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聖獣の庭、あるいは忘却曲線  作者: 蒼乃モネ
第二章 太陽都市、魔獣使いの饗宴
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第3話 影身

 ハークらは、眼前に立ちはだかるただならぬ気配に、身構え目を凝らした。

 ただし、ひどい逆光のため、目が眩み、しばらくは暗い影として認識された。

 背後の建物群の一様に白い壁が、余計に光を反射していたためだ。


「あんたら。少し話を聞かせてもらおうか」

 低く通る声は、街のざわめきのなかでも、不思議とはっきり聞こえた。

 その人物は、フードを深く被り、全身を覆い隠すようなケープに身を包んでいた。

 その傍らには、もう一人、それこそ影そのものとしか例えようのない人影が。否、「それ」には本当に足元の影がなかった。

 むしろ、そちらのほうに異様な気味の悪さを感じるのだ。

 目が慣れてくると、男性の声の主は、片青眼の青年だということがわかった。

 ますます、警戒してしまう。

 ハークは、これまでの反射でロゼを背後にかばった。

 実際、それよりも先にアルフレッドがそれを果たしていたが。

「その女は獣使いだろう。国の正式な許可はとっているのか」

 ハークもアルフレッドも、押し黙った。

 これまで幾度となく、繰り返されてきたやりとりではあったが、今回は事情が違うようだった。

少なくとも、公権力というだけではなさそうだ。

重大な局面では、ロゼの出方をうかがうのみ、というのは暗黙のうちに決まっていることだった。

 しかし、緊迫した空気の中、背後から意外にもあっけなく彼女の答えは出されたのだった。

「いいわ。ここだと邪魔になるから、場所を変えましょう」

 ハークは正気かよ、と拍子抜けした。

「おい、ロゼ。あいつら見りゃわかるだろ。絶対おかしいって」

 というか、以前フィルに疑いをかけられたときは、あんなにむきになっていたのに、と。

 しかし、ロゼの声は、すっかり「いつも通り」のそっけなさに戻っていたのだ。

 ロゼは前を向いたまま、小さく呟いた。

「フィル。適当に説明、頼むわよ」

「あ、いや、ううむ」

 歯切れの悪いフィルの態度に、アルフレッドも無言の目くばせで念を押す。

 過酷な旅の中で、利用できるものは骨の髄まで、という二人であった。

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