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半日常っ!!  作者: カオス
8/19

カラオケと店長と絶対領域

この作品を読んでくださっている方、投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。


これからもテスト等が入ってくるためポンポンと投稿は出来ないと思いますが、続ける気ではいるのでよろしくお願いします


 皆さんは絶対領域とはご存知だろうか?


 絶対領域――それは魅惑的のものであり、男の永遠の憧れでもあり、しかし何者も侵入は許されないもの。

 あの見えそうで見えないという良いジレンマを生み出すスカートから、女性の足をスラリと魅力的に見せるニーハイソックスまでという、女性の二大魅力アイテムに挟まれた太股からなる不可侵領域のことだ。

 そしてその絶対領域には、スカート:太股:ニーハイソックスの四:一:二・五の黄金比が存在する。世間一般ではこれの許容範囲はプラマイ二十五パーセントといわれている。

 が、俺は誤差など認めん。

 この黄金比こそが絶対領域を不可侵領域に変えるとともに絶対領域そのものである、というのが俺の持論だからだ。

 そして、この俺の持論、間違いでは無かったと今ならはっきり言える。

 それは、


「? ……どうかしましたか、幸村君?」


 全体的に白いミニスカートから黒のニーハイソックスまでの間に見える太股を、黄金比四:一:二・五を寸分も違わぬ比率が、完璧なまでの絶対領域を作り出している、俺のクラスで一番、いや、学校で一番と言っても過言では無い美少女、麦野さんのお陰だ。

 今までは学校での制服姿しか見たことなく、まあそれでも充分魅力的な絶対領域は出来上がってた訳だが、私服姿の麦野さんはそれの比では無いくらい魅力的だ。

 それはこの絶対領域が要因な訳だが、今現在出来ている領域は並大抵の者は近付くことすら許されない不可侵領域と化してしまっている。

 これじゃ、世界中のどんな武器を使用しても侵すことは出来ないだろう。


「あっ、すいません。何でも無いです」


 いかん、いかん。思わず麦野さんの太股に看取れてしまっていた。

 ってか俺、それただの変態じゃねえかっ!


「おい、なに麦野の方見てボーとしてたんだよ、ユッキー。もしかして、私服姿の麦野に看取れてたのか? まあ、今日の麦野は普段以上に可愛いからしょうがないとは思うが」


「いやいや、看取れてなんか無いですけどー。まあ、今日の麦野さんが魅力的で可愛いっていうのは認めるけどな」


 野坂に的確に指摘され焦って、咄嗟に嘘で否定してしまった。まあ、プラスαで言った方は全くの本心なんだが。

 とりあえず、太股をガン見していたことはバレてないようで良かった。


「いやっ、でもだからって太股ガン見は無いと思うぞ……」


 野坂っ、てめえ!


「いや、そんな……」


 そういう麦野さんの顔は赤くなっている。可愛いと言われて照れているのだろう。

 本当に可愛いなぁ~、この人は。

 でもスカート短いのにそれを無理矢理引っ張って頑張って太股隠そうとするのはやめてください。ガン見してたのは認めますが、変なことは一切考えてませんって。


「そこの御三方、盛り上がっているところ悪いけど、もう時間なんだけど」


 そう言ったのは日向だ。

 こいつも来ている服は意外とセンスがあり、元々顔が良いこともあってなかなか見栄えがある。

 日向のチャームポイントといえるポニーテールも健在で、それを生かしているコーディネートになっていてなかなか良いと思う。この服装だけ見ればこいつが重度のアニメオタクとは誰も分からないだろうし、ナンパされても不思議では無いな。

 あっ、いや、てか、


「一人だけ遅れて、たった今来たお前が、それを言うな!」


 おおっ! ナイスツッコミ、野坂。それ、俺も言おうとしたやつだ。


「いや~」


日向が左手で頭を掻きながら言う。

 あれ? ひょっとして照れてるのか? 一体今の会話のどこに照れる要素があったんだ?


「一番楽しみにしてたっぽかったのに、一番遅かったね、日向。なんかあったの?」


 そう言ったのは山中さんだ。

 えーと、今日の山中さんが着ているのは……男物の服か……。まあ、そりゃ当然なんだが……女性がスカートとズボン、どちらを履いても別段変では無いのに対し男性がスカートを履くのは通常気持ち悪がられるという不条理で不平等な現状をこの人なら打ち破ってくれるという期待をしていたんだが……残念だ。


 まあ正直言えば、純粋に女性物の服を着ている山中さんも見たいという方が圧倒的に大きい理由なのだが。普通に似合いそうだし。


「いや~、遅れたのはすいません。なんか今日はカラオケもあるし早く寝ようと思ってね、三時には布団に入ったんだけど、興奮してたら全然寝れなくて……。最後に時計見たのは五時だったな……。結局その後ようやく寝れたのは良かったけど、起きたら十二時でさ~。間に合う訳も無く遅れちゃったよ。はっはっは」


