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秘密

パタリと聖女の聖域は閉じられた。


「えぇ~なになに?俺今聖女様に見られてなかった?」

嬉しそうにジェフリーが近づいてきた。

その呑気なジェフリーにぞろぞろくっついてきたのはアルフレッドの護衛達だ。


「近くで見るととても、なんというか迫力ある女性ですね。」

「王国にはたくさんの女性は沢山おりますが、なんというか、異様な花とでも言いますか・・・。」

「なぁっ?綺麗だろぉ?すっごい美人でさぁ、それなのにあのツンとした態度がまたそそるんだよなぁ。」


護衛達の言葉が、アルフレッドとアレクサンダーが小刻みに震えている。

ジェフリーに、シュタイン・エルスラー卿、ランスロート・ミクラス卿、ヘルゲ・コルポ卿

みんな伯爵家以上の王太子の護衛達で腕は確かだ。

それぞれ目立つ髪色の持ち主で美形揃いだった。


ジェフリーはグイっとアレクサンダーの肩に腕を回した。

「アーレク!何々?愛称で呼ばれてるのぉっ!?随分仲良くなったんじゃん!?」

ニヤニヤとジェフリーは笑った。その笑顔がアレクサンダーとアルフレッドの神経を逆なでる。


ただでさえこの胸は収まりきらない思いがあるっていうのにこの鬱陶しさったらない。


アレクサンダーと乃愛の間に、不思議な空気を感じたのだ。

気が気じゃない。アルフレッドはムっと口をひん曲げてうつむいた。


そして、密かにため息をついているアレクサンダーを睨んだ。


「おい・・・ロビアン・・・・


低い声でアレクサンダーを呼んだ。

その声にビクっと肩を揺らし、控えめにアルフレッドに目を向けた。


「はい・・・殿下・・・・。」


アルフレッドの嫉妬が混じるその瞳と見つめ合う。

「ば・・・バルコニーで・・・その・・・・乃愛と、どんな話をしたんだ。」

控えめに聞こうと思っていたのに、言葉は直球にアレクサンダーに向けられた。


ハッとしてアレクサンダーはアルフレッドから目を逸らした。

「い・・ゃ・・・あの・・・・・。」


思わず声が引っ込む。


あの幻想的な夜空を背景に輝く聖女ノア。


そして、知りたいと・・・伝えてしまった自分の気持ち。



カァァっとアレクサンダーの頬が熱くなっていく。

「何もっ・・・・・。お伝えするような・・・ことは・・・。」

そのもごもごした声に、アルフレッドは眉を吊り上げてわなわなと震えた。


「おっ・・・お前っ・・・・なぜっ・・・言わんのだっ?」


「いえっ・・・その・・・大した話は・・・・・。」

「嘘だ!お前のその態度がその証拠だ!言え!命令だ!」

「そっ・・・そんな!!めっ・・・命令だなんてっ・・・聖女様の許可もなく・・・。」


「うるさいっ!ミレイユ嬢に突っ掛かれてノアが何も言わずにいるわけがないだろっ!?

嫌な思いだってしたはずだっ!それ以外の話題がほかにあるか!?それともノアは無言だったのか?」


気づけばアレクサンダーの胸倉を掴んでいた。

抵抗も出来ずにアレクサンダーはアルフレッドの理不尽ともとれる仕打ちを受けていた。



「おい命令だぞっ?聞けないってのか?」

「でっ・・ですからっ・・・殿下お許し下さいっ・・・・。」

アレクサンダーは両手でアルフレッドをガードした。

「しゅっ…守秘義務がっ…私は護衛するお方のお言葉を、例えこの国の王太子殿下といえどお話しすることは出来ません!聖女様の尊いお言葉で御座います!」


「なぁっ…なんだとぉっ?」

火が出そうなほどアルフレッドは興奮している。

2人の秘密とやらがなんとも気に食わない。

アレクサンダーはアルフレッドに申し訳なさそうな目を向けた。


「っ…あの…聖女様に明日直接お聞きになってはいかがですか?私の口からはお話しする事は出来ませんが、聖女様はきっと、殿下にはお話しすると思います。」

「わっ…私に直接聞けと?!」

「それが1番です。私が話せないのは、その…あの時のお言葉が、どのような思いで話されたのか、話して良い事なのか…護衛対象のお言葉を無闇に明かすことは出来ません。

私は信頼を得たいのです…。」



「くっ…」

アルフレッドは唇を噛んだ。アレクサンダーの言葉は正しいと言えるだろう。

ペラペラと話したとなれば、乃愛の信頼を、

恐らくはアレクサンダーと自分にも持ってはくれないだろう。


気が急いでしまったが、乃愛の信頼を得たいのは同じだ。


アルフレッドは掴んでいたアレクサンダーの胸倉からゆっくり手を離した。


「…そこまで言うなら、私が直接聞こう。きっと、打ち明けてくれるはずだ…そなただけじゃなく、私にも…」


なんて幼稚な捨て台詞だと自分でも自覚していた。

だが、アレクサンダーを見ていると焦ってしまう。


さっきは自分の腕に手を寄せていた乃愛。

そこに何の意味があるのかなど、思い巡らせたところでわかりはしない。乃愛の事だ。きっと意味などない。



だから焦る。不安に駆られる。




彼女の特別は自分でありたいと思ってしまうから……






「あぁ、疲れたな……」

ドレッサーの前で乃愛は深く息を吐いた。

この煌びやかなアルフレッドの揃いのドレスは綺麗だ。

だが、重い…服の重さじゃなく、心が重くなる。


この国の王太子と揃った衣装は重たかった。

この衣装を見たアルフレッドの婚約者、ミレイユの気持ちも分からなくはない。

アルフレッドは何を考えていたのか、

現代にあるもう戻れない日本でも、お揃いコーデなんて恋人達でもする事だ。友達や親子でも。


それだけ、想いがあるからだ。


このドレスは自分に向けられた訳だが、それが分からない程呑気ではない。知らぬふりをした。


アルフレッドの瞳は熱がある。



このドレスの様な、彼が火の神の末裔であると確信できる程の熱。



だからなんだ、関係ない…


自分は聖女と言う、如何にも純粋な存在ではないのだから。


読んでくださりありがとうございました。

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