コンセント文明
惑星レギーアは、最近になって地球に非常に似ていると判明した星だった。
定期的に調査するにはあまりに遠く、なかなか詳しいことは分からなかった。だが、実は人類が住むことを考えられるくらいの環境がそこにはあった。
太陽のような大きな明るい月がひとつ、この星の周囲を巡っていた。そのため、大地は暖かく、大気も申し分ない。陸地はほとんど岩石に覆われていたが、大量の水もある。
生命が見つからないのが不思議なくらいだった。
やがてある探査隊が、この惑星に異星人の遺跡と思しきものを発見した。
それは、土のような色をした金属の建物だった。そうした建造物は、岩石を含んだ土の中にほとんど埋まるような形で点在していることが分かった。
早速、新たな探査隊が派遣され、周辺の調査を始めた。
どうやらこの惑星には、何か巨大な工場があったようだ。けれど、どれも土に埋もれたまま密閉されているらしく、入り口が見つからない。
しばらくは地表から観察してみることになった。
ある日、探査員の一人が二股の金属を見つけた。まるでコンセントのプラグ部分のようだった。
実際、その後探査員たちは、金属にコードがつながっており、建物の中まで続いているらしいものを掘り出した。そうして更に、土の中に横たわる差込口を捜し当てたのだ。
一人が恐る恐るコンセントと思われるものにプラグを差し込んでみた。
すると、建物の奥からコトン、コトンと規則正しい音が聞こえた。
探査員たちは口々に声を上げた。土の上に這いつくばって、夢中でコンセントとプラグを捜し始めた。
次にしっかり合うものを差したときも、建物の奥からカタカタと小さな音がした。相変わらず建物の入り口は見つからないが、この遺跡はまだ何かが動くようだ。
未知のものに対しては慎重になり、一応全員が宇宙服を着込んでいる。
岩をどけ、硬い土を掘り、プラグ形の金属を見つけても、途中でコードが切れていることも多かった。コードが建物まで続いていて、付近を念入りに掘り進めていっても、差込口が見つからないことも多かった。泥だらけの差込口をいくら揃えて拭ってみても、プラグ部分が出てこないことも多かった。あるいは壊れていて、何の反応もないものも多かった。
探査員たちの宇宙服は見事に泥だらけになったが、もとから重みはあるし、動きづらい。すぐに疲れてしまう。
「やれやれ」
一人が近くの岩に腰を下ろして、手をつく。
その右手のすぐ傍に、差し込んであるコンセントが一つあった。
「誰かここのコンセントにプラグを入れたか?」
彼は尋ねてみたが、誰も差し込んだ覚えはないようだ。
「ずっと入っていたのかな。異星人がいたころから……?」
その場にいた皆が、不思議な気持ちになった。おまけに彼らは、差込口にあれでもないこれでもないと、差し入れることにも飽きている。逆に、抜くことには大変興味を覚えた。
そして、見つけた探査員がコンセントのプラグを抜いた、その瞬間――。
辺りは真っ暗になり、惑星レギーアのすべてのものは凍りついた。
異星人たちは昔、氷で覆われた惑星に人工太陽を造り、無理のないように少しずつ温めることにした。遠隔操作している現場も製造工場の跡も残したまま、環境が整った頃に戻ろうとしていた。
だが、つまらない地球人の好奇心で台無しにされてしまったようだ。
差し込まれていたのは、人工太陽の電源につながるコンセントだったのだ。
本作は、黒森 冬炎様主催『ミラクル•チェンジ〜改造企画〜』に参加させていただきました。
異星人による惑星改造……できませんでした。