「いや、はっはっは、じゃねえよ。笑えねえよ」


「興奮して眠れなかったって遠足前日の小学生かっ!」


「遅っ! 早く寝ようと思って三時に寝たなんて初めて聞いたよ! てか、いつも一体何時に寝てるの?」


 野坂と俺と山中さんによる三連ツッコミコンボだ。

 それにしてもこいつ、僅かな発言の中に一体何個のツッコミポイントを作るというんだ。三人がかりでようやく捌ききれるレベルだぞ。


「んっ、いつも平日は三時半には寝てるけど、休日は五時くらいだよ。まあ、気付いたらもうすっかり日が登ってたなんてこともザラなんだよね~」


「それは流石にやばくない? 一体そんな時間まで何してんの?」


「テレビや某笑顔動画の生放送で深夜アニメ見たり、そのアニメについてBBSで議論したり、動画サイトで昔のアニメ見たりするかな。いや~、本当に深夜はやることが多くて困りますな。はっはっは」


「お前それ、アニメのことばっかじゃねえか。パソコンで動画なんかいつでも見れるし、深夜アニメも録画すれば良い訳だし、もっと早く寝たらどうだ?」


「分かってないな、部長殿は。皆寝静まった深夜に自分は生でアニメを見ているっていうのが良いんですよ。それに何よりアニメ見て寝ないと一日が終わったって気がしないでしょうが」


「いや、『でしょうが』って言われても……正直全然分からん」


 全くの同感だ。

 前のパソコン美学に関してもそうだが、日向の価値観はよく分からん。


「あの……」


「んっ? 麦野、どうしたのか?」


「もう時間とっくに過ぎてるんですけど、まだ行かなくて良いんですか?」


「「「「えっ!?」」」」


 ポケットから携帯電話を取り出し、開いてディスプレイ右上に表示されている時間を確認。うん、これはやばいね。もう十二時半なんかとうに越えている。


「やばっ! 急いで行くぞ、皆!」


 そういえばまだ説明してなかったが、何故休日にも関わらず俺ら求人部が学校外で会っているかというと……それを説明するために、昨日の第一回求人部部活会議の内容を回想することにしよう。


 ということで、時間は遡ること、昨日の放課後。部室でのやり取り。


   ☆★☆★☆★☆


「突然だが、お前ら。俺ら高校生にとって一番大事なものって何だと思う?」


「いや、急に何ですか、あんたは」


 昨日部活創立が決まり一日経った今日、早速決めなくてはいけないことが出来たから放課後に部活会議やるからっ、てことでHRが終わったら急いで部室に集まれ、なんて今日の昼休みに急に言い出すから何かと思って来てみれば何を言い出すんだ、こいつは。


 ちなみに、部室として使っているこの場所は以前コン部が使っていた三階の空き教室だ。

 部屋は結構広い。しかし何故大して結果も残していないような地味な部活にこんな広い部屋が用意されてたのかという疑問も浮かんだが、コン部部室というだけあってそりゃあコンピューターを何台か置くためにある程度のスペースが必要だっただろうから結構広い部屋が必要だったのだろうと自己解決しておいた。

 まあとはいってもコンピューターは全て回収されていて、現在は黒板に窓、人数分の椅子と結構年季が入った縦に長い机が一個に古くさい木の棚が一つぐらいしか無い殺風景な部屋な訳だが、徐々に私物で埋め尽くされたりするのだろうかね。


 それから現在の配置だが、司会を努めている野坂は部屋に入ってそのまま正面奥にある黒板の前に立っていて、入り口側から見て左側手前に麦野さん、奥に俺、テーブル挟んで麦野さん正面に山中さん、俺の正面に日向って感じで座っている。


「遊ぶ為に必要な金、恋人」


「おい、数秒前の俺の発言を丸々カットしたかの如くスルーするな」


「確かにそれも間違いでは無いとは思う。が、俺は違う。俺が一番大事だと思うもの、それは……時間だ」


 そうか、こいつはきっと耳が悪いんだ。

 よし、しょうがない。今度良い耳鼻科を紹介してやるかな。


「この高校生時代という青春の一番大きな一ページは人生で一度しか来ないんだ。それを有意義に過ごさなくてどうする! 思い付いたことは即、とことんやるべきだと俺は思っている」


 なるほど。お前のあの有言即実行主義の理念が今分かったよ。


「ってことでさっき思い付いたんだが、明日求人部創立記念で何かやらね?」


 前置きがマジなだけに何かと期待したら、ただの遊びの誘いかいっ!


「いや、前置きいらなくないか」


「えっ、いやだって、なんかたまに自分の心の中に留めていた理論を人に語りたくなったりすることってあるじゃん」


いや、正直共感出来な……くもない!


