君は、思った以上に僕が好き
***BL*** 僕の婚約者には、親しい女性がいる。自信のない僕。 ハッピーエンド
僕の婚約者が浮気をしている、、、。
浮気、、。浮ついた気持ち?
なるほどね。浮かれちゃってるんだ。
最近、彼の横にいるのは可愛い女の子。
彼も満更では無い様だ。
ま、良いけどさ。その子が好きなら勝手にすれば良い。僕には関係無い。
どうせ、親が決めた婚約だ。彼がこの婚約を納得出来ないと白紙にするなら、それに従うしか無い。
そう思いながら、僕の胸はじくじくと痛む。
彼の事が好きだ。ずっと前から好きなんだ。
でも、僕は自信が無い。だから、彼の前に行っても上手く話しが出来ない。元々、人と話すのが苦手な上に、人見知りなんだ。
ランチルームで、彼を遠くから見るだけで充分だし、彼が誰と仲良くても関係無かった。
「オスカルッ!」
彼は遠くから僕を見つけると、大きな声で呼んでくれる。周りの生徒が振り向き、一瞬僕を確認する。皆んなの視線が集まるのが怖い。彼と僕では友達と言うにはタイプが違い過ぎるから、、、。
彼は僕に近付き
「今日も沢山本を借りたんだね」
と微笑んでくれる。僕は緊張して
「うん」
しか言えない。
「今度一緒に遊びに行こう」
何度か誘ってくれたけど、実はまだ一度も二人で出掛けた事が無かった。
多分社交辞令、、、。
もし此処で、僕が「いつにする?」と聞いたら、彼は困ると思う。だから、僕は声を出さないで、ニコリと笑う。
「エゼキエル!」
彼の友達に呼ばれて、彼は行ってしまう。
でも、一言でも話しが出来て良かった、、、。
放課後、彼は友達と勉強をしている。
僕は、教室の外からそれを見ながら、廊下をゆっくり歩く。
木の廊下を歩く足音が心地良い、、、。
彼は少し俯き気味だった。髪がサラサラと顔に掛かると、目の前の女の子が彼の髪に触れる。
彼が視線を上げると、彼女は何かを話した。
綺麗な彼と、可愛い彼女、、、。お似合いだな。
彼の隣の席の友達が、僕を指差した。僕は見ていないフリをして、彼の視界から逃げた。
あの中に僕も入れたら良いのに、、、。そう思いながら、やっぱり無理だと考える。
小さくて細い身体、、、。僕もいつか、彼みたいに身長が伸びて、身体も大きくなるのかな、、、。
*****
僕は、この学園が好きだ。
友達はいないけど、庭には沢山の花が咲いている。花が咲いているから、色んな虫がいるし、小さな動物もいる。
木造の校舎は古いけど、何だか親しみがあって気に入っている。
渡り廊下には屋根がある。僕は、雨の日にそこを通るのも好きだ。
一番のお気に入りは図書室で、薄暗いずっしりとした空気が、不思議な感じ。
僕の他にも図書室が好きな人はいて、勿論お互い声を掛ける事なんて無いけど、この場所は何時間でもいられる位、好きな場所だ。
僕はいつも通り、お気に入りの席で本を読んでいた。二階席の窓際。窓を開けて、風を取り込み、遠くから聞こえる外の音を聴く。
ふと窓の下を見たら、エゼキエルとあの女の子が歩いている。
相変わらず距離が近いな、、、。と思いながら、眺めていた。
*****
天気の良い日、僕は学園の庭をフラフラしていた。
エゼキエルとあの子が抱き合っていた。
何だ、エゼキエルもやっぱり彼女が好きなんだ、、、。そう思いながら、来た道を戻った。
*****
僕がランチルームの窓際で昼食を摂っていたら、知らない男の子が隣に座った。
「あの、、、」
僕が振り向くと
「その上から二番目の本、いつ返しますか?」
と聞いて来た。
僕は一番上の本を避け、2段目の本を確認した。
「今日返すけど、、、?」
「昼休みに返しますか?」
