表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

探査員

コンセント文明

作者: 石江京子

 惑星レギーアは、最近になって地球に非常に似ていると判明した星だった。


 定期的に調査するにはあまりに遠く、なかなか詳しいことは分からなかった。だが、実は人類が住むことを考えられるくらいの環境がそこにはあった。

 太陽のような大きな明るい月がひとつ、この星の周囲を巡っていた。そのため、大地は暖かく、大気も申し分ない。陸地はほとんど岩石に覆われていたが、大量の水もある。

 生命が見つからないのが不思議なくらいだった。




 やがてある探査隊が、この惑星に異星人の遺跡と思しきものを発見した。


 それは、土のような色をした金属の建物だった。そうした建造物は、岩石を含んだ土の中にほとんど埋まるような形で点在していることが分かった。

 早速、新たな探査隊が派遣され、周辺の調査を始めた。


 どうやらこの惑星には、何か巨大な工場があったようだ。けれど、どれも土に埋もれたまま密閉されているらしく、入り口が見つからない。

 しばらくは地表から観察してみることになった。


 ある日、探査員の一人が二股の金属を見つけた。まるでコンセントのプラグ部分のようだった。


 実際、その後探査員たちは、金属にコードがつながっており、建物の中まで続いているらしいものを掘り出した。そうして更に、土の中に横たわる差込口を捜し当てたのだ。


 一人が恐る恐るコンセントと思われるものにプラグを差し込んでみた。


 すると、建物の奥からコトン、コトンと規則正しい音が聞こえた。

 探査員たちは口々に声を上げた。土の上に這いつくばって、夢中でコンセントとプラグを捜し始めた。


 次にしっかり合うものを差したときも、建物の奥からカタカタと小さな音がした。相変わらず建物の入り口は見つからないが、この遺跡はまだ何かが動くようだ。


 未知のものに対しては慎重になり、一応全員が宇宙服を着込んでいる。

 岩をどけ、硬い土を掘り、プラグ形の金属を見つけても、途中でコードが切れていることも多かった。コードが建物まで続いていて、付近を念入りに掘り進めていっても、差込口が見つからないことも多かった。泥だらけの差込口をいくら揃えて拭ってみても、プラグ部分が出てこないことも多かった。あるいは壊れていて、何の反応もないものも多かった。


 探査員たちの宇宙服は見事に泥だらけになったが、もとから重みはあるし、動きづらい。すぐに疲れてしまう。


「やれやれ」


 一人が近くの岩に腰を下ろして、手をつく。

 その右手のすぐ傍に、差し込んであるコンセントが一つあった。


「誰かここのコンセントにプラグを入れたか?」


 彼は尋ねてみたが、誰も差し込んだ覚えはないようだ。


「ずっと入っていたのかな。異星人がいたころから……?」


 その場にいた皆が、不思議な気持ちになった。おまけに彼らは、差込口にあれでもないこれでもないと、差し入れることにも飽きている。逆に、抜くことには大変興味を覚えた。

 そして、見つけた探査員がコンセントのプラグを抜いた、その瞬間――。


 辺りは真っ暗になり、惑星レギーアのすべてのものは凍りついた。




 異星人たちは昔、氷で覆われた惑星に人工太陽を造り、無理のないように少しずつ温めることにした。遠隔操作している現場も製造工場の跡も残したまま、環境が整った頃に戻ろうとしていた。

 だが、つまらない地球人の好奇心で台無しにされてしまったようだ。


 差し込まれていたのは、人工太陽の電源につながるコンセントだったのだ。

本作は、黒森 冬炎様主催『ミラクル•チェンジ〜改造企画〜』に参加させていただきました。


異星人による惑星改造……できませんでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「ゆるキャラは異星人」(長編完結済み)もよろしくお願いします。
ゆるキャラ

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
探査隊が見つけた、人類が住めるかも知れない惑星と、異星人の遺跡らしきもの。タイトル、そして冒頭から惹き込まれました。 そこにあるコンセント、気になりますね。ラストのスケールの大きさがとても印象的でし…
[良い点] 人工太陽という壮大な存在が、地上のコンセントのプラグを抜いた途端に駄目になるというスケールのギャップが面白かったです。 [一言] もし異星人が定期的に惑星を観測していたら、せっかくもう少し…
[良い点] こちらもお見事なショートショートでした! 好奇心は…でしたね。とても面白かったです! 読ませていただきありがとうございました(✿ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾
2024/05/20 10:58 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