「へえ、それは良いですね。顧問も決まって、無事部活創立も決まった訳ですしその祝賀会って感じですね」


 おっ、結構麦野さんは乗り気か。

 あっ、ちなみにこの新設の求人部の顧問をやってくれるような優しい御方というのは、あの校長だ。

 校長なのに色々大丈夫なのかという疑問はあるが、探すのは面倒だしあんまり部に顔出さなくても良いならという、校長のありがたい? お心遣いなので別に気にしなくて良いだろう。

 てか、遂に面倒ってはっきり言っちゃったな、あの校長……。


「確か明日は……特に予定も無かったし、僕は別に良いよ。でもそれって具体的に何やるか案とかあるの?」


「いや、まだ特に決まってないぞ。だから、これからこの会議で決めていくんだよ」


「はいっ!」


 突如発せられたその声のした方を見ると、日向が片手は挙げ、もう片方の手はパソコンの画面を見ながらキーボードを打つなんて器用なことをしていた。

 ちなみにこいつのパソコンの件は、野坂の校長への交渉の末、持ってきても良いが使って良いのは部活時のみでそれ以外の時は出すことすら禁止するということで昨日解決した。

 てな訳で今日から早速持ってきたようで、俺が部室に着いた時から現在に至るまで、ミリ秒単位毎といっても過言では無いんじゃないかって程のスピードでカタカタとキーボードを叩く音がしていた訳なのだが……急にどうしたのだろうか?


「どうした、日向?」


「部長殿、私から意見させて頂きたいのですが、明日のその祝賀会とやらはカラオケでやりませんか?」


「「「「カラオケ!?」」」」


何故にカラオケ!?


「そう、カラオケ。いやぁ~、実は明日は待ちに待ってた最新アニメのオープニングの配信日なんですよ。だから、丁度良いし、カラオケにしましょうよっ! ねっ?」


「カラオケか……。そういえば高校生になってからはまだ行ってなかったし、僕も行きたいかな」


「そういえば、私もしばらく行ってなかったな……。なんかたまに思い出すとまた行きたくなるものですね。それに、少し幸村君の歌声も聞いてみたいです」


「えっ、俺ですか!?」


 いきなり、名前が出てきたからびっくりしたっ。

 てか、いやいや、俺の歌声なんてたかが知れてますし、それに……カラオケか……。


「おい、どうした、ユッキー? 小学校の社会の教科書に出てくる信長のような顔をして」


「どんな顔だよっ!?」


 全然分かんねえ。何だよ、信長のような顔って。


「いや、つまり浮かない顔だよ。なんか暗い顔してたからさ」


 暗い顔のことを信長のような顔って言うの! 聞いたことないわっ、そんなの。ってあるわけ無えわな、そんな野坂語録。

 まあ、とは言ってもこいつは俺を心配して言ってくれたんだよな……。

 そこはありがたいんだが……端から見ても分かる程暗い顔してたのか、俺。


「もしかして私がカラオケで幸村君の声聞きたいって言ったのが嫌だったからですか?」


「いやいやっ、違いますよっ」


 少し悲しそうに言った麦野さんのその言葉を俺は慌てて否定する。

 まああながち間違いって訳じゃないんですが、その言葉は寧ろ嬉しかったですよ。だからそんな悲しそうな顔しないでください。まあ、そういうのは恥ずかしいから言わないけど。


