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第9話書きたいものを書けばいい

 俺は書けなくなっていた。


 妹に負けたくない、その一心で書き上げた「ヤンデレ妹」にはもう書きたいことは書き尽くしてしまった。


 ぼんやりと完成稿を眺める。

 まとめてアップする気にもなれず一章だけアップロードしてサーバのリロードをする。


「学校に行こう」


 久しく進んで学校に行こうとは考えていなかった。

 日課を消費するだけのデイリーイベント、その程度の認識だったが今はひとときでもPCから身を離したかった。


 ピコン

 新着のメッセージガ届く。


『もう一章公開しました』

 妹からの簡素なメッセージとそれに添えられたリンク、逃げる気にもならないのでそのリンクを開く。


 文章力が高いが俺の作品のテーマ自体は兄妹と言うことでそんなに変わらない。

 逆に同じ土俵で勝負して負けているということが気落ちを一層激しくした。


「お兄ちゃん……大丈夫ですか?」


 里奈の心配が痛い……


「あの……もしかして私の小説が気持ち悪いからですか?」


 絞り出すようにいったその声は震えていた。


「違う、それだけは違う」


 俺はそう言い切り「いってきます」もなしに家を出た。


 登校するのに妹と一緒じゃないのは久しぶりだ。


 当然阿智と出会った。

「あれ? 今日はお兄さん一人ですか」


「ああ、たまにはな」


「……」

「……」


 無言が続く、妹抜きで話をするのも久しぶりだ。


「里奈ちゃんは……元気ですか?」


「ああ、元気が有り余っているようだ」


「あの、里奈ちゃんの小説なんですけど……」


 それは触れて欲しくない話題だった。

「里奈ちゃんってすごいですよね、私じゃとても追いつけない」


「そうか……俺も追いつけないと思うよ……」


「でも、きっといつかは同じステージに立ちたいですね」


 アイツのポイントは三桁を記録していた、まだ数話しか投稿していないのにすごい期待値だ。


「お兄さんだって、そうなんじゃないんですか?」


「俺はアイツには追いつけないよ」

「僕もそうなのかもしれません、でも書くのを辞めたくないです!」


 ドキリとした、俺にはない情熱を阿智がちゃんと持っている、だから俺はこう言った。


「お前は心が折れないのか?」

「え?」

「いや、どうやったって追いつけない相手に勝負をできるのか?」


 阿智は少し考えてから答えた。


「追いつけるかどうかなんて追いついたときにしか分からないじゃないですか?」


「そうか……そうだな」

「青春だねー」


 すぐ隣で由似の声がした。


「うわ! いきなり隣に来るなよ!」


「気付いてなかっただけでしょ、それはともかく私なら書き続けるかなー」


 さっきの話をしっかり聞いていたらしい。


「私は書くよ、ただ書きたいように書くだけだよ」


「っていうかさ?」


「ん?」


「WEB小説に勝つも負けるも無くない?」


「え……」


「だって書きたいから書く、それだけだもの。 里奈ちゃんだって思うがままに書いてるわよ」


 それは信じられないことだった。

 アイツが書いているのは書きたいもの?


 じゃあ……俺は……


「ありがと、なんか分かった気がする」


「それはどうも」


 プイとそっぽを向いた由似が小声で言った。


「少なくとも私と阿智は読んでるんだから誠意ってものがあるんじゃない?」


 読んでくれている人がいる、そうだったな。確かに誰かが読んでいると言うだけでモチベーションが違うな。

 その読者を裏切らないように、完結させないとな。


 その日は放課後すぐ帰宅し、PCの電源を入れた。


「書きたいことを書きたいように」


 ただそれだけで書いていった。


 その夜、由似からメッセージが届いた。


『いい加減意地はってないでプラットフォーム使ったら? 別に私と同じとこ使えとは言わないけどさ』


 俺は悩んだ、ハッキリした数字が出るのが怖かった。


 小一時間悩んだ末、俺は投稿サイトのアカウントを取得していた。


 そして今まで書いてきたものを全部放り込んだ。


 最後にAWSのアプリを開きインスタンスをターミネートして退路を断った。


 その後妹から散々「何故見せてくれなかったのか」と言われたがそれはまた別の話……

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