表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

勝てない。

作者: ニコ

 ずっと、言わなきゃいけないと思ってたことがある。

 誰に?

 女房にだ。




 俺とあいつは、職場で知り合った。

 なんと言うこともない、普通の会社の、普通の職場。

 互いに、もう、落ち着かなきゃいけないからってことで。結婚した。



 結婚した時、俺はこいつに隠していたことがあった。

 いまだに話していない。


 こわくて。


 知られたら……と思うと……。




 でもある日。


「ねえあなた、たまには夫婦で旅行に行かない?」

 と言われた。



 えっ?と固まってると、


「だって新婚旅行だって行かなかったし、子供が小さい時はお金が無くて家族旅行もいっていないし……」

「そうだな、じゃ行くか。どこがいい?」

「ほら、ここなんかいいんじゃない? 露天風呂が部屋の中にあるんですって。たまには二人でつかりましょうよ」


 それを聞いた俺の顔に滝のような汗が流れ落ちた。


「ねえ、いいでしょあなた」

「う、うん」

「どうしたの? 何か不都合なことでも?」


「い、いや別に」



 俺は飯もそこそこに、自分の部屋にこもった。


 どうしよう。


 あのことがばれたら……。




 

「あなたー、お風呂わきましたよ、お先にどうぞ」

 女房に言われ、風呂に入る俺。

 わしわしわしと体を洗う。


 いやほんと、どうしよう。

 あのことが……ばれたら……アワワワワワ。




 そして旅行当日。

 俺は覚悟を決めた。

 とーぜんだが、朝から食欲ゼロ。

 女房から、少し食べてよと言われても喉を通らない。


 こんな時に旅行なんて大丈夫?やめましょうか?と言われた。

 俺も辞めたい。けど。


 男には、告白しなきゃいけない時ってちゃんと来るんだな。

 だったらもう……この時を置いて他にはない。

 何でこんな風に思い詰めてんだ俺。



 で、

 いよいよその時に。


「あなたー、露天風呂わいてるそうよ。入りましょうよ」

「う、うん、その、お前に言いたかったことが……」

「はい、カツラの入れ物、ここに置いときますからね」

「う、うん、ありがとうって……え?」


 女房、ニコニコしながらサクッとビニール袋おいていく。


「温泉の成分で変色したらことですから、ちゃんと外してきてくださいねアナタ」


 と女房は言い、いそいそと服を脱ぐと、早く来てねーと言って風呂に先に行った。




 こいつには勝てん……。

 しみじみ思う俺であった。  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  面白かったです。(3回目)……いやホントに。  職業病というのはあまりにも不遜というか、おこがましいのですが物書きの端くれとして、ツイツイ先の展開を想像しながら読んでしまうのですが(←も…
[良い点] wwwwww(^Д^) いや、まぁ、ねwww (^o^; ほっこりほのぼのでした〜♪ (´∀`)
[良い点] むしろどうしてバレていないと思っていたのか( ´艸`) ハッピーエンドでよかったのです! 面白かった~(´▽`)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