 本当は……


「はっ! もしかして、ユッキー、お前はあの音に対して鈍感なあれなのか!?」


 もうそれ、普通に音痴で良くね? そっちの方が明らかに字数少ないし。

 まあ、めんどいからスルーするが。


「いや、それもそうなんだが、実は俺……カラオケに一回も行ったことないし、いきなり五人で行くっていうのはちょっと……」


 そう、俺は生まれてこのかた、カラオケという日本人の娯楽第一位に、一度も行ったことが無いのだ。

 中学時代に何回か友達に誘われたこともあるにはあったが、全部断ってきた。

 なんせ、大して得意でも無いくせに人前で歌うとか馬鹿げてると思わないか? 俺じゃあ緊張して、気持ちよく歌うなんて到底無理だね。

 しかも今回求人部全員で行くとなると俺の歌を四人に聞かれるということになるが、そんなの俺にとっては拷問も同じだ。


「そういうことですか。でも、なら多分大丈夫ですよ。誰も幸村君の歌を聞いても馬鹿にしないと思いますから。そんな人はこの求人部にはいません」


 随分仲間を信用してるんですね。


「まあ、それはそうなんですが……」


 まあ俺も出会ってそこまで経ってない奴ばかりだけど、そんな最低な奴はいない、それは分かっていますよ。

でもそれが分かってても、やっぱり人前で歌うのには抵抗あるんですよ。


「まあ、別に一人で歌うのが嫌っていうなら誰かとデュエットでもすれば良いし、歌いたくないなら無理に歌わなくても良いんじゃない?」


 そう言ってくれたのは、山中さんだ。

 歌いたくないなら歌わなくても良いっていうのは非常にありがたいお言葉だ。

 ってことは、俺は一応祝賀会には参加するけど、現代を生きる若者のカラオケ実態調査という名目で、傍観でもしてれば良いってことだよな。


「そういうことなら私にお任せください。しょうたんとのデューエットは、私めが引き受けさせて頂きまあーす」


 日向は相変わらず指を動かしながら顔だけ動かして言ったその言葉に、ウインクも付けてきた。

 てか、もしかしてしょうたんって俺のことか? 日向とはいえ、一応女の子だし、少し照れるじゃねえか。恋人に呼んでもらってるみたいな名前だし。

 あっ、てか、いやいやそうじゃなくて、俺は一人で歌うとかじゃなくて人前で歌うということ事態が嫌な訳で……


「お前は、何を勝手に――」


「ってことだ、ユッキー。俺も含めて皆行きたがってるし、もうカラオケで良いだろ? それともなんだ。お前はこの期に及んで、まだ行きたくないとか言い出すのか?」


「しょうたんなら、空気読めるよね?」


 こいつらうぜー! はなっから俺の意見なんか聞く気無かったな。是が非でも俺をうんと言わせる気だろっ。

 てか、こんなん言われたらもうなんか嫌なんて言えねえじゃねえか。

 それから日向、お前に至っては俺の何を知ってるんだよ。

 はぁ……ったく、しょうがねえか……。


「はあ……しょうがないし良いよ」


 本当は嫌だけどな……。

 ったく……空気読めすぎるってのも辛いぜ。


「オッケーイ。ナイス、ユッキー。これで、明日カラオケ決定だ!」


 ああ、良かったですねっ!

 ……ったく忌々しいやつめ。


「そういえば野坂、カラオケ行くのは良いけど、どこのカラオケ行くの?」


 山中さんが質問する。


「おっ、そういえば全く考えて無かった」


「ふっふっふ……それなら私にまっかせなさーい。料金、設備がなかなか良くて私的ランクAAAトリプルエーのお気にーな店を紹介してあげるんで」


「そこ、どこにあるんだ?」


「この学校から坂越えたとこらへんにあるであります!」


「なら、明日の十二時半に、あの坂を越えたところにある公園の噴水前に集合で良いな?」


 窓から坂に向けて指を指しながら野坂が言う。

 ああっ、それなら知っている。家から結構離れているため、この学校周辺の地理的な物はまだあまり理解していないが、噴水のある公園なら登下校時によく見かけるからな。


「「「OKっ!」」」


「俺はもうどうでも良いよ」


「よし、決定だっ! それじゃあ皆、明日遅れるなよっ。ってことで、これにて第一回求人部部活会議終了だ!」


  ☆★☆★☆★☆


 てなやり取りがあったわけで、つまり俺達は今日向お薦めのカラオケ店に向かっている、っていうか今着いたところだ。

 それにしても時間無いからってかなりの速度で自転車乞いできたが、あまり疲れてないのは毎朝の強制日課運動のお陰だろうか? こんなところで少し効果実感。


「ハァハァ……はい、着いた。ハァハァ……ここが私一押しのカラオケ店ね」


 息絶え絶えで日向が言う。

 ほぉー……これがカラオケ店ですか。店の外装はきれいだし、上部に着いている店の名前を書いている看板、あれ電飾看板っていうんだよな。あの夜になったら光るやつだ。あれが付いてるなんて、いやぁ~、豪華だね。こんなまともなカラオケ店を見るのは初めてだ。

 というのも、俺の家の周りにも一応カラオケ店といえるものはあるにはあるが、台風どころかちょっと強い風が来たら倒れるんじゃないだろうかって程ボロくさいもので、小さい頃から近所に住んでた俺でも中二の時ようやくその何かの施設だと思っていたものがカラオケ店だと知ったというオチがある程だ。


「予定より遅くなっちまったけど、大丈夫なのか日向? お前が予約した時間とっくに過ぎてるぞ」


 時間確認。

 この店は休日はよく混んでるから予約無しじゃ入れる可能性が低いということで、日向が念には念をいれて昨日の内に予約しといたらしいが……確かにその時間を二十分程過ぎている。

 カラオケに行ったことないからよく分からないが、こういう時って普通俺らの予約消されたりするのかね。


「結構やばくね?」


 とは口で言いつつも、別に俺は中止になっても良いんだけどな。寧ろ嬉しいかな。


「予約を取り消されたりするかな」


 心配そうに山中さんが言う。


「ああ、そこら辺は大丈夫。さっき店長に電話しといたから。三十分以内ならなんとかしてくれるらしいよ」


 日向がふぅっと息を落ち着かせて言う。

 いやいや、待て待てっ。今、別段おかしいところが無いかの如くさらっと言ったが、今の発言絶対おかしいからな。だって店長に電話ってなんだよっ! 店に電話ならまだ分かる。普通だ。でも、店長に直接電話は聞いたことないわ。つか、何で番号知ってんだよ。


「よし、ナイス日向! よっしゃー、じゃあ行こうぜ、皆」


 あれっ、誰も指摘しないのか? いや、皆変だということに気付いてないだけなのか? それともこれって普通で俺がおかしいだけなのか?

