第十一章 戦前
「兄ちゃんが出現させた剣ーそれドレインソードだぜ」
エニスははっきりした声で俺に向かってそう言った。
「俺が出現させた剣がドレインソード?」
「ああ、そういうことだ」
エニスが澄ました顔で答えた。
そうなのか?全然分かんないのだが・・・
カルロスさん俺の剣持っても平気そうだったし。
「まだ納得がいってないようだな。じじいはお前から剣を受け取った途端、魔力が吸われたことに気が付いた。だから自分で鍛えた大剣で試し斬りをした」
あの不思議そうな顔をそういう意味か・・・
「それは分かったのですが、何故試し斬りを?」
「普通どんなに凄い剣でも、あの細さじゃ大剣を折ることは出来ない。細い剣の方が折れなくても弾かれて終わりだ。だが・・・大剣はこの通り折れた。それはつまり『この剣に魔力が宿っていたってわけだ』」
・・・そういうことか!確かに言われてみればその通りだ!
だけどもう一つ分からないことがある。それは俺の魔力がこの剣に吸われている感覚がないっということだ。
「しかしその剣は何処から魔力を吸い取っていたのでしょうか?」
「はぁ!おめぇからに決まってるんじゃねーか!!」
いやね、そうだと思うんだけどね・・・吸われている気がしないいんだよ!
なに?俺からは魔力を吸わないってことなの?そうなの!?
「まさかおまえ・・・魔力を吸われている自覚がないのか・・・!?」
エニスはどうやら俺の感覚に気が付いたらしい。
「そういうことみたいですね・・・」
俺はエニスに苦笑いしてそう答えた。
「なっ、なにぃぃ!?」
エニスは驚愕した表情で俺に迫ってきた。
「てめぇそれはいったいどういうことだ!?」
「いやーそれがですね・・・自分でもなにがなんやら」
「ったく、呆れた兄ちゃんだぜ」
なんかすみません・・・
「あんちゃん、だけどこれで分かったぜ!」
カルロスさんが何か分かったみたいだった。
「何がでしょうか?」
「考えられることを二つ。一つ目はその剣ードレインソードは、あんちゃんだけからは魔力を吸い取らない。
二つ目はあんちゃんが魔力に吸い取られるのが分からないくらい、膨大な魔力の持ち主ってことだ!」
俺は少し考えてみた。
「しかしまだ納得がいかないことがことがあります。一つ目の考えが正しかった場合大剣が折れた理由の説明がつきません。その剣はカルロスさん以外には触れさせておりませんので、カルロスさんの魔力を吸っただけで、大剣を折るほどの威力になってしまうことになります。二つ目は、自分に魔力がどれくらいあるか把握できない為なんともいえません。」
「なるほどな。確かにあんちゃんの言う通りだ。俺のカスみてぇな魔力だけじゃ、この大剣は折れない。」
「おまえ自分がどれくらい魔力あるか分かんねぇのか?」
エニスが不思議そうに聞いてきた。
「はい、そうなんですよ。なんかコツとかあるんですかねぇ」
「コツも何も普通分かんだろうが!!」
だからその普通が分かんないんだよ!!
「すみません。それが分からないんです・・・」
「ったくしょうがないねぇ奴だな」
結局、魔力吸収については分からなった。
「とりあえずまぁ用が済んだことだし、行くか!」
「はい分かりました!」
「おい兄ちゃん、あとこれ持ってけ!」
カルロスさんの方を振り返るとそこには、防具一式があった。
「良いんですか!?」
「おうよ!気を付けて行ってきな!」
「ありがとうございます!」
こうして、俺たちは工房をあとにした
「魔物狩りの前に聞きたいこあるのですが・・・」
「なんだよ、言ってみろ!」
「エニスさんの魔法はどういったものなのでしょうか?」
「そう言えば言ってなかったな。うちの魔法は、土属性だ!」
「そ、そうだったんですね!土属性なんて超かっこいいですね!」
「あぁん?そんなことはどうだっていい、集合場所に行く前にお前は着替えて来い!うちは先行ってる。」
「そうですね、了解しました!」
俺は一旦家に戻り、カルロスさんから貰った防具と武器を着装して、村東側入り口に向かった。
東側入口に着くと、既に少女三人と村長がいた。
「お待たせしました。」
「やっと来たわね!」
いつも通り上から目線の口調は、赤毛の少女ージーナ。
「ったく、おせーんだよ!」
相変わらず不良のような言動は、クリーム色の髪をした少女ーエニス。
「それでは、これから作戦を決めましょうか」
このしっかりした子は、藍色髪の少女ーアリス。
この少女三人と魔物狩りに行くんだよな。
本当に大丈夫なのだろうか。
青年ーシオンはどことなく不安な感情を抱えたまま、初めての戦場に行くのであった。