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(基本的にグロい)刹那的短編まとめ

鏡、仕事しろ

作者: 東龍ベコス

最近、ウチの全身鏡が仕事をしない。


「おい! てめぇ、いいかげんにしろよ!? 俺を映せよ、誰だよ、今カガミに映っている奴!」

今、鏡が映し出しているのは、小太りでバーコードハゲで油ぎってて、少し黄ばんだタンクトップとふんどし一丁の、汚いオヤジである。

俺とは全く、似ても似つかない、というか別人だ。


「うっせーな。知るかボケ。文句あるなら、後ろのちっちぇえ手鏡でも使ってろ」

鏡の中の謎のおっさんが、指で耳をほじりながらしゃべる。

テーブルの上の手鏡を覗きこむ。

中の上くらいの、そこそこ見られる容姿の俺がちゃんと映される。


「……俺は! 全身を映したいの! コーディネートチェックしたいの! 仕事しろや!」

俺はそう叫びながら頭をかきむしった。

しかし、鏡の中のおっさんは無反応で、シカトぶっこいてやがる。


「……仕事しないんなら、捨てるわ」


「……え”」

おっさんが、やっとこっちを向いた。


「割るわ」

俺は、近くにあった木刀(中学の修学旅行の時に土産として買った)を手に取った。

そのまま、鏡に向かって振り上げる。


「うおおおおおお! 待って! 待て! おい!」

おっさんが手の平をこっちに向けてばたつかせる。きめぇ。


「……何故、俺を映さない。あぁ?」

おっさんが、モジモジしながらブルドックみたいな顔を赤らめた。


「……………あ、あんたのイケメンすぎる姿をこの体に映したくねぇんだよ、バカ……! ……じ、自分の体にこんなイケメンが、映し出されるなんて、クソ、なんか、感じちまっ……!」


それを聞いて、南海キャンディー●の山ちゃんが“映写機で、アイドルの姿を全裸になった自分の体に映させて悶えてる”という話をテレビでしていた事を思い出した。

醜い自分の体の上で踊る、ピチピチプリプリのアイドル逹。ウフフフ、ってか。おい。


……うわぁ、同じくらいの変態がすぐ間近に、いた。


「わ、割らないで。ちゃんと、仕事するから。ね? ね?」

鏡のなかのおっさんが、いつの間にか俺の姿に変化していた。

鏡の中の俺が、手を合わせて涙目で懇願している。





……ところで俺は、俺の容姿が好きだ。

なんだろう。鏡の中の泣いている俺を見て俺は……。


「……ん? あんた、どうした。なんで前かがみに?」

鏡の俺が、俺の顔を覗き込む。


「……おい。やめろ、その上目づかい……」

俺……何、俺の泣き顔を見て勃起しているんだ。

えっ、ウソ、マジでか。マジか。


……認めたくないが、自分で勃起してしまう程、俺が可愛いのだから仕方ない。


俺、かわいいよ。俺。



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