 ……あれ、俺が間違エテル?

 それにしても、はあ……まさか俺がカラオケ店に入る日が来るとはね……。つい三日前ならカラオケに来ることなんて一生無いと思ってたんだが……。人生っていうのはよく分からないもんだね、本当に。


「わあ~、この部屋広いですね」


「本当だ。今まで僕が行ってきたカラオケの中で一番広いわ、ここ!」


「まあ、でしょうね」


「なんでお前が威張ってんだ?」


 中に入った後、受付は日向がさっさとすませ、今部屋に着いた訳だが、いやぁ~、確かに広い。カラオケに一回も行ったことない俺でもこの部屋が特別広いことぐらいは分かる。それに部屋の奥に置かれているテレビもでかい。金持ちが買ってしまう、あの部屋のスペースをかなり奪う無駄にでかいテレビぐらいの大きさはあると思う。


 とまあこんな感じで絶賛されているこの部屋なんだが、この部屋はこの店の中で日向の一番のお気に入りの部屋らしく、それは受付の時に日向が店員に「部屋はどうしますか?」と聞かれた際に、「いつもので」と、どこぞの刑事ドラマで主人公が行き着けの店に行った際にマスターにモーニングコーヒーを頼む時ぐらいにしか使われない、現実ではなんとも汎用性の低い言葉で返したことからも分かるだろう。

 ていうかこいつ、そのことといい、受付の際に二十歳ぐらいの男性店員のことをヨシ君とか呼んでたうえにタメ口だったことといい、絶対常連だろ。それに店長の番号も知ってたしな。

 ん~、……俺の予想では週五とみた! と思ってさっき本人に聞いてみたら、最近はそうでもないが中学の頃はよく週八は行ってたと、予想の斜め上を行く答えが返ってきた。

 つか、週八って一日に二回以上は行く日があるってことだよな。……なんかおかしくね? いや、結構普通なのか?


「そんじゃまっ、改めて、求人部創立記念祝賀会、始めますか」


「「「「おー!」」」」


「まあ、とりあえず時間も惜しいしさっさと歌っちゃいますか。じゃあ……まずは、私が歌っちゃってもいいのかな?」


 日向がマイク使って某電話ショッキングの真似をして言う。


「「「いい「いやっ、俺が歌う」とも~!」」」


 んっ? 若干一名、暗黙のルールを破ったやつがいる気がしたが、気のせいか。


「じゃあ、いくぜっ。レッツアニソンパディー!」


「おい、普通にスルーするな。俺も歌いたいんだよ……って、もう曲始まったしっ!」


 そう言う野坂を相変わらずスルーして歌う日向だが……やはり上手いな。流石週八行ってただけのことはある。

 でも、歌ってる曲は知らないな。もしかして昨日言ってた今日配信のアニソンってこれか? なんか、う~にゃ~、う~にゃ~、連呼してるが……。

 ちなみに、さっきまで文句を言っていた野坂とそれから山中さんも一緒になって歌っている。

 はあ……なんかダンスなんかもしちゃって、凄い盛り上がってますな~、あの御三方。


「幸村君楽しんでますか? せっかく来たんですし、初めてのカラオケ、皆と楽しんでいきましょうね!」


 麦野さんが一人ボーッと三人を観戦していた俺に気を使ってくれたのか、話かけてきてくれた。


「ええ、まあ……それなりに楽しんでますよ」


 まあ、本音を言えば、後でどうせ日向とデュエットやらされるだろうし、二人とはいえ歌わなきゃいけないことには変わりはないから、ここ来てから緊張しかしてないんですがね。


「そうですか。なら良かったです」


 私服だからか、いつもより可愛く見える笑顔で麦野さんが言う。

 くう~……なんか嘘ついた罪悪感が襲ってくる~!

 とまあ、そんな話をしていたら、日向の歌ってた曲が終わった。

 って、うおっ! 消費カロリーとか出たよ! カラオケってそんなのも教えてくれんの! 女性に優しいな、機械のクセに。


「よし、ようやく俺の番だな。じゃあ、曲いれるかな」


「あっ、それなんだけどね、部長氏。私……もう曲いれちゃった。てへっ」


「はあっ!? てへっ、じゃねえよ。現実でそれ言ってるやつ初めて見たわっ! てか何でお前、二曲いれてんだよっ! 連続は無しだろ!」


「いやっ、まあ悪いけどさあ~、もういれちゃったんで次にしてもらえる?」


「うわっ、うぜぇ!」


 いや~、騒がしいねー。これがカラオケの実態なのか?