「あー、、、放課後かな、、、」
僕は、食事にかなり時間が掛かるから、図書室に行く時間は無かった。
「その本、ずっと借りたかったんです。いつも誰かが借りていて、放課後返しに行く時、一緒に行っても良いですか?」
「別に構わないけど、、、」
「良かった、貴方が返したらすぐ借りられる」
本当に嬉しそうだった。
「じゃあ、放課後、図書室の前で」
そう言うと、彼は自分の席に戻って行った。
友達と食事の途中にわざわざ来たんだ。よっぽど借りたかったんだな。
*****
放課後、図書室に向かおうと廊下を歩いていると、肩をポンッ!と叩かれた。
ランチルームの彼だった。
「後ろ姿が見えたから」
にっこり笑う。彼は人見知りとかしないんだな。
僕なんて、エゼキエルと話すだけで緊張するのに。
僕達は、二人で図書室に行った。僕が返却をすると、彼はそのまま受付で借りられるか確認していた。
彼は、その本を借りる事が出来た。ずっと読みたくていつも探していた本。彼が借りる事が出来て、僕も何だか嬉しかった。
*****
その日を境に、ルイスと挨拶を交わす様になった。
僕が図書室で本を読んでいると、ルイスが机を小さく叩いた。僕が顔を上げると、手を振ってくれる。
**********
オスカルに挨拶をする、知らないヤツ。
その存在に気付いた。
今まであんなヤツ、いたかな?
彼が手を振ると、オスカルも小さく手を振り返す。
まるで、秘密の恋人同士みたいだ。
何だか嫌な気分、、、。
**********
階段の踊り場で、エゼキエルと彼女が話している。
古くて広い階段。大きな窓。僕は一番下から彼等を見た。
窓から入る光が彼等を照らし、幻想的だった。
僕は足元を見ながら階段を上り、横を通り過ぎる。
「今度、誕生日プレゼント」
と彼女が言っていた。
階段を上がる僕。下から彼の視線を感じる。最後の一段を踏み外して
「わっ!」
と大きな声が出た。
みっともなくて、恥ずかしくて、思わず顔が赤くなる。
走ってはいけない廊下を走り、その場から逃げた。
踊り場の二人は、柔らかそうなブロンドの髪だった。綺麗な二人。
僕の髪は丈夫そうな黒いストレート。いつも前髪を長めにしている。あまり人に顔を見られたく無いから、、、。
僕は眼鏡を外す。ポケットからハンカチを出して、それを拭いた。溜息を一つ吐くと冷静になった。
彼女が「誕生日プレゼント」って言ってた、、、。二人で買い物にでも行くのかもな。
*****
放課後、つい街に来てしまった。エゼキエルと彼女がいるかも知れない。そう思ったら何と無く、寄り道をしてしまった、、、。
二人が一緒にいる所を見たら、イヤな気分になるのが分かっているのに、どうしても探してしまう。
石畳の街を歩き、ゆっくり探す。心の中では、焦っていた、、、。
彼と彼女は、二人でアクセサリーを見ていた。並んだ二人は楽しそうで、彼もアクセサリーを取ると、彼女の耳に当てたりしていた。
僕の視線が強すぎたのか、彼が僕に気付いてしまった。こちらに来ようとしている。バカだな、こんな街中で女性を一人にして、何かあったらどうするんだ。
僕も彼に近寄った。
「オスカルも買い物?」
「うん」
「カリーナ嬢もいるんだ。オスカルも一緒にどう?」
「、、、デートの邪魔をしたく無いから、、、」
「デートって!。俺がデートしたいのは、オスカルだけだよ?」
口が上手いな、、、。と、思った。
「、、、女性一人にしたら、、、あ、危ないよ?」
「うん、そうだね。次に街に来る時は声を掛けて。一緒に回りたい」
僕は口元を上げ、頷く。彼は僕の頭をポンポンと叩くと、彼女の元へ戻って行った。
