4話
政務館へ戻り、件の事件・事故記録帳簿を確認します。
「確かに失踪者はいませんね。」
であるなら………他の事件として記録されているのでしょうか?
殺人事件や暴行事件なんかの項目を見ても沢山の若い女性が関わるような事件なんて起きてないです。
…………全ては偶然で、居なくなった女性も引っ越しや生活パターンの変化で見なくなっただけということでしょうか?
「もう!フェテシアさん。急に帰っちゃってどうしたんですか?」
あれ?もう帰って来たんですか?
普段ならまだ休憩している時間の気がしますが………。
「そんなキョトンとしなくても………。」
「フェテシアさんの様子が変だったので早目に戻ってきたんですよ。」
「それってさっきフェテシアさんが気にしてた失踪した女性達の噂のですか?」
手元にある資料を見て質問される。
「え、ええ。少し気になりまして。」
「何も無かったでしょ?心配し過ぎですよ。」
「そうですね……。」
それで疑問は残るものの、一旦区切りをつけて仕事を始めます。
その日はそのまま無事に仕事も終わり買い物を終えて帰宅です。
家に入るとリビングでキュルェ様とライシュ様と珍しくレレーシュ様が休んでいます。
「あれ?ディル様は?」
「おん?……確か農具の買い出しじゃなかったか?」
「そうですか………。」
気まずいですね。
せめてディル様がいれば空気も違うんですが………。
「なぁ………フェテシアはなんでこんな所までディルを追ってきたんだよ。」
キュルェ様からの唐突な質問に疑問符が浮かびます。
はぁ?
なんの意味でしょう?
「それは………貴族の責務の影響では?私は親から…国から王妃になることを求められていたので毎日努力を積み重ねてきました。民からの税を使って生きている訳ですし力は抜けません。そんな風に毎日………その人の為に努力してたので気付いた時には惚れてました。」
「だからと言ってもう既に意味無いだろう?もう王妃なれないんだしディル以外の相手を探しても良かったんじゃないのか?」
「そうですねぇ。………あのパーティーの後改めて考えたんですが、今までの王妃になるという責務を失ってからも不思議とディル様とは別の道に行こうとは思わなかったのですよ。その時私の思いは偽物じゃなくて本物の気持ちなんだと確認できたので安心してここまで追っ掛けて来たわけです。」
ライシュ様がそっぽを向きながら答えます。
「意味分かんねぇ。」
「お三方も同じでは無いですか?騎士団長も魔術師団長も宰相も今はもう無理なのに未だに鍛練や勉強をしているのはそれが好きだからでしょう?」
「お…俺は………ただ。」
「ただいま。」
そんなところでようやくディル様が戻ってきたようです。
「おかえりなさいませディル様。………あれ?アリア様もご一緒ですか?」
「あぁ。荷物持ちに使われてな。」
「何時も不味い飯だからたまには美味しいものを食べたくてね。総菜を買ってきたわ。」
「お前………そんな言い方しなくても。」
ふん。
「そうですか。では今日は料理は必要ないですね。」
はぁ。
総菜を食べ終わると余計に空しくなってきます。
なんで総菜はこんなに美味しいのに私の料理は…………。
他の皆さんはとおに食事を終えていて、最後には女性である私とアリア様が残っています。
「じゃ、私も寝るわ。」
「あっ、アリア様少し良いですか?」
「ん?……なに?」
ジト目をしながら私の方を見てきます。
「その……少しお訊きしたい事がありまして。」
「はぁ?何で私が?」
アリア様は市中で色々な男性と話している筈なので噂話には人一倍詳しいはず。
何か知ってないでしょうか?
「お願いします。」
「……………で?」
「はい?」
「だから何なのよ?」
?
「とぼけた顔してないでさっさとその願いとか言うのを言いなさい。」
えぇ~。
良いなら良いでそれなりの反応が欲しいのですが。
「市中の噂話のことなんですが……詳しいことを御存じですか?」
「女が消えるってやつ?あんたそんな噂話を気にするようなタイプじゃないでしょ?」
「それがどうも真実味のある噂らしいのです。」
衛兵の方がら聞いた事と、事件・事故記録帳簿の事についてアリア様に話す。