第六話
ここは、ミノ・コアが発見されたという東の遺跡。
石造りで至る所に宝石を模した紋様が刻まれており、太陽光を受けて輝いている。
「古代遺跡って感じですね…」
「その通りだ。穏やかに見えるが、内部には古の魔力が漂っている。気を抜かないように」
「はい」
チタくんの言葉に頷いて入口に近づくと、中は真っ暗で入口付近しか見えなかった。
「…道、分かりますか?」
「コアの気配のようなものなら、感じますね。何となく、別のものも居るような気がしますが…」
「色斗様、灯りなら僕にお任せを!」
ロサくんが珍しく不穏なことを口にしたので怖くなったが、イオくんが光の玉を出現させてくれて少しホッとする。
「では、行くぞ」
チタくんの声で、私たちは遺跡の内部へと進んでいった。
歩きづらい…。
覚悟はしていたが、古代の遺跡だけあって足場が悪い。さっきなんか宝石の結晶を踏んでしまってあらゆる意味で泣いたし、イオくんの灯りがなかったらどうなっていたやら。
そうこうしながら歩き続けていると、もの凄く広い場所に辿り着いた。チタくんも灯りの玉を出し、イオくんと合わせて広範囲を照らす。そこに見えたのは、巨大な壁に描かれた大きな宝石の紋様。
そしてその傍に、まばゆい光を放つ結晶の欠片があった。
「えっ、大きい?」
思わず漏れたのは、率直な感想である。ギルド総裁から預かったコアの破片は、小さなものだった。だから私は同じくらいの大きさのものが、各地に散っているんだと思っていたのだが。
「大きいですね。恐らくこれで、四割ほどはあるかと思います」
「世界を守護する宝石だからな。そう易々と粉々にはならないのだろう」
「砕こうとしてる何者かも、苦労しているということだね」
ロサくん、チタくん、イオくんも、ミノ・コアに感銘を受けている。
でも何だか、何かが物足りないような…?
――その時、広間の奥から巨大な魔獣が唸り声を上げて飛び出してきた。
「ひえぇぇっ!!」
驚愕して混乱する私は、一番近くに居たチタくんに縋りつく。魔獣を見たのは初めてだったが、現れたのはどう見ても魔獣だと確信する。普通の獣ではあり得ない大きさと、オーラを放っているからだ。
ん? オーラ?
「コアのオーラが足りない」
私の呟きに、皆が大きなコアの欠片を振り返る。
「…なるほど。あの魔獣にエネルギーを搾取されているようだな」
「でも、たとえ欠片だとしても、あの大きさのコアが黙って吸い取られているなんてあり得るんでしょうか?」
チタくんが光の剣を構え、ロサくんが疑問を持ちながらも私の前に防御の膜を張った。
「誰かが手を貸しているのかもしれないよ。コアを砕いた人とかね」
そしてイオくんが静かな声で、光の玉を大きくする。
それを合図に、魔獣がこちらに襲いかかってきた。
「借り物の力で強くなって、君は楽しいのかな?」
「僕の色斗様への忠誠に、勝てると思っているのかい?」
チタくんとイオくんは不敵に微笑みながら、それぞれの武器で魔獣に相対する。
いや二人とも、めっちゃ煽るじゃん。逆上されると危ないぞ、と余計な心配をしてしまう。魔獣は恐らくこちらの言葉を理解していないと思うから、大丈夫だとは思うけど。そんな時ふと私は、魔獣のエネルギーに偏りがあるような感覚を覚えた。
「チタくん、イオくん! 右足のひび割れ、狙って下さい!」
普段は何度も聞き返されるほどの声量しか出ない私だが、何とか声を振り絞って二人に伝える。魔獣の右足にはひび割れが出来ていて、そこだけオーラが薄くなる瞬間があったのだ。
二人は魔獣の攻撃をかわしつつ、連携して狙いを定める。そして右足のオーラが再び薄くなった時、ひび割れに攻撃のエネルギーを注ぎ込んだ。
「わっ…!」
魔獣が断末魔を上げて倒れ込むと激しい光が放出され、眩しさに堪らず目を閉じる。ゆっくりとまた目を開けると、光はミノ・コアの大きな欠片に集まり、柔らかな波長となっていた。
「コアにエネルギーが戻りましたね。あの魔獣に力が移っていたせいで、気配が感じにくくなっていたんでしょう」
ロサくんがそう言いながら、そっとコアの欠片を手に取る。それをこちらに向けてきたので、私はハッとして預かっていた小さなコアの欠片を取り出した。二つを近づけると、双方が引き寄せ合って欠片が一つになる。
「まずは一つ、と言ったところか」
チタくんが息を吐いて、ミノ・コアを見つめた。
「まだ奥にありそうだね」
イオくんは、光の玉で魔獣がやって来たほうを照らしている。
「大丈夫ですか、色斗さん」
ロサくんは私を気遣い、回復魔法をかけてくれた。元々体力がないので、本当に有難い。
「ありがとうございます、ロサくん。皆さんは大丈夫ですか?」
「問題ない」
「色斗様が居れば、僕はいつでも最高だよ!」
「私も大丈夫です」
「良かったです。じゃあ…、もう少し行ってみましょう」
私がそう言うと、三人が頷く。
私たちは再び、遺跡の中を歩き出した。




