vol.2 夢のような夢
セナは夢を叶えていた。
セナの学生の頃の夢は「師」になることだった。
何の「師」であれ、その道を励み、人に教える事は
彼にとって、とても魅力的だった。
彼の人生の大きな分岐点には
いつも「学校の先生」がいた。
『大切なのは、問題に正解することじゃない。問題を理解することだ。』
『人に頼られるようになるには、まず人に頼る事。』
先生からは数々のアドバイスを貰った。
「人の下で働くのが苦手。就職してから、上手くやっていけるか心配。」
と、つい本音を漏らしてしまった時、
『数多の権力を持った大人達を、お前の力でなぎ倒すチャンスだ。お前はそこらの大人には決して負けない。』
そう諭してくれたあの大学の教授は、今何をしてるだろう。
ー
結局、セナは広告代理店に就職したものの
およそ二年半で辞職。
セナは持ち前の賢さで辞職して直ぐに
教員試験に合格。
晴れて「高校教師」になった。
"彼等"の背中を追って。
セナの追い求める教師像は、彼等の求めたそれととても似ていた。
セナのその賢さもさる事ながら、
明るさ、ユーモアセンス、そして厚い人望が
それを可能にしていた。
セナは赴任してからというものの
瞬く間に人気の先生になった。
論理的に答まで一直線に走る授業を行う先生が多いその進学校では珍しいタイプだったからだ。
セナが不定期で開く相談会も人気だった。
勉強だけでなく、心のことや恋のこと、なんでも一対一で相談できる場を設けた。
様々な生徒が多種多様な相談を持ち込んだ。
セナは生徒達から強い信頼を寄せられていた。
セナは有り余る程の幸福感に満ちていた。
しかし、そんな幸せとは裏腹に
彼の生活はどんどん苦しくなっていた。
授業で使用する資料作成はもちろん、
数多の生徒から寄せられた相談に頭を悩ませる日々が続いた。
しかし、セナはそれで良かった。
生徒から信頼される。
それだけで、ただただ幸せだった。
ー
そうそう。
セナは夢を叶えてたんだよね。
ただ、みんなにボクから覚えておいてほしい事がある。
セナもまた
「超人間的人間」 だった、ってこと。
それともう一つ、
ー
そんな最中、
セナに話しかけてきた生徒がいた。
授業中はたまに笑ってくれるものの、
普段は伏し目がちの体の細い女の子だった。