7話
あれ?
ここは……リビングのソファーですか?
なぜ私はこんなところで寝て?
窓を見てみると既に朝日が登っています。
体を見てみると私の毛布が掛かっています。
わざわざ持ってきて寝てるのでしょう?
えぇ~と?昨日は…………アリア様の過去の話を聞いて…それ以降は……………記憶に無い?
ただ、なんとなく暖かかった様な?
あっ!それより朝食を!
「っ!」
立ち上がってキッチンに行こうとすると頭に鈍痛が響いてきます。
頭を押さえながらキッチンへ向かうとそこには予想外の人物がいました。
「ええと。お早うございます?」
「何で疑問符なのよ?」
「何故アリア様が料理を?」
「はぁ。あんたの不味い飯は食べたくはないわ。今日からは私が基本的に作るから。」
「えっ?」
「だから仕事の準備でもなんでもしてきなさいよ。邪魔だから。」
そう言ってキッチンから追い払われてしまいました。
以前までは絶対料理なんてしないと言っていたのに………どういう心境の変化なんでしょう?
そしてその後何時も通りレレーシュ様以外が揃って食事です。
「っ!美味しい?」
っ………悔しいですが美味しい………。
「うま。」
「そういえばアリアの料理は美味しかったな。思い出した。」
男性陣の反応も同様です。
「そうでしょうねぇ。料理だって男の心を掴む上で重要な要素の一つ。私の料理を食べられる事に感謝しなさい。」
「てか思い出したって、キュルェお前アリアの手料理なんか食ってたの?」
「いや、今思い出せば身の毛もよだつ話なんだが、学院時代に毎日昼間鍛練をしてたらアリアが弁当を作ってきてくれて………旨かったんだけど、今思い返せは……。」
「うわ…………。」
「あ、二人は食べなくて良いですよ。」
キュルェ様とライシュ様の会話を聞いてアリア様が半眼で怒気を強めた棒読みの話し方を使い二人に言いました。
「いや、冗談だ。」
「そそ!ちょっとしたジョークだよ。」
「いえ、大丈夫です。二人は食べないでください。というか私が食べさせたくないので。」
あー。
二人は朝食抜きですね。
まぁ私には関係の無い話です。
スープ美味しい~。
さて、食事も終わった訳ですし仕事へ行きますかね。
席を立とうとするとアリア様が呼び止めてきました。
「そう言えば一つ忠告。あんた間違えても男と二人で酒を飲むようなことしちゃダメよ。」
「へ?」
「うっかり変な場所に連れ込まれてそのまま………って未来しか見えないわ。」
は…はぁ?
一体何の……この私がその様なはしたない事をするわけがないです。
とはいえ思い返してみればアリア様からの本気の忠告なんて初めてではないでしょうか?
「まあ、了解しました。」
家を出て無事に政務館に着きました。
さて、仕事に取り掛かりますか。
噂話の真相も気になりますが調べるのは仕事をしてからの話ですね。
「はぁ。なんか最近税収多くないですかぁ?疲れちゃいましたよぉ~。」
「ほらほら泣き言言わないの。」
執務官の中で一番若手の女の子が疲れたと言って机に突っ伏している。
確かに税収に関連する書類なんかもかなり多くて確認作業に手間取ることもある。
「そうですよ。税収に関する書類が増えたということはそれだけこの都市の経済が活性化して人口が増えている証です。嬉しい悲鳴ではないですか。」
「………流石フェテシアさんだなぁ~……そんな考え方私には無理。だって自分の仕事で精一杯だもん!…………あっ!そう言えばフェテシアさん昨日のやつはどうだったんですか?」
「えーと?何の話ですか?」
「精一杯とか言ってたのに会話する余裕はあるわけね。はぁ………フェテシアさん、この娘が言ってるのは昨日の噂話についての事ですよ。」
「そうです。そうです。やけに気にしてるみたいですし、きっと1人でなにか調べてるんじゃないかなぁって皆心配してたんですよ?」
「皆様……。」
まさかそこまで私の事を気に掛けてくれていたとは………。
「で、どうなんですか?」
「ぇーとですね。私の知り合いに………夜遊びというか…男遊びというか…………あっ、男性の知り合いが多い女性です。……そんな人がいるんですが………、その人曰く少なくとも確実に1人は失踪者がいて、うちに捜索の嘆願書を出していると聞いてます。」
「……フェテシアさん…言い方に配慮したつもりなんしょうけど、一切お知り合いの方のフォローにはなってないですよ。」
「それにしても嘆願書ねぇ?そんなの有ったかしら?」
「さぁ?私は見てないわ?」
「じゃあさっさと保管庫に行って確認してきましょうよ!」
「一緒に調べて下さるのはありがたいですがサボりはダメです。私達は民の皆さんの血税を頂いて生活してるんですよ?多少の雑談で小休止ならともかく、完全に仕事にサボってしまうのはダメです。」
「は、はい。ごめんなさい。」
「あはは。ほら副執務官長様も言ってることだし手を動かしなさい。」