40. ステータス確認
「セツナ、ちょっといいですか?」
離れに戻って昼飯を終えると、テーブルの対面に座ったアトリが俺に声をかけてきた。
「どうした、アトリ」
「今の内に、セツナの状態を教えてくれませんか?」
「……あぁ、そういうことか」
アトリの意図を察して、俺は離れの中を見回した。
ミーシャとクーファは用があるらしく、今は席を外している。俺のステータスについて相談するには、絶好の機会だ。
念のため『魔力感知』で周囲に誰もいないことを確認してから、俺は自分を『鑑定』で鑑る。
セツナ・クロサキ
種族:ヒューマン
クラス:勇者(タイプ:暗殺者)
状態:正常
レベル:12
魔力:97/185
スキル:
鑑定(レベル:9)
超暗殺術(レベル:2)
隠密(レベル:3)
魔力感知(レベル:3)
俊敏(レベル:2)
闇魔法(レベル:2)
言語理解(レベル:9)
短剣術(レベル:1)
……知らない内にめちゃめちゃ変わってるな。
ドッペルゲンガーや獣人と戦った影響か、思いの外成長していたようだ。
スキルも『超暗殺術』、『隠密』、『魔力感知』、『俊敏』、『闇魔法』がそれぞれレベルアップしてるな。更に『短剣術』のスキルが増えている。
どうやら、スキルってやつは後天的に獲得することもできるらしい。
ステータス変化を伝えると、アトリは思案げにあごに指を添えた。
「かなり成長していますね。もしかして、ゴブリンと戦い終わってから一度も『鑑定』してなかったんですか?」
「そういやそうだったな」
「はぁ……セツナ、これからはこまめに自分を『鑑定』してください。成長によって戦術が変わることもあるんですから」
「そうだな……悪い。うかつだった」
ドッペルゲンガーと戦ってからバタバタしてたってのもあるが、基本的に自分に興味がないからな。
自分を『鑑定』してる暇があったら、アトリを『鑑定』して安全を確かめるほうがよっぽど重要だ。
アトリは小さく咳払いしてから、話を戻す。
「それはいいとして……とりあえずレベルアップしたスキルの性能を確かめてみませんか?」
「だな」
俺はうなずきつつ、まず『魔力感知』の範囲を広げてみる。
二〇〇メートルから広げて三〇〇メートルほどまで広げたところで、範囲が限界に達する。
範囲以外で特に変わった点もなさそうだし、『魔力感知』はこんなもんだろう。
次に『隠密』を試してみる。
『隠密』の出力を最大に上げてから、アトリに話しかける。
「『隠密』を起動してみたが、なにか違いはわかるか?」
「ちょっと待って下さい。そうですね……」
どうやら声は聞こえているらしい。
試しにテーブルを強めにコツコツと叩いてみると、アトリは目を丸くした。
「音が聞こえませんね。もしかして、声以外の音が無音化されるのかもしれません」
「おぉ。そりゃかなり便利だな」
潜伏中はどうせほとんどしゃべらないし、会話も小声になる。
動作音が消せるなら、潜伏がかなり楽になるのは間違いない。
とはいえ、過信するわけにはいかない。どこまでの音量が消せるかは把握しておかないと危険だ。
ばんっ! ――と手のひらで思い切りテーブルを叩いてから、もう一度アトリに確認する。
「今のも聞こえなかったか?」
「いえ、今度は聞こえました。おそらく、隠せる音量に限界があるみたいですね」
なるほど。ということは、まさかとは思うが……
その後も色々検証した結果、どうやら『隠密』の効果は声にも作用するようだった。
小声でアトリに話しかけると反応がなく、少しずつボリュームを上げていって境界線を探る。
数分ほど検証した結果、どうやら会話レベルの音量になると『隠密』で隠せないようだった。
「……しかし、『隠密』中に小声で話せないとなると色々困るな」
「ですが、音が消せるというのは大きなメリットです。攻撃をしかける時も、大きな音を立てなければ気づかれないということですし」
「確かにな」
アトリと二人でいる時には運用に気を使うが、単独で使う分には凄まじく優秀だ。
さて、残るは『超暗殺術』、『俊敏』、『短剣術』、『闇魔法』だが……アトリと二人では検証できないものが多いな。
差し当たって検証できるのは――
俺は考えをまとめてから、アトリに向き直った。
「アトリ、『闇魔法』を教えてくれないか?」