***********
俺の婚約者は、黒髪黒目の、同じ歳にしては身体の小さな男の子だった。ストレートの髪で目を隠し、眼鏡を掛けている。
俺は彼が好きだった。でも、彼は静かな子で、俺が友達と彼に話し掛けると、驚いて固まってしまう。そんな彼も可愛いんだけど、あまり無理をさせられないから、いつも遠くから見ているんだ。
彼は植物や虫、動物が好きらしく、一人で本を読んでは道端に座り込み、何かを見ている。
何かを発見した時の彼の顔は、生き生きとしていて可愛いんだ。
何度かデートに誘った。いつも彼はニコリと笑うだけ。俺と出掛けたく無いのかな?と思うと、その先が誘えなかった。
**********
僕は、彼等がいなくなった後、その店に行き何を見ていたのか確認した。可愛いアクセサリー。
僕には似合わない、花のデザインや、揺れてキラキラする物、シンプルだけど色が可愛かったり彼女に似合いそうなモノがたくさんあった。
ピアス、、、僕も欲しいな、、、。
そっと、耳朶に開いたピアスホールに触れる。
辞めた、、、。僕には似合わないや。
そう思いながら、一つのピアスが目に付いた。
綺麗な色、、、。欲しいな、、、。でもお金は持っていない。いくら位するんだろう、、、。
値段はちょっと高いけど、買えない金額でも無かった。
******
次の日、僕は街に行き、あのアクセサリー屋を探した。商品をみると、昨日と同じ場所にあのピアスがあった。赤い石だけのシンプルな物だったけど、エゼキエルの耳に着けたら似合いそうだった。
彼の白い肌は何色も似合う。
彼の髪型は男の子にしては長めだけど、形の良い耳が出ている。貴族の子供は、10歳のお祝いにピアスホールを開ける習慣が有って、大抵皆んな穴が開いていた。
僕は赤いピアスを手に取り、緊張する。いつプレゼントしたら良いかな。やっぱり誕生日かな、、、。エゼキエルの誕生日は、まだ先だ、、、。それまでに良いプレゼントを見つけられるか分からないし、今買った方が良いかも、、、。
僕はドキドキしながら、お店の人に声を掛けた。
「あの、すいません」
僕はプレゼントにしたいと伝えて、簡単だけど可愛くラッピングして貰った。
「誰の?」
すぐ後ろで声がして、びっくりした。
「誰の為に買ったの?」
「エゼキエル、、、」
どうして此処にいるんだろう。
「次は一緒行こうって言ったのに、どうして一人で来たの?」
怒ってる?声の感じがいつもと違う。
「ねぇっ!誰に買ったの?!」
えぇ〜、、、言えないよ、、、。今、言ったら誕生日プレゼントにならないし、、、。
僕は口を噤んでしまった。
「俺以外に好きな人がいるの?」
いないよ?
心の中で言う。
「、、、オスカルは、学園でも俺に話し掛けないし、俺が一緒に出掛けようって誘っても、一度も出掛けた事無いよね、、、」
、、、。
「来て」
エゼキエルが僕の腕を取り、場所を移動する。
「お店の前だと邪魔になるから」
彼はズンズン歩いて行く。
エゼキエルは、彼の待たせてあった馬車に僕を乗せた。そして、僕の横に座った。
御者に伝言を伝え、僕の馬車を先に帰してしまった。
「ちゃんと屋敷に送り届けるから、安心して?」
ニコリと笑っているけど、笑顔が嘘っぽかった。
僕はどうしたら良いか分からず、彼が話すのを待っていた。
「昨日、次は一緒に行こうって言ったのに、、、」
ポツリと言った。
「俺の事、嫌い?」
僕は返事が出来なかった。僕なんかに好かれたいの?
「俺達、婚約してるんだから、仲良くした方が良いと思わない?」
それはそうだけど、、、。
「婚約、、、解消したいの?」
、、、家格が下の僕から、そんな事は出来ないよ?