 人前で自分の歌を披露するなんて恥しか残らないであろうに、何故人はこれほどカラオケで騒げるか、今の俺にとっては授業中に大声で話すやつの気持ちくらい分からないね。


 はあ……つか、なんか段々緊張で腹痛くなってきたなあ。トイレにでも行くかな。

 ……あっ、一応誰かに言っといた方が良いよな。ってことで麦野さんに言って俺はトイレに向かった。


 十分ぐらいで用を足して部屋に戻ると、日向の歌はもう終わっていて野坂が歌っていた。

 ……あいつ、ようやく歌えたんだな。

 おっ、ってかこの曲知ってるぞ! あの人数が多い人気アイドルグループののヒット曲だ。しかも、本人映像流れてるし。

 こういう大きいテレビで映像が見れるのは良いねっ! それになんか、自分の知ってる曲が来ると地味に嬉しいもんだな。


「ふう、終わった。――おっと、まだ誰もいれてないのか。じゃあ、俺まだ歌いたい曲あるしまた歌って良いか?」


「ちょっと待ってくださいよ! 私も歌いたいですし、部長氏は今歌ったんですから、今度は私に歌わせてくださいよ」


「お前も連続で歌ったんだから良いじゃねえか! ってか、回数的にお前の方が一回多いだろ」


「いやいや、今日はかなり歌いたい曲があるんですよ。だからお願いしますよ、部長さん。ここは、この可愛い部員に歌わせてください」


「ああっ、そうだな。俺らばっかじゃ悪いし、麦野にも確認しないとな」


「イッツミー」


「おっ、何だこいつ、急に英語で喋りだしたぞ!」


「可愛い部員って私でしょうが!」


「俺と日向ばっか歌って悪かったな、麦野。お前も歌うか?」


「さっきの仕返しかっ!?」


「あっ、じゃあ、はい。歌います」


「おっ、歌うんだな! 頑張れよ、麦野」


「頑張ってね、麦野ちゃん」


「ことみん、頑張ってね」


 皆が、麦野さんに激励を送る。……まあ一人、初披露のニックネームで呼んでるやつもいるが。

 てか、ここはやっぱ俺も何か言葉を送るべきだよな。


「麦野さん、頑張ってください」


 皆の応援に対して麦野さんは、皆の顔を見回すように半周して最後に俺の顔で止まり、笑顔で答えてくれた。


「はいっ!」


 ってな訳で、五分程麦野さんの歌が続いた訳だが……結論から言おう。

 ――この人、絶対素人じゃない。


 歌った曲は結構古いが有名な曲なのだが、この人レベルが違いすぎる。並以上の歌唱力と綺麗な歌声からはあんまり音楽を聴かない俺でもこれが平凡じゃないというのが分かる程だ。他の人も呆然としてる。


「いやぁ、久しぶりに歌うと気持ち良いですね!」


 そんな空気におそらく気付いていないであろう、麦野さんが言う。


「いやいや、凄すぎだろっ!」


「うっわ……上手いね、麦野ちゃん。素人がこんな上手く歌ってんの初めて聴いたよ」


「まあ、私のちゅぎくらいにしゅごいんじゃない!?」


 いや、それは無いし、動揺しすぎだろ。噛みすぎだし。


「いや、その……ありがとうございます」


 おっ、また照れてるな、麦野さん。結構誉められるの苦手なタイプなんだな。

 てか、そのキャラ攻撃力高過ぎでしょ。


「さて、次は山中、歌うか?」


「良いの!? ってあー、でも今の麦野ちゃんの歌の後じゃ、少し歌いづらいかな」


「はうっ!すっ……すいません」


「いやいや、気にしなくていいよ。冗談だから」


 で、今度は山中さんが声援をもらい歌った訳なんだが、この人もなかなか上手い。勿論麦野さん程では無いが、充分『普通に上手い奴』のレベルに入っている。

 それから歌詞の中での一人称が私になっていたけど、この人が言っても大して違和感無いどころか、寧ろそっちの方がしっくり来るから不思議だ。

 しかも心無しか、所々歌声も男が出せないような女声っぽく聞こえた気がしたし、やはり山中性別詐称疑惑は正しいのかもしれない。


「飛鳥君、上手いですね!」


「あっ、ありがとう……」


 悪いですが、麦野さん。あなたが言っても嫌味にしか聞こえませんよ。

 山中さんも微妙な顔してるし。


「山中もなかなか上手いな。途中でちゃんと男らしい声も出せていて良かったぞ」


「いや、男らしい声って、そりゃ男だから当たり前じゃない!? ってか、男らしい声も、ってどういうこと!? その言い方だと普段の僕の声、女声が基本っぽいじゃん」


 あれっ、でもよく思い返してみたら、普段から女声っぽかったような……。


「まあ、私の次くらいに凄いんじゃない?」


 今度は自信ありげに言ってる日向だが、そんな大して差はないと思うんだが……。


「さて、じゃあいよいよ俺の番だな」


「えっ! いや、次は私の番じゃないの?」


「何もう決まってたかの如く言ってんだ! 次は俺だろっ!」


「いえ、私です」


「俺だっ!」


「私だっ!」


 なんだ、これ。さっきから聞いてるとこれ高校生の言い合いのレベルじゃねえだろ! 最早小学生高学年レベルの喧嘩だよ。

 ていうか、最後の日向の『私だっ』って言い方、どこかで聞いたことあるような……?


