第十五章 連携
ま、魔人!? 魔人ってあれか? 魔法を使える人間で魔人か?。
・・・いや違う。それなれば俺達も魔人と言うことになる。
俺が知っている魔人は・・・基本的に悪い奴だったな。こいつもそうなのか?
・・・俺達を殺すって言ってるから、やはりこいつも悪い奴に違いない。
この状況どうする?
「では、やるとしよう」
銀髪魔人の男ークラウスが胸元から取り出した何かを持って、こちらに一歩踏み出した。
―瞬間、クラウスの足元に紅色の魔法陣が描かれていた。
「フローム・プリズン」
赤毛の少女ージーナが呟くように言った。
ー途端に魔法陣から炎が発生して、クラウスを囲うように炎の格子が形成された。
しかし今度はそれだけではなかった。ジーナが右手で握り潰すような動作をした。
すると同時に、炎の格子がクラウスを飲み込んだ。
「し、師匠!」
「・・・フフフ、この程度の炎、私には効かない」
そうクラウスは告げ、右腕を振り払った。すると炎が吹き飛ばされ消えてしまった。
炎に飲み込まれたはずのクラウスだったが、その体には火傷一つなかった。
「・・・そんな!?」
俺がそう反応すると、クラウスは嘲笑うかのように笑みを浮かべた。
しかし、この状況を見越していたのか、既にクラウスに接近していた少女がいた。
「これでも喰らいやがれ!」
そう叫び、クラウスの土手って腹に一撃を入れた。
その一撃は土色に光を帯びており、そこには魔力が集積されていた。
ーそう、それは「クリーム色の髪をした少女ーエニス」が俺に向かって放った一撃「グランド・ナックル」だった。
「っぐは!」
とクラウスは喘ぎ、後方へ弾き飛ばされた。
「・・・これなら!?」
「いや、まだだ!」
「!? あれでもダメなんですか?」
「あんなもんじゃ奴を倒せねー! いいかよく聞け! 魔人ってのはな! うちら人間の何倍、いや何十倍も力を持った奴らのことなんだよ!!」
「・・・そ、そんなに!?」
「フハハハハ! それは聞き捨てならないね!」
そう笑いながら出て来たのは、先程エニスの「グランド・ナックル」を思いっきり喰らったはずのクラウスだった。
「・・・!? マジかよ!? あれ喰らって何ともねーのか!?」
「そこの少女はね~いま私達のことを人間より何十倍も力があるって言ってだけどね・・・それは間違いなのよ・・・何十倍ではなく何百倍のね!!」
そう言って目の前に姿を現したのは、金髪のショートヘアの女だった。
「ウルスラその人間には手を出すなよ」
「はいはい、分かっているわよ」
「金髪のショートヘアの女ーウルスラ」はクラウスにそう言われ、面倒臭そうに返事をした。
・・・あの二人が言っていることが本当なら、この状況やば過ぎる!
人間より何百倍も強いだと・・・!? そんなレベルの相手なら勝ち目なんて無いじゃん!?
っつか何でそんなやばい奴がこんな所にいんだよ!?
ークラウスが何かやり始めた。
「さて、どれ程の力かな?」
「何を言ってやがる?」
エニスの言葉には耳も貸さず魔人クラウスは邪悪な笑みを浮かべていた。
クラウスは先程胸元から取り出した何かを俺達に見せつけてきた。
「これが何か分かるか?」
そう言って見せたのは、邪悪な気配が漂った水晶玉だった。
「・・・知るかよ、そんなもん!」
「まぁ、お前ら如き人間に分かるはずもない」
「あの水晶玉なんかやべー気がする!あれを使って何かする気だ、その前にあれを壊すぞ!」
エニスは全員にそう言い、皆その言葉に同意して臨戦態勢に入った。
「覚悟はいいな! 行くぞ!!」
エニス皆を鼓舞した。そして再び戦いが始まった。
「我が手に宿れ、エスパーダ」
俺は『エスパーダ』を発現させ、クラウスの方に駆け出した。
「あら~クラウス、あの人間達こちらに来るみたいよ」
「フフフ、構わないよ、どうせ無に帰すだけさ」
「それもそうね~」
俺の魔法はカルロスさんの大剣をも折った程の力。どこまで通じるか分からないが、試してみる価値はあるはず!
「あんた達の気まぐれで、この子達を傷つけさせるにはいかない! 悪いがお引き取り願おうか!」
「フフフ、ただ突っ込んでくるだけとはな。馬鹿な人間が考えそうなことだ!」
クラウスは右手を上にあげた。
途端に俺の足元の地面がせり上がり、俺は体勢を崩した。
「・・・なっ!?」
そんな俺を見向きもせず、エニスは既にクラウスの間合いを詰めていた。
「大地よ屠れ!ロック・グラディウス!」
エニスがそう叫ぶと右手に魔力が集まり、そこには岩石で形成させた大剣が現れた!
そして現れた大剣でクラウスに向かってを横から殴りつけた。
「おらよ!」
予想をしていなかったのか今度はクラウスが驚愕した表情をみせた。
「なっ!?」
大剣はそのまま命中し、クラウスは左方へ吹き飛ばされ、大木に打ち付けられた。
「水よ撃ち抜け!アクアショット!」
そこに追い打ちをかけるようように、アリスがクラウスに水の散弾を打ちつけた。
「これで終わらせるわ! 炎よ穿て!バーンストライク!」
空中に紅色の魔法陣が描かれ、そこから大きな炎の塊が現れ、勢いよくクラウスに衝突しあたりに粉塵が舞った。
つ、強えええ!? 皆こんなに強かったの!?
カッコつけて突っ込んだ俺が本当にバカみたいじゃん!!
「これならさすがに魔人と言えど、無傷では済まないでしょ!」
「なら、良いんだけどな」
「フハハハハ!思っていたよりやるではないか!」
粉塵の中から笑い声が聞こえ、粉塵が晴れるとそこには大して効いた様子のないクラウスが現れた。
「ま、マジかこいつ!? 魔人ってのはこんなにやばいのか!?」
「いや久し振りに良いものを見せて貰ったよ。お返しにこちらもそれ相応のおもてなしをしなくてはね」
いや、いられねーよそんなの! おもてなしって日本人の鏡かよ! だったら帰ってくれた方がありがたいんですけど!!
「では征くぞ!」
クラウスがそう言って、先程の邪悪な気配が漂った水晶玉に魔力を込め始めた。
すると水晶玉が闇色に変化して、あたりに凄まじい邪気が解き放たれた!
「フハハハハハ! 見よ!! これが古の魔神が創り出した最強の魔道具だ!!」
ま、魔神が創りだした魔道具!?
「も、もしかして俺達は、何かとんでもないことに巻き込まれたのではないのか?」
そう予感した青年ーシオンだった