表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雲枕  作者: 葱と落花生
38/158

38 危ないやつら

 バスの行き先を空港と指定して、逃走用のジェット機も要求している。

 逃走経路をいくつも用意し、突入できるスキを見せない。

 どこか一か所でも逃走・犯行の障害となる行為が発覚したなら、全員吹き飛ばすと騒いでいる。

 バスが安全圏に到着したと連絡がなければ、残った全員が自爆し、人質共々バラバラになってやると凄まじい覚悟だ。

 そんな事をするほど信念のあるグループではあるまいが、万が一もありうる。

 思い込みで対応出来る状況ではない。

 残るのは少数だが、起爆スイッチを握られていては手出しできない。


 犯人グループの人数が減ったので、その分病室の監視は手薄になった。

 補充のつもりか、各階エレベーターと階段出入り口を犯人に脅された囚人が見張っている。

 アルトイーナのメンバーは巡回しているだけで、入院患者の人数チェックまでは気が回っていない。

 しかし、脱出用の非常口は溶接され、出入り出来ない状態だ。

 先生方が見張りの囚人に、起爆装置の解除と病院からの脱出を条件として取引を持ち掛け、こちら側に協力してもらう計画をたてた。

 起爆装置解除は、囚人にしてみれば願ったり叶ったり。

 体に巻かれた爆弾を取り外し、模造品と巻替えられた。

 これで、囚人が吹き飛ぶ心配はなくなった。


 銃撃戦に参加したくてしょうがない昭和会の皆さんには悪いが、御老体から順次避難してもらう。

 病室の安全は確保できたものの、一階ロビーと正面玄関に二人配置された爆弾はそのままで、解除の手立てがない。

 一番厄介なのは、犯人が自身に巻き付けたC4だ。

 生体と遠隔に加え、自爆の三点起爆だ。

 我々に触れてはいけないと主犯が力説している。


 屋上監視カメラには死角があって、逃走劇の真っ最中だというのに、アルトイーナの二人がここで何かをしでかしているようだ。

 衛星を使ってこの動きを探って見ると、事前に調査していたのだろう、未来科研立籠もり事件の狙撃手と同じ位置に銃をセッティングしている。

 未来科学研究所の誰かを、ターゲットにしているのは確かだ。

 ここまで分かっていても、この画像を警察に見せられないから苛立ってならない。


 未来科研で同時通信している画像を見てか、今日はここへ防衛大臣が視察に来る予定だとクロから情報が入った。  

 半年も前に決まっていたスケジュールで、極秘且つ最重要視察日程の一部に組み込まれている。

 御多分に漏れず、極秘事項の内容までは教えてくれなかったが、真迷神社とずんだもちで起こっている超科学現象以上の秘密が他にあるばずもない。

 今回の騒動には、視察途中の大臣暗殺計画が隠されている可能性から、今日の予定は事件発生からすぐに中止されていた。

 立て籠もり犯を刺激しないように、車は予定通り走らせているが、中には大臣酷似のアンドロイドを乗せている。

 県知事は生身の本物だそうで、彼は死んでもいいと評価されている。

 知っているなら、並大抵の勇者ではない。


 確認すれば、知事は事実を知らずにいた。

 酷い扱いもあったものだ。

 影武者の大臣と談笑しながら、狙撃犯の射程エリアに入って行く。

 御愁傷様。

 未来科研もアンドロイドを持っていた? 誰が造ったんだ。

 未来科研が造ったならば、幾らで売った。

 遙の事だから研究段階だと言って、ズルズル国庫から絞り取る気に違いない。

 提示額を釣り上げるのに、この事件はかっこうのデモンストレーションになる。

 事件が起こった時、クロと遙が妙に親しかったのはこの為か。

 どちらが良いも悪いもない。どの道同じ穴の貉だ。

 クロは真面目一方だと思っていたが、とんだ食わせ者のようだ。

 卑弥呼との繋がりをクロに知られまいと、アタフタしていた北山より裏稼業での立ち回りが上手い。

 役者が何十枚も上手に思える。

 大人しい奴、目立たない奴ほど策略家だったりする。

 単純に、レインジャーから県警にトラバーユしたのではないと見た。

