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天と地と青年  作者: いっちー
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第九章 パーティ


訓練が始まってから十分が経過していた。


二人は全くその場から動かず睨み合っていた。

しかし、そんな状況もようやく終わりを迎えようとしていた。


あれからどれくらい経ったんだ?

何もせずじっとしていただけなので、俺は時間感覚が分からなくなっていた。


俺が想像していた以上にアリスは我慢強い。

普通の子なら、この状況直ぐに根を上げる。

くっ! そろそろ限界が近い!

同じ体勢でずっといるってこんなに大変だったんだな。

ふと校長先生が壇上でお話している光景が浮かび、懐かしく思えた。


シオンは限界を感じ始め、今にも動きだしそうだった。

しかしそれはシオンだけではなかった。

アリスも同様に限界が近かった。


そしてついにこの膠着した状況を破るものが現れた。


少女が詠唱を始める。

「炎よ、燃え上がれ!フローム!!」


赤毛の少女ージーナが火属性魔法を発現させ、二人の間に放った。


フロームは二人の間の地面に直撃し、二人を飲み込むように砂嵐が舞った。


「なんだいったい!?」


シオンは体を守るような体勢をとり、砂が目に入らないよう目を細めた。


しかし、アリスは違った。

この状況に素早く対応し、戦闘が始まったと判断した。

「どうやら、私に隠していた魔法があったみたいね!だけど、不意打ちでやられる程私は弱くないわ!」


アリスは砂嵐の中、シオンの方へ真っすぐに駆け出しあっという間に距離を縮めた。

防御態勢をとっているようだけど、それだとまだまだ甘いわね!

脇ががらあきなのよ!

「私を出し抜いたことは、褒めて上げるわ!だけどね、この程度で倒せるとは片腹痛いわ!」


アリスはそう言い放ち、おおきく振りかぶって上段廻し蹴りをシオンに放った!


ーー途端シオンはアリスの蹴りが目に映り、身体が蹴りを防ぐように反応した!

シオンはアリスの蹴りをガードして見せるが、数メートル先まで吹き飛ばされた。


「ぐはっ!」


何が起きた!?

ってか、左腕めっちゃ痛いんですけど!

ガードしてなかったら死んでますよこれ!?


シオンは蹴られる寸前に、左腕で防御をしていた。


「防がれた?私の動きに反応して咄嗟に防いだと言うの!?」

アリスは信じられない状況に困惑していた。


砂嵐が止み、視界が開けた。


「どうやら勝負がついたみたいね!」

ジーナは何か勘違いをして、そう告げた。


「し、師匠!」

「ジーナ!」


「ったく、私の弟子なのにだらしないわね!あの程度の蹴りも躱すことすら出来ないの?」

あの程度ってめっちゃやばかったんですけど!?

普通あんな蹴り喰らったら、死んでますよ師匠!


「ジーナどうしてここに?」

「歩いていたら、あんた達が睨み合っているところが目に入ったのよ。でもあんたら全然動かないんだもの。だからちょっと手を貸したってわけ。」


「もしかして、さっきの砂嵐・・・ジーナの仕業なのね!」

「まぁそういうことよ!」


すると、アリスはシオンのところまで駆けつけた。

「シオンさん!大丈夫ですか!?」

「あ、あー何とかね・・・それにしても凄い蹴りだったね」

「そうでしょうか?私よりもシオンさんが咄嗟に防御態勢をとりましたよね!?私あの状況で防がると思いませんでしたので吃驚しましたよ!」


えっ!?防がれると思っていなかったって・・・?

アリス先輩・・・それ俺のこと殺しにきてます!?


「いやー、何とかって感じでしたね・・・」

「これなら問題ありませんね!」

「はい!?」


「魔物狩りですよ!これから村長に報告しに行きましょう!」

・・・いや、ちょっとまって!?

アリス先輩それは早計過ぎるって!

確かにあの蹴りを防げたのは自分でも驚きだけど、それだけで魔物狩りは出来ないでしょ!

大体まだ俺魔法すら使ってないですよ!?


「アリスさん、魔物狩りはまだ自分には早い気がするのですが・・・」

「そんなことありませんよ!あの身のこなしなら問題ありません!」

「そうよ!私の弟子なんだから魔物なんていちころよ!」

「ほら!ジーナもこう言ってますし!」


・・・そうなのか?

もしかして俺は魔物狩りのことを難しく考えていただけなのか?

この二人も言ってるし・・・


なんだか自信が湧いてきた。

物は試し!やってみますか!!


「分かりました!俺やります!」


俺はこの二人に説得され、村長の家に向かった。



「お~来たか。どうじゃ、覚悟は決まったかの?」

相変わらず悠長な語り口で村長はそう言った。


「はい。私も早く皆さんのお役に立ちたいので!」

「お~それはいい心構えじゃの~」


「では早速行ってもらうとするか」

「今からですか!?」

「こういうのは早い方がいいんじゃよ」

「はぁ。そういうものでしょうか」


「ではパーティを組むとするかの」

パーティ?

そう言えば、俺はこの村で魔物狩りを担当している人はアリスしかしらない。

師匠はどうなんだろうか?あの様子だとやっていそうだけど・・・


「ジーナ、アリス」

「はい!」

二人が元気よく返事した。


「お主たちの火属性と水属性の魔法でシオンをサポートするんじゃ」

「分かりました」

「ったく、しょうがないわね!」


やはりこの二人か・・・


・・・てか、水属性ってアリス水魔法使えるのか!?

ってきり、身体強化系の魔法かと思ってたぜ。


でもさすがにこの二人だけでは若すぎる気がするな・・・


「ってことは三人で討伐しに行くのでしょうか?」

「いいや。もう一人おる。」


良かった。

やはりこういう時は一人まとめ役が必要だからな。

村長のことだ。ベテランの人を付けてくれるだろう。


「ではその方はいったい・・・?」



村長はいつも通り悠長な口調でこう告げた。


「エニスじゃ」



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