「はあ……ったく、しょうがねえな。じゃあ、お前歌って良いよ」


「ふんっ、当然よっ!」


「うわっ、ツン来たっ!」


「ま、まあ、でも一応感謝はしておくわ。あのっ、その……あっ、ありがとね」


「デレ、来た~!」


 マジでなにやってんだ、こいつら!


「そういえば日向、お前さっきからアニソンしか歌ってないけど、アニソン以外歌えないのか?」


 野坂が急に話を変えて日向に聞く。

 どうしたんだ、いきなり?


「いや、一応歌えないことは無いですが……正直アニメに目覚めてからはアニソン以外は歌う気にはなれませんね」


「そうか。……いや、ふと今思い出したんだけどな、前にテレビでカラオケで一緒に行きたくない奴ランキングっていうのやってて、その上位にアニソンばっか歌う奴っていうのが入ってたからさ。まあ、俺達はそういうの気にしないが他の人と行く場合は気を付けた方が良いた方が良いんじゃないか」


「まあ、そういう人もいますよね。でもそんなことでどうこう言うような人なんかこっちから願い下げですね」


 あれっ……なんか、日向……少し怒ってる?


「ていうか、まずアニソンというジャンルが下に見られてるのが気に入らないですね。そうしてアニソンばかり歌う奴やアニメばかり見ているやつはオタクとして一括りにして大抵の奴は侮蔑する。それが私は許せない。そいつらだってポップスばかり歌ったり、自分にもこれが絶対に好きだっていう何かがあって何も私達と変わらないはずなのに。それにアニソンにも名曲、いや、神曲と呼べるものは多数あるんです。なのに、それを知らないなんて可愛そうでしょうがない。人生の半分は損してる」


 いつにも増して饒舌だし、やっぱり怒ってるようだ。

 俺はそういう特に好きなものっていうのが無いから気持ちはよく分からないが、好きなものを馬鹿にされた感じがして嫌だったのかね?

 でも、本当にそれだけだろうか?

 なんかよく分からないが、さっきの話し方には怒りだけではなく悲しみも混ざっていた気が……。まあ、ただの直感なんだが。


「あっ、いや、あの……取り乱してしまい申し訳ありません」


 ……ようやく冷静になったか!

 それにしても、本当に何だったんだ、今の。


「いっ、いや……俺も変なこと言ってすまん。悪かった」


「まっ、ともかく私が言いたいのは、アニメは日本の誇るべき文化であり最高の文化である! サブカルチャーなんかじゃない! メインカルチャーである! ってことと、その最高文化を引き立てるアニメソングは云わば脇役であり、これなくしては最高文化なりえないという代物ってことです」


「「「「おっ、おー!」」」」


 ヤバイ、自然と手が動いて拍手してしまった。しかも俺だけじゃなく全員だ。

 まっ、それほど凄い熱弁だったということだ。いまいち共感出来なかったが、アニメへの熱意だけはよく伝わってきたぜ。


「どうも、どうも。――ってことで、気を取り直して行くぜ野郎共!盛り上がっていくぞっ!」


「「「「おーっ!」」」」


 っておいおい、つい反応しちゃったけど、どこのロックミュージシャン気取りだよ。


「じゃあ、行きます。GOD――」


 日向がギター引いてる感じで自分の体の前で指を動かしながら絶賛熱唱中のその曲は俺も知っているものだった。

 これはアニメを見ていたからな。いや~、懐かしい。今、この曲と共にアニメ映像が流れているが、バニーを着ながら歌っている団長とか見たな~、テレビで。うっわ、すげえ懐かしい!

 なんか盛り上がってきた~!

 興奮した俺は腕を上方に伸び縮みさせるなんてことをいつの間にかやっていた。

 そしてそんなことを五分程続け歌が終わった後、マイクで日向が語りだす。

「ふぅ~。えー、今回は時間が無くて二曲しか歌えないんだ。でもちゃんと聞いていってね」


「うわっ、勝手に二曲目始めちゃったよ! ってまあ、もういいや! 歌え、歌え!」


「では、LOST――」


 とまあこんな感じで、何故かその後も日向がマイクを独占し、最早日向のアニソンショーと化してしまったカラオケはどんどん進んでいった。

 しっかし日向が俺らも知ってるような有名な曲を結構歌ってくれたお陰で結構、いやかなり盛り上がった。

 主人公が小さくてオタクなアニメのオープニングに使われたセーラー服の歌とか、団長及び団員によるダンスの映像が流れるユカイな歌とかな。

 いや~、歌わなくて良いならカラオケって楽しいね。ビバっ、カラオケ!


