vol.4 望まれる変化
セナは高校教師を辞めた。
沢山の生徒に惜しまれながら、セナは高校を去った。
ある一人を除いて。
いくら学内で人気のある教師とはいえ、
給料は他と変わらない。
高校教師は、どう足掻こうと
"安定した職業" だった。
セナの高校教師としての給料では
娘でも無い女の子一人を助けるのには不十分だった。
ー
セナは高校教師を辞めちゃった。
セナには悪いけど、
酷い言葉を使うなら
「沢山の生徒の信頼と信用を捨てて
一人の生徒の為に金稼ぎに走った」
んだよ。
ー
しかしセナは強かった。
セナの能力の持ってしては転職など容易かった。
セナは大手予備校に就職した。
高校教師時代に培った授業のセンスと
広告代理店時代のデザイン力を生かし
比較的給与の良い映像授業の講師になった。
目の前に生徒達の居ない授業は初めての経験だった。
その分、授業撮影には熱を込めた。
広告代理店でのキャリアを活かし、生徒達に視覚的に訴えかける授業構成にした。
返答の来ない質問の投げかけ。
挙手の無い教室。
教師になることを志していたセナにとって
初めての経験ばかりだった。
しかし、
そんな環境に次第に慣れていく自分に
自分でも驚きを隠せないでいた。