスキルを使ってまで助けて貰ったのに、なんでお礼を言われているのだろう、と。

 暫くして、どうでも良くなったのか、イシュの顔が綻ぶ。

 イシュの頭を撫でる。


 ――イシュ。


 助けられたのはお前かも知れない。

 でも、救われたのは僕なんだ。

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