「あのっ、すいません。私用事あるので先に帰って良いでしょうか?」


 日向が歌い終わったところで、麦野さんが突然立ち上がって皆に聞こえる声で言う。

 時間を見ると、五時だ。まだもう少しいれるけど、用事があるなら仕方ないか……。

 てか、なんか申し訳なさそうに言ったけど、俺達が盛り上がってるのに水を差す感じがして嫌だったのだろうか。用事あるなら仕方無いし、気にしなくて良いと思うんだが、まあやっぱり優しいね、麦野さんは。

 それにしても、麦野さんがいなくなるとなんか寂しくなるし、それにプライベートではあまり会うことは無いだろうから、この貴重な私服姿をまだ目に焼き付けておきたいんだが……残念だ。携帯で撮りたいけど、撮らせてくださいとか頼みづらいしな……。


「そうか、帰るのか、麦野。まあ、用事ならしょうがないな。でも、後十分いれるか?」


「まあ、十分ならギリギリ大丈夫ですけど、何かあるんですか?」


「お前、今日あんまり歌ってないから、最後に一回歌ってもらおうと思ってな。それに……」


野坂がこっちを見てニヤッと笑う。

 何だ今の、不適な笑みとネットで調べたらサンプル画像で一番最初に出てくるような顔はっ!? とてつもなく嫌な予感しかしてこないぞ!


「ああっ、なるほど……」


「遂にその時がっ……!」


 山中さんと日向も同じような顔だし!

 つか、日向に至っては遂にその時がってどの時がっ!? マジで嫌な予感しかしてこないんだけど。

 ……ここは一旦トイレに逃げこむか? いや、あいつ逃げたなっとか思われるのも嫌だし……くそ、どうすればいいんだ!?


「ありがとうございます。じゃあ歌わせてもらいますね」


 麦野さんが相変わらず綺麗な歌声で歌っているが、緊張のせいであんまり耳に入ってこない。

 おそらく……おそらくだが、麦野さんが歌い終わったら次は俺が歌わされる気がする。

 ・・・しょうがない。人の目なんか気にしてたまるか! 俺はトイレに逃げるっ!

 と思い立ち、立ち上がったところで麦野さんの歌が終了する。

 しまった最悪のタイミングで立ち上がっちまった!


「あれっ、どうしたユッキー? 急に立ち上がって。もしかしてお前……」


 くっ、このままじゃヤバいっ! ここは無理矢理にでもトイレに――


「いやっ、ちょっと腹がいた――」


「さて、遂に来たぜ! 私、日向としょうたんによるアニソンデュエット! 曲は私めが選択いたしました」


 日向、てめぇー!


「待てっ! 俺は歌うなんて一言も――」


「では、日向葵と幸村照太による初デュエットで、曲はあの有名なロボットアニメのオープニングです」


 山中さ~ん!


「しょうたん、トイレに……逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ!」


 うわっ、うぜーし、腹立つし、恥ずかしー。

 てかそれ、本来自分に言い聞かせるもんだろう。


「幸村君、頑張ってください」


「頑張れよ、ユッキー!」


 くっ……もう歌うしかないというのかっ!

 やべー、心臓の鼓動がどんどん強くなっていきやがる。治まる気配がないわ、これ。

 ってか、うわっ、もう曲始まった!

 もっ、もうどうにでもなれー!


「「……ざーんーこくーな――」」


 ……あっ、あれっ? んんっ? ……これ意外と……いける?


「幸村、もっと声出して!」


 山中さんに言われて、自然と声を大きくしてしまった。

 凄い熱唱してる日向の声が大きすぎて俺の声があんまり聞こえてないからっていうのもあってあんまり恥ずかしくないし、それになんか意外と……気持ちよくねえ?


「「なーれ!」」


ここで暫しの間奏。


「幸村、いいよ、いいよ!」


「幸村君、その調子で!」


 あれっ? いつの間にか俺の声結構大きくなってた? 皆に聞こえるぐらいの音量で歌ってたつもりは無いんだが……。



その日向の発言のあと、すぐに間奏が終わりまた曲が始まる。そして気付けば俺は熱唱していた。


 いや~、これはもう認めよう。カラオケって良いね! 一人で歌うのはまだ無理かもだけど、デュエットなら……って、あれ? なんだ日向の奴。急に歌うのやめて。これじゃ、俺が一人で歌……わなきゃいけないじゃねえか!


「さあ、しょうたん、少し一人で頑張って!」


 くっ、こいつ一人じゃ恥ずか……って、あれ? 一人で歌っても別に恥ずかしくない!? ってか、すげえっ、俺一人なのに熱唱してる!


「最後らへんでまた私も入るから」


 その後も熱唱を続け、最後は日向とフィニッシュ!

 一回歌っただけなのに結構疲れたっ! でも、カラオケって・・・


「普通に歌えてるじゃん!」

「なんで、今まで歌わなかったんだよ、ユッキー!?」


「まあっ、私の邪魔をしなかっただけ良かったんじゃない!」


「幸村君、上手かったですよ!」


 カラオケって、最高だー!!


その後麦野さんが抜けたが、制限時間の八時まで求人部創設祝賀会は続いた(勿論俺も本格的に参加して)。



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