表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雲枕  作者: 葱と落花生
88/158

88 土偶の奇跡

 病弱だった子供の頃から、琴音はエネさんと二人旅だった。

 エネさんは症状を軽減させられても、治癒能力は持ってない。

 医者と同じだ。 

 話を聞いている時、マスターから記憶の誤りを指摘された。

 爺ちゃんは、貴重で危ない物だから身近に置いてはいけないと思い、質屋に土偶を託していた。

 質屋は、安全な所に隠してくれと遠くの親戚に御願いして、その後に爺ちゃんが他界していた。

 つまり、爺ちゃんが土偶を質入れしたのは、俺達が病院生活を始める前だった。

 追跡装置でも付けておれば良かったのに、小銭をケチってオリジナル土偶の行方は質屋から先行方不明になった。

 最近になって追跡装置を取り付けたが、願いでエネルギーを増幅する時に破壊されてしまう事が分かっている。 

 膨大なエネルギー放出だ、小さな機械など一たまりもない。


 親父には、今の俺の様にエネさんが見えていた。

 それも、人様のまで……。

 エネさんが生命エネルギーと関わりがあるとか、土偶と密接な因果関係にある位は親父も知っていた。

 詳しく聞く前に爺ちゃんが逝っちゃったので、土偶の知識に乏しかったものの、エネさん界で親父は名医で通っていたようだ。 

 俺が子供の頃、エネさんが離れていきそうになって、医療の限界に行き当たった親父は、どうにか治そうとしたのだが土偶の在処が分からない。

 エネさんは土偶と一緒に移動すると思っていたので、私財を投げ打って土偶探しを芙蘭に依頼したと言うのが詐欺事件の真相だった。

 俺についていた最初のエネさんは離れてしまったが、次にやって来たエネさんがパックで、どうやら俺はこいつに生かされているようだ。

 パックは取り付いて暫く大人しかったが、親父に付いた個体とは相性が悪く、とことんトラブル続きの毎日だったらしい。

 どちらにも離れられては困ると思った親父は、俺を病院に寄せ付けないようにしていた。

 それが防衛大に入れた目的だった。

 ずっと後になって芙欄の努力が実り、土偶は夕張メロンのハウスで重しがわりに使われていた所を発見されている。

 これまでずっと行方不明だった土偶の在処を、質屋は吐かずアルトイーナに殺されていた。

 ホスピスに入った親父がしょっちゅう会いに来たのは、自分に憑りついていたエネさんが離れて行ったからだった。

 パックはエネさんが具現化したものだが、誰にでも見えるのではない。

 久蔵には総てのエネさんが見えているが、殆どはモヤっとしていて、いつも霧の中に居る感じだと表現している。

 親父が琴音の余命診断をしたのは、琴音のエネさんが消えたからだったようだ。

 そんなこんなと今まで秘密にしていた事柄を、総て話すのは御前が磯家の一員として認められたからだとしている。 磯家の三人が三つ指ついて挨拶した事をもって、磯家の人間になったのだと言う。

 久蔵が磯家の従者として仕え始めた理由は、本人も知らない。

 エネさんがそう仕向けたのだろうから、磯家とエネさんの間には何かあるのだろうが、俺の中のエネさん代表パックは、知らぬ存ぜぬの一点張りだ。

 ここまで話しがこんがらかってくると、どこの誰兵衛とどなたがあんだらこうだらはどうでも良くなってきた。

 久蔵の話を信じるなら、今後土偶が奪われる心配も無ければ隕石も降ってこない。

 安心して暮らせる日々がやって来たとしていいのだろうし、この先に何が起こるかまで心配する必要もなかろう。


 それにしても、騙され続けていたのが癪に障る。

 この件を知っている皆さんを、どんぐりに召集してもらった。

 皆さんから一言詫びを入れて頂きたく御集り願ったが、思っていたよりも多い。

 磯家、久蔵は当然だが、兄、姉は親父から聴いていたか、芙欄と天戸弁護士は久蔵の弟子だから知っていてもおかしくない。

 城嶋と看護師・薬剤師の三姉妹までもとなれば、ペロン星人も知っている。

 ペロン星人は、大人数だから遠慮したとかで来ていない。

「急な呼び出しで全員は集まれない。とりあえずすまん!」

 久蔵が代表して謝るふりをしているが、まったく悪いと思っていない態度だ。

「皆からだ」年代物のウイスキーで誤魔化された。

 土偶の秘密を知っている者はまだまだ大勢いるとかで、ここまで来ると知らない奴の方が希少ってものだ。

 俺の周りの殆どの人間が秘密を知っているとなれば、もはや秘密ではない。

 それでも、シャコタンとオヤジが来たのには驚かされた。


 俺が医者の世界に戻って幾日もしないで、シャコタンはスクラップだと思って卑弥呼の神社に埋まっていた宇宙船を引っ張ってしまった。

 埋まっている部分は巨大で、いかに牽引車が協力なエンジンを搭載していても唸るだけだ。

 騒がしさに駆け付けたペロン星人に捕まって、宇宙船に引き摺りこまれ、殺さない代わり協力するよう脅された。

 スクラップ置き場の地下に金属研究所を作られたが、今は都合良く使っていると言う。

 最初は仕方なしの付き合いだったが、色々と手伝っているうちに良い宇宙人と分かったと昔を振り返っている。

 今は率先して彼等に協力しているのは分かったが、何で土偶と関係がある。

 俺の知らない裏話がまだありそうだ。

 この先はオヤジが説明してくれた。

 久蔵から、エネさんが常々気にしている巨大な一団の話を聞かされているペロン星人は、将来起こるであろう重大な地球の変化に対応する為、エネさんに協力している一派……一派って何。

 他にも派があるって事だろうが、巨大な一団て何……来るのかな? 

 地球へ、アウトローのエネさん退治に。

 何が悪で何が善かなんて決められないが、俺の命はパックに握られているのが確かとなれば、全宇宙規模で見れば極悪人でも、地球のエネさんを俺は善とする立場にある。

 ゆえに、巨大なエネさんの一団は悪であるという結論から、この一団をこれからアクエネと呼ぶ。

 エネさんからのメッセージをそのまま伝えるマスター曰く。

 賞金が出ているのでもなく、至極少数の非力な御尋ね者など相手にしていないそうだ。

 アクエネの目的は地球の鉱物、主に金属を奪いに来る一団だとの位置付けだ。

 宇宙空間には多くの鉱物があるが、そこから取り出せる金属は鉄が殆ど。

 希少金属もあるにはあるが、地球程豊富ではない。

 鉱物から精製した金属の状態で存在する天体は非常に珍しい。

 アクエネは集団で宇宙を移動しているために、より小さくまとまれば高速移動が可能となり、エネルギーの節約にもなる。

 しかしながら凝縮した状態での移動は、微弱な衝撃でも銀河を一つ消滅させるほどの爆発を引き起こし、彼等は消滅してしまう。

 衝撃から一団を守れるのが、強固な保護膜となる超合金の船となる。

 いくらエネルギーを操作できると言っても、土偶のような増幅装置を持たない彼等には、地球のレアメタルは喉から手が出る程欲しい物なのだ。

 一度アクエネが狙いを付ければ、金属と言う金属の総てを回収するまで彼等の船は地球に留まり続ける。

 金属を採取する為なら、アクエネは地球人を奴隷のように扱うだろう。

 金属と労働力を奪われた人類は、絶滅寸前まで追い詰められてしまう。

 と言うのが、エネさんの危惧する未来予想だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