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第1話 overture
絶望と闇に飲み込まれる一人の少女がいた。
その娘は、すべてを失ったかのような顔をしていた。
また、すべてを悟ったように冷めきっていた。
あるいは、すべてをあざ笑うかのように微笑んでいた。
しかし、少女自身は無意識下でそれをやっていた。
彼女は、自分の表情どころか、何者かさえも知らないのだから。
このほの暗い空間は、どこだ。いつから。
肉体はもはや闇に溶け込んでいた。
かろうじてひとつの意思
だけがそこにあった。
長い長い悠久の時を超え、
ある瞬間、そこに突如現れた一筋の光。
少女はそれを恐れに似た気持ちで、ただただ見つめていた。