 まだまだ隠し事がありそうだ。


 晴れ渡った空に銃声が響く。

 防衛大臣似のアンドロイドが、狙撃された名演技をしている。

 倒れてから救急車に乗るまで微動だにしない。

 呼吸をしていないのだからこそ可能な演技で、人間以上に完成された機能には驚く。

 辺り一帯が騒然としている中、犯人グループが病院に報道カメラを呼び入れ、防衛大臣を処刑したと犯行声明を出した。

 それから内部の画像を流し続けるようにと指示して、報道まで人質にした。 

 すると、すぐに北山から連絡が入った。

 グループから一足先に離脱した一人が職質から解放され、集合場所であろう建築現場のテレビを見ているというのだ。

 囚人に病院の人質を監視をさせて、マスコミにその映像を流させる。

 建築現場でテレビを見ている仲間が、主犯に病院内の動きを逐一報告する。

 これでは、院内外の変わった動きにすぐ気づかれてしまう。

 院内の状況を放送され続け、犯人グループの連携が完成されると、トンネルを使っての逃走中でも放送局の監視付きになる。

 追う者は手出し出来ない。

 トンネル内で盗品運搬班と合流する気のようだ。


 テレビで監視しながら空港に向かう犯人達が、拘束されている仲間の釈放要求を出すと、即座に実行された。

 釈放された犯人は、警察の警固付で空港へ向う。

 世間様の顰蹙を買いそうだが、人質をとられている警察の立場として、背に腹は代えられない状況だ。

 主犯格がトンネルに入る時、地階の電波信号が数秒途切れるエリアがある。

 その一瞬で、建築現場の監視役を取り押さえた。

 後の通信は、声紋生成ソフトで監視役の声に変換した警官が応答する。

 空港に向かうバスは、テレビ付が指定されている。

 バスグループも起爆装置を持っているならば、携帯の信号で操作するのだろう。

 テレビカメラの画像をループにしてもらい、気付かれる前に、一階の囚人が着ている爆弾ベストの起爆装置を解除した。

 空砲の銃を頭の上に上げて囚人が投降すると、この段階になって特殊急襲部隊・通称:SATが突入した。

 今更、突入。意味があるのかよ。

 突入ガラスを割るんじゃない。


 主犯グループには、運搬班と一緒にペロントンネルで迷子になってもらう予定だ。

 飢え死にしない程度に食糧を投げ込んでやれば、刑務所と同じだ。

 迷路から抜け出すまでに百年はかかる。

 生きていればだが……逮捕したも同然だ。

 死んじゃったら、内緒で九十九里浜に埋めてやる。


 バスが閉鎖されている滑走路に到着して、犯人の要求する航空機が着陸した。

 燃料の補給はまだされていない。

 ここで時間稼ぎをして、同時に人質の解放交渉がすすめられる計画になっている。

 VIP待遇の犯人も空港に到着すると、犯人の数が増えて、人質になっている先生方が不利になる。

 先生方には、一気に畳込みましょうと指示する。

 退役したとはいえ、俺と違って六年間の訓練を受けている。

 今もって自衛官の意気込み強く、体が覚えた術は簡単に忘れない。

 中途半端なテロリストに負けるはずはない。


 実践経験がないのは犯人も同じだ。

 能力が同等ならば、不意を突かれた者が崩れるのは早い。

 発砲はあったものの、ほんの数秒の攻防で犯行グループを制圧した。

 ここで、サットが催涙弾をバスに打ち込んで突入する。

 催涙弾余計でしょ。

 先生方まで涙目になってるから、そこまで体面重視するかな? 


 一方、トンネルでは迷子の子猫ちゃん作戦を続行中だ。 

 人間という生き物は、極限状態に置かれると判断力が鈍る。

 ありもしない陰謀説に悩まされ、疑い深くなるものだ。

 自分達が掘った地下道が迷路になっていて彷徨い続ければ、どんなに強靭な精神の持ち主でも周りを疑い始める。

 盗品は総て偽物で、価値ある物などないと吹き込んでやれば、主犯格と再会した時に仲間割れを起こし、武装グループの人数がごっそり減ってくれる。

 こちらとしては大変都合がいい状態にまで持って行くべく、業務連絡で逃走犯に盗品情報を流してやった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