「俺からは、婚約解消も破棄もしないからね」
どうして?
「俺以外に好きな人が出来ても、オスカルとその人は結婚出来ないんだ、早く諦めた方が良いよ」
「あの、、、」
「それとも、俺と結婚しながら、不倫でもする気?」
「エゼキエルは、僕の事好きなの?」
一瞬、彼の動きが止まった。
「婚約してるんだから、好きだよ」
じゃあ、婚約して無かったら好きじゃないのかな?
「オスカルは?、、、俺の事、どう思ってるの?」
*****
僕には、どうしてエゼキエルが怒っていたのか、分からなかった。
多分怒っていた。声はいつもより低かったし、口調も違った。表情も硬いし、何より纏う空気が違った。
何故、僕に好きな人がいると思ったんだろう。僕の周りには誰もいない。親しくする友達もいないのに、、、。
*****
「やっぱりアイツが好きなの?」
アイツって誰だろう?
僕が考えていると
「いつも手を振り合ってるよね?」
と言われた。
「あの、ルイスの事?」
「名前なんて知らない。お互い、小さく手を振り合ってるじゃないか。まるで、秘密の恋人みたいに」
秘密の恋人、、、?
何それ、、、。だったら、君だって、、、。
「エゼキエルだって、お、女の子と仲良くしてたよね?」
彼は、ピクリと反応した。
「女の子?誰?」
「カリーナ嬢、、、」
エゼキエルは笑った。僕をバカにした様に、、、。
僕は口を結んだ。肩で息をしながら、自分を守る為に彼を睨んだ。
「でも、俺は贈り物とかしないよ?君は、嬉しそうにプレゼントを買っていた、、、俺には、一度だって贈り物なんてしなかったのに」
贈り物って、さっき買ったピアスの事?
「ぼっ!僕が買ってたのは、エゼキエルのプレゼントだよっ!」
言ってしまった。
「き、君はいつだって、あの子と一緒にいたじゃ無いか!抱き合ってる所だって見た事がある!向かい合って、微笑んでる時もあった!何で僕がそんな事を言われないといけないんだよっ!」
ただ、君に似合うピアスがあったから買っただけなのに、、、
僕は、胸ポケットに大事にしまっていた、赤いピアスを出す。
「まだ、君の誕生日は先だけど上げるっ!」
僕は泣きながら、馬車を降りようとした。
言いたく無かった事を全部言ってしまった。我慢すれば良かったのに、我慢出来なかった。
鍵を開けるのに戸惑った。ガチャガチャと言うだけで、扉が開かない。
もう終わりだ。彼は本気で怒った。僕の事、嫌いになった筈だ、、、。涙がポロポロ溢れて、目の前がボヤける。眼鏡も濡れて、何も見え無かった。
グイッ!っと腕を掴まれた!クルッと反転させられて、僕は混乱した。
「ごめんっ!」
エゼキエルが僕を抱き締めていた。
「ごめん!オスカル、、、俺の勘違いだ、、、」
彼は全身で僕を抱き締めてくれた。
う、、、。涙が溢れて来る。
彼に抱き締められて、彼の胸に顔を埋め
「酷いよっ!」
と彼を叩いた。
暫くして、漸く落ち着くとエゼキエルは、僕の渡したピアスを取り出した。
「俺の為に選んでくれたの?」
「、、、エゼキエルに似合いそうだったから、、、」
僕は俯いて涙と眼鏡を拭く。
「付けても良い?」
「うん、、、誕生日には早いけど、、、。君に上げたから」
エゼキエルは、左の耳朶のホールにそっと刺した。キャッチャーを嵌めると
「似合う?」
と耳を見せてくれる。
凄く綺麗だ。
「手、出して」
と言われて、掌を差し出すと、小さなキャッチャーを乗せた。
「無くさないようにね」
と言う。
「オスカル、、、半分ずつしよう、、、」
そう言って、僕の左耳を触る。
「良いの?」
「うん、お揃いにしたい、、、」
「君に似合うと思って買ったから、僕には似合わないと思う、、、」
「そんな事無いよ、、、きっと似合う」
そう言いながら、耳朶を弄る。
「着けても良い?」
「うん、僕、自分で着けられないから、、、」
エゼキエルは、僕の耳にピアスを差し込む、、、。
「何だか、エロいな、、、」
そう言いながら、キャッチャーを掴む。
エロいって何?、、、
エゼキエルは、僕のピアスを眺めながら、ゆっくり耳にキスをした。
「ちょっ、、、?!」
「しー、、、動かないで、、、」
そう言いながら、耳朶を口に含む。
抵抗しようとする僕を抱き締め、動かないように固定した。
「エゼキエル、、、本当に、、、
彼の唇と舌が僕の耳を撫でる。
嘘でしょう?
僕は、彼の上着を握りしめ、ゾクゾクする身体に翻弄されていた、、、。
漸く、彼の舌が離れ、僕の名前を呼ぶ。
「オスカル?」
僕が彼の顔を見ると、彼がそっと近付いて来た。
僕は、瞼を閉じて彼を受け入れる。
目尻に、少しだけ、、、涙が滲んだ。
ちゅっ、、、っと音を立てて、エゼキエルは離れた。
「ごめん」
彼は僕に寄り掛かる。
「嬉し過ぎて暴走しちゃう、、、」
僕をそっと抱き締めて
「ずっと好きだったんだ」
と言う。
「でも、、、カリーナ嬢と、、、」
「ん?」
「だ、、、抱き、、、抱き合ってるの、、、見たんだ」
エゼキエルは眉を寄せる。
「え?俺とカリーナ嬢が抱き合ってたの?、、、そんな事あったかなぁ、、、?」
首を傾げながら考える。
「でも、兎に角、俺が好きなのはオスカルだし、君以外とは付き合いたく無いよ?」
本当?
僕が彼を見つめると、もう一度、僕の頬に手を添えて、小さくキスをしてくれた。
*****
馬車がゆっくり走る。エゼキエルの馬車で送って貰えるなんて、嬉しい、、、。
「オスカルの黒い髪、大好き」
そう言いながら、僕の左側の髪を耳に掛ける。
僕のピアスを触りながら
「赤いピアス、似合ってる」
チュッ と髪にキスされた。
エゼキエルも左側にしているから、僕からは見えない。
*****
彼はみんなに見せ付ける様に、耳に髪を掛ける。
1日に何度も何度も。
僕は恥ずかしくて、髪で隠してしまうのに、、、。
「オスカルもちゃんと見せて」
と言って、僕の髪を耳に掛ける。
ぼ、ぼ、ぼ、僕に触れないで!顔が赤くなっちゃうからっ!
思わず、彼を避けながら、耳を隠した。
ピアスを贈ってから、エゼキエルは僕と二人きりになりたがる。
今まであんなに友達が沢山いたのに、いつも僕と一緒で良いのかな?
ランチは二人掛けの椅子を選び、他人が邪魔しない様にしてるし、最近はカリーナ嬢とも一緒にいない。
「どうして?」
「カリーナ嬢はただの友達だけど、オスカルにヤキモチ妬かせたくない。俺は、ルイスと君が手を振り合うだけでもイヤだからね」
と、言って手を握る。
「だから、ちゃんとピアスが見える様にして?」
「そそそ、そんな事言ったって!」
僕は恥ずかしくて、眼鏡を拭く。
「待って、、、オスカル?」
彼は僕の顔をじっと見る。
「ん?」
「めちゃくちゃ可愛い、、、ヤバッ。その顔、誰にも見せないで」
エゼキエルが僕の前髪をバサバサと触る。
「あ」
ルイスが横に立っていた。
「オスカル、今日、図書室行く?」
僕は眼鏡を掛けて、チラリとエゼキエルの顔を見た。
いじけた様に横を向いて、知らん顔をしている。
可愛い、、、。
「返す本があるから行くよ」
と返事をする。
「じゃあ、図書室で会えるね」
と言って、手を振りながらランチルームを出て行った。
「俺も行く」
「本を返すだけだよ?」
「良い、一緒にいたいから」
「分かった、迎えに行くね」
エゼキエルは握った僕の手を引き寄せ、キスをした。
「待ってる」
一々格好良いんだよね。
*****
放課後、エゼキエルを迎えに行くと、カリーナ嬢と一緒にいた。
僕がペコリと頭を下げると、カリーナ嬢もお辞儀をした。
「どうしたの?」
カリーナ嬢の後ろ姿を見ながら言う。
「前に、彼女の妹の誕生日プレゼントを選んだんだ。昨日渡したら、すごく喜んでたって報告」
あ、あの日の、、、。
「男性から見て、可愛いと思うのを選びたいからって、付き合わされてさ」
そっか、そうだったんだ、、、。
ふと見上げると、目が合った。
「あの次の日だね、ピアスくれたの」
そう言って、僕の耳朶を触る。
嬉しい様な恥ずかしい様な気がする。
「早く行こう」
と言うと、そっと手を繋いでくれた。僕はまだちょっと慣れなくて、顔が赤くなってしまう。
*****
やっぱり少し本を選びたくて、エゼキエルに待って貰う事にした。
本棚の間を歩いて、大好きな棚の前に立つ。
ルイスがいた。
「ね、二人は付き合ってるの?」
小さな声で聞いて来た。
「え?どうして?」
「だって、お揃いのピアスしてるから、しかも赤い石」
「、、、?」
「彼から貰ったの?赤い石の意味は「愛」だよね」
「!」
エゼキエルが僕を探しに来た。
ルイスを睨んでる、、、。ルイスは動じる事なく、ふふふと笑って
「じゃ、僕の本は決まったから」
と受付に行ってしまった。
エゼキエルは僕に近付き、耳元で
「アイツは嫌いって言っただろ?」
と言う。これ以上無い程身体を密着させて
「何話してたの?」
と聞かれた。
「ピアスがお揃いだねって、、、」
身長の低い僕の顎に手を掛けて、そっと上を向かせる。顔が近い、、、。
「他には?」
キスしそうな位置で囁く。
「付き合ってるのかって、、、」
「後は?」
「あ、赤い宝石の意味は、、、「愛」だって、、、」
「ふぅ〜ん、、、じゃあ、オスカルは俺に愛をくれたんだ」
と言いながら、そっとキスをした。
「ね、誰か来ちゃうよ」
僕も囁く。
「そうだね、だから、静かにして?」
と言って、もう一度キス。
「あの」
「ルイスにヤキモチ妬くって言ってあったよね、、、」
唇を塞がれた。
僕は、本を抱えながら彼に、長いキスをされる。左膝が、僕の両脚を割って入ってくる。
彼が僕のピアスを触る。耳の輪郭をなぞられると
、小さな声が出た。
一度唇が離れる。あ、行かないで、、、と思っている内に、彼はピアスを口に含んだ。
「!」
ゾクゾクゾクッと身体が震える。
薄暗い図書室、沢山の本の山。遠くで聞こえる小さな足音。声を出してはいけない。本を落としてはいけない。
僕は声を殺しながら、必死に彼にしがみついた。
「オスカルが悪いんだよ。俺を挑発するから、、、」
そう言って瞼にキスしてくれた。
*****
受付で本を借り、図書室を出る。辺りはびっくりする位明るい。
エゼキエルが手を繋ぐ。
「赤い宝石の意味は「愛」だって、、、ふふ」
と嬉しそうに言いながら、そっと髪を耳に掛けた。
彼のブロンドの髪と、透ける様な白い肌に、僕のプレゼントした赤い小さなピアスがキラリと輝いて、とても綺麗だった。
その後、婚約者同士でお揃いの片耳ピアスが流行りました、、、。




