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3話

「おはようございます皆様。」


「あっ!おはようございますフェテシアさん!」


「おはようございます副執務官長。」


私より先に来ていた数人に声を掛けられる。

因みに私が元侯爵家だと言うことは同僚に処か領主代行官を含めこの街にいるすべての人間が知りません。

万が一知られれば身代金目的で誘拐されるかもしれませんし、まあ、同僚の皆様とここまで仲良くなれなかったでしょう。

ここにいる皆様は普通の市民が扱えないような計算ができる人、

つまりは裕福な商家や職人家系の女性でばかりで、貴族程のは言わないものの幼少期から沢山の教育を受けて来た才女ばかりです。

とはいえ流石に侯爵家で生きてきた私とは住んでる世界が違いすぎるので、多分正体を知られていたらここまで親密にはなれなかったでしょう。

因みに副執務官長と言うのは、この部署の職員が執務官と呼ばれていてその副官長と言うことです。

実は副執務官長何て言う役職は正式には無くて、私がやたらと計算能力が高いので皆様の補助する立場に回ってほしいという事で副執務官長になりました。

流石にただの村娘を正式な役職である執務官長にはさせれないという事で()が付きのなんちゃって役職です。

まあ、私が皆様より計算が得意と言うのも、自画自賛にはなりますが当然の事で、私は王妃候補として国中の貴族子女から選抜され、国費をあらん限り投入し、人生のその殆どを勉強・技術習得・人脈形成に注いできました。

国民からの税金を使って勉強してきた私が、幾ら裕福な家の娘として教育を受けてきた女性とはいえ、負けているようでは話になりません。

私が婚約破棄された処かディル様が王位継承権すら失った今となっては完全に無駄な税金の使い道になっており、私の人生を無駄にした王妃教育であったわけですが、それのおかげ皆様に頼られる事が出来ていると思えば無駄でも無かったと感じます。


仕事も進み昼の休憩になりました。


「んんーーん!お疲れ様♪」


「ランチでも行きますか?」


「いいですね!私美味しい店見つけました!」


「フェテシアさんも来ますよね?」


貴族社会にいた頃ではあり得なかったようなフランクな人間関係。

相手の裏を探り合いしながらのパーティーや、私のご機嫌取りをしてくる貴族達、何故か私に敵対していたディル様達との関係、それらを思い出すと信じれない程楽しい環境です。


「是非ご一緒させてください。」



ふむ。

同僚達の5人とランチです。

………昼食はパスタですね。

くぅ………美味しいです。

私もこのくらい美味しい料理を作れるようになりたいです。


「そう言えばあの噂知ってる?」


「何?」


「ほら。突然姿を消しちゃうって言うやつ。」


「それってあくまで噂でしょ?あんたみたいなのがそうやって話すから、こうやって噂が大きくなっていくのよ?」


タイムリーな話題ですね。

噂話を止めようとした彼女には悪いですが少し気になります。


「その話って皆様も御存じなんですか?」


「あれ!フェテシアさんも気になりますか!?」


「もう!フェテシアさん。そうやって反応すると直ぐこの娘調子に乗っちゃうんですから!」


「まあ良いじゃん。話の話題にはなるしさ。」


「ええ、申し訳無いです。今朝その噂を聞いて少し気になって。」


「あぁ、フェテシアさんメチャクチャ美人ですもんね。怖いですよね。私も気持ち分かります。」


「確か市中で聞いた噂の内容は若い女性がこの国の騎士に犯されて殺されてるとか、国境の向こうからミルガ帝国の兵士が奴隷にして拐っていったとか色んな噂がありますよ。」


「中々にキツイ内容の様ですね。」


確かにここはミルガ帝国との国境に接する土地なので警戒のために王国の騎士が駐在していますが、その騎士がただの平民の娘を拐うとは考え憎いですね。

確かに騎士の中には腐敗した貴族も居ますがまともな者も居ます。

そこまでの事をやってしまえば何らかの処罰が与えられることは間違いありません。

おまけにここは王直轄領、そんな王家のお膝元でそのようなリスクを犯すとは思えません。

程度の低い腐った貴族たちはズル賢さだけは一人前ですし。

かと言ってミルガ帝国の兵士と言うのもあり得ないでしょう。

国境沿いは前述した騎士団が警備してますし、一度は見逃したとしてもそう何度も見逃すことはありません。

20人もの女性が断続的に消えていったと言うなら何度も国境を往復した筈、騎士団が気付かない訳がないでしょう…。

結論、無難なところで言えば国内の野盗………としか考えられません…………。


しかし、さっきから噂話を止めようとする同僚の1人があっさり答えを出す。


「あぁ~。フェテシアさん。そんなに真面目に考えなくても良いですよ。」


「ちょっと!嘘じゃないわよ!きっと国の陰謀が!」


「ハイハイやめなさい。私も気になって政務館で事件・事故記録帳簿を漁ったけど、今月の行方不明者は領内でもほんの数人。ましてやこの都市となると高位の魔物に挑みに行って消息を絶った冒険者パーティーのみね。」


「へーん。何だ。つまんないの。」


「噂なんてそんなものですよ。」


事件・事故記録帳簿というのは領内での全ての事故や事件の記録を保管している帳簿で、ここに記載されていない事件事故は世間に明らかになっていない物を除けばありません。

失踪という必ず家族が事件として公表するであろう物が、帳簿に乗っていないのであれば、あくまで全ては噂に過ぎないという事になります。

他の方々は真相を聞き終え、話題は他の事へ移ろうとしています。

ですが、気になります。


「他は1人も失踪者が居なかったのですか」


「え?………うん。居なかったよ。」


………あり得るのでしょうか?そんな事………。

仮にも毎日市中を見回りしている衛兵隊の人間が、20人以上は失踪していると言っているのに、その全てが勘違いだったなんて…………。


「すいません。気になることが出来たので少し早いですが失礼します。」


「えっ!どうしたんですかフェテシアさん?」


何時もならこのままお茶でも飲みつつティーパーティーをするのですが、昼休憩の間に調べておかないと。

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