らぶばり
「うっわ〜!!寝坊した〜!!」
階段から駆け降りてきたのは、この『幸福寮』の住人、和泉優子であった。
「学校初日から最悪〜!!。なんで目覚まし鳴らないのぉ!?」
などと言いながら、玄関に出る。
「優子遅い〜!!」
「ごめん美優。」
友達の美優である。
「学校、急ぐよ!!」
綺麗な木漏れ日の中、二人は走る。
「あのさぁ、美優。」
「何?いきなり。」いきなりなので美優はとても驚いていた。
「私・・・告白しようと思ってるんだ・・・」
「その事聞いたの、23回目だよ。」
「違う。24回。」
「5組の松田君だっけ?何であんな平凡な人がいいの?」
松田尚はパッとせず、小説でも読んでそうな、顔つきであった。
「平凡じゃないよ!!話す事が少しヲタクっぽくて、友達もヲタクだし!!」
「ヲタクじゃん。」
少し呆れた美優であった。
「いいじゃん。私告白する。告白の方法は、どんなのがいいと思う?」
「こういう場合、アニメや漫画だと、やっぱり手紙で呼び出して告る。かな?」
「うーん・・・」
キーン、コーン、カーン、コーン・・・予鈴がなった。
「やば!!急ぐよ!!」
「待って〜。美優〜。」
昼休み。
「どうするか考えた?」
興味津々の美優。
「うーん・・・呼び出して告白しようと思う。」
「じゃあいまから取り掛かろ!」
「うん・・・」
そして放課後。
「遅いなぁ。優子さん。何の用だろう?」
少し天然の尚。
「ごめん。遅れちゃった。」
「大丈夫。でも早くしてね。これからサークルの集まりがあるから。」
やはり天然の尚。尚は『現代視覚文化研究会』の会員なのである。
「うん・・・。尚君は好きな人いるの?」
「うーんと・・・セイラさん。」
またマニアックなところを付いてくる。 「アニメじゃなくて、本物。」
「いないよ。」
「そぅ・・・じゃあ今から話す事、ちゃんと聞いてね!!」
「うん?」
優子の気迫に、尚はびっくりしていた。
「前から・・・ずっと前から・・・尚君のことが・・・」
肝心な所でつまずく優子。
「何?」
「好きだったの!!」
「え・・・?」
何が何だかわからなくなった尚。
「小学校の時、私が公園で転んでケガした時、尚君がおぶってくれて・・・その時から好きだったの!!」
心の中の気持ちを全て伝え切った優子。
「尚君!!私、尚君が好き!!私と付き合って下さい!!」
遂に言った。っと優子は思った。
「え・・・?」
まだ何もわからない尚。 「・・・」
優子が目をつむる。
「優子さん・・・こんな僕でよければ。」
「尚君・・・」
優子の目から涙がこぼれる。 「泣かないで、優子さん。・・・そうだ!!今度の日曜デートしない?」
「うん・・・。ありがと。」
泣いていて上手く喋れない優子。
「じゃあ近くのデパートで買物しよ!!」
「うん。・・・それと・・・」
何か言いたげな優子。
「何?優子さん。」
「一緒に帰ろ。あと優子でいいよ。」
「じゃあ帰ろぅ。・・・優子。」
少し照れ臭そうに優子の手を握る。
「尚君の手、暖かい。」
「そうかい?ありがと。」
「それと・・・サークルはいいの?」
「いいと思う・・・。」
まだ、ぎこちない仲だけど・・・頑張って私たちだけの『LOVE VARIATION』(恋の変化)を作っていきたい